【no.362】JALが推進するAI導入の鉄則とは?「地に足のついたイノベーション」がカギ

JALが推進するAI導入の鉄則とは?「地に足のついたイノベーション」がカギ

航空券の購入予測分析対話型AIロボットチェックインカウンターの案内支援システムなど、AIを活用した数々の取り組みを進める日本航空株式会社

これまでに蓄積されたAIプロジェクトを推進するためのノウハウをLeapMind株式会社との対談形式でお伝えします。

斎藤勝
日本航空株式会社 デジタルイノベーション推進部 部長八木谷佑太
LeapMind株式会社 Co-development Division Manager

ベンダーと単なる受発注の関係になるな

――JALでは多くのAI関連プロジェクトが実施されています。AI活用を進める上で大切にしているポイントを教えてください。

――斎藤
「まずは小さくやってみて『自社ではAIで何ができるか』AIの可能性を確認するのが大切だと思います。初めのうちはどうしても、費用対効果が見えにくいためです。私たちはどのプロジェクトも3ヶ月で区切り、進捗状況を確認しています。なかなか進捗がないプロジェクトは、一旦止めることも必要です」


イノベーションラボ外観

現場検証をスピード感を持って進められるよう、JALはイノベーションラボを開設したのだそう。空港や機内設備を再現できるスペースを設け、スピード感を持って現場検証が進められているといいます。


イノベーションラボ
――八木谷
「目的を明確にし、だらだらやり続けないことは大切ですね。『AIで何をやりたいか』最終ビジョンを一歩踏み込んで事業会社さんと話すようにしています。ベンダー企業として『AIで何ができて、何ができないか』がわかっている一方で、事業会社さんのビジネスを詳しく知っている訳ではありません。

ベンダー企業と事業会社のパートナーシップも、まずは人間関係と信頼関係の構築から始まります。カジュアルな形で話をしたり、壁ができないよう奮闘しています」

――斎藤
「ベンダー企業さんをはじめ、外部とのパートナーシップは非常に重要です。フラットな関係を築けるかどうかは、プロジェクトの成否に大きく関わります。単なる受発注の関係になってしまうのはよくないです。新しい取り組みなのですから、お互いにプロジェクト自体をどれだけ面白いと思えるかが、シナジーを発揮するためのポイントだと思います」

社内外にオープンなイノベーションを

――外部との連携がうまくいっても、大企業だと社内から理解を得るのが難しいのではないでしょうか?

――斎藤
まずはやってみることで、実際に動いているものを現場や経営層へ見せられます。今では社内からも、AIなどの先端技術を取り入れることへの期待感は大きいです。取り組みを社内外にオープンにすれば、多くの人を巻き込めます。まずは楽しくやってみること。そして、期待はしすぎずに『地に足のついたイノベーション』を推進していきたいです」

――八木谷
「JALさんはオープンに取り組みをされていますが、社外秘でこっそりAI導入を進めている企業さんも多いですよ(笑)今は多くの企業でAI導入が進んでいる時期なので、まずはやってみて、ノウハウを自社で蓄積していくのが大事だと思います」

通信制限のある機内でもAIは使えるか?

――今後エッジAIを活用した取り組みも進められるのでしょうか?

エッジAIとは
これまでクラウド上で実行されることが多かったAIによる処理をエッジ側(もの側)で実行すること。インターネットがない環境でもAIの処理を実行でき、通信しない分処理速度も早い。
――斎藤
エッジAIはこれから取り組まなければならない領域だと認識しています。飛行機内や空港では通信が制限されるため、エッジ処理を活用したい場面が多いです。たとえば、機内食を食べるタイミングを解析してサービスの質向上につなげたり、効率の良い動き方をする客室乗務員の動きを分析してノウハウを共有したりできるのではと考えています。

監視カメラのように、機体にエッジAIを搭載するのは安全上難しいですが、乗務員の持ち物に組み込むなど、どうエッジAIを機内や空港で活用できるかは視野に入れています」

――八木谷
「お話を伺うなかでJALさんがすごいのは、サービスインまでしっかり持っていくところです。PoC貧乏という言葉もありますが、小さくトライするにしても、PoCだけで止まってしまうのはもったいないです」

――斎藤
「サービスインまでこぎつければ、利用者から反響を得られます。生の声をサービスに反映させるなど、サービスの質向上につなげるのは、プロジェクトを進める上で大切にしているポイントの1つですね」

自社でなにができるかまず見極める小さく始めて社内外へオープンするなど、いきなり大きな課題をAIで解決しようとしない「地に足のついたイノベーション」を推進するJAL。

AI導入に苦戦する企業が多いなか、JALの姿勢に学ぶことは多そうです。