【no.189】なるほど! AIの使い方――在住外国人向け多言語チャットボット、サクラマスの陸上養殖

なるほど! AIの使い方――在住外国人向け多言語チャットボット、サクラマスの陸上養殖

7月27日に開かれた日本オラクル主催のイベント「Innovation Summit Tokyo 2018」。全19セッションのうちの1つ「生活の中のAI – 東京都港区Chatbot、北海道漁業IoTに見るオラクルのAI活用」では、オラクルのAIが私たちの日々の生活や仕事をどのようにサポートしてくれるのかがわかる、興味深い事例が紹介された。

東京・港区役所における外国人向けAIチャットボット
約25万人(平成30年1月1日現在)の人口のうち、約2万人を外国人住民が占める東京都港区。駐日大使館の約半分が港区に所在し、多くの外資系企業も港区に本社を構えていることが、大きな要因となっている。

そのため港区では、外国人住民に向けた情報発信に、非常に力を入れているようだ。8月初旬の猛暑日に港区役所のホームページを訪れると、日本語・英語・中国語・韓国語の4か国で書かれた熱中症の注意を呼びかける緊急情報が、まず目に飛び込んできた。スクロールしながら右に並ぶ広報・報道欄を見てみると、「多言語によるFM放送」というリンクが見つかる。リンク先は、FMラジオの広報番組「MINATO VOICE(ミナトヴォイス)」の案内で、曜日によって異なる言語で放送中とある。また、在住外国人向けのFacebookページ「Minato Information Board」では英語とともに、外国人にもわかりやすい“やさしい日本語”で記事が投稿されている。

こうした努力の結果、3年に1度行っているアンケートでは、80%の在住外国人が「港区からの情報提供に満足している」と答えた。しかし、それでも区の職員は「なお不十分だ」と感じていたという。

行政機関である区役所の窓口は、開庁時間が基本的に平日の日中に限られている。窓口に来られない場合、区からの情報提供はホームページに頼ることになるが、そのコミュニケーションは一方通行だ。たとえ情報を豊富に用意していたとしても、欲しい情報にたどり着けていない懸念もあった。

そこで港区役所ではAIチャットボットに着目。在住外国人のスマートフォンでよく使われているFacebookメッセンジャーのアプリを活用して、時間を気にせず気軽に質疑応答が行える方法を探ることにした。

Facebookメッセンジャー上で港区のAIチャットボット「グル〜にゃ」に質問すると、回答の選択肢をいくつか提示してくれる。利用前にはFacebookアカウント「グル〜にゃ」と友達になっておく。現在対応している言語は「英語」と「やさしい日本語」の2つだが、このAIチャットボットを構成するサービスの一つ「Oracle Service Cloud」は多言語に対応しているため、同じ仕組みのまま対応言語を増やすことも可能だという。

最終的にはユーザーに対し、役に立ったか立たなかったかのフィードバックをしてもらうことで、AIチャットボットが自動的に学習を重ねていく仕組み。多くの教師データを用意しなくても、様々なパターンの質問に柔軟に対応してくれるほか、データサイエンティストがいなくても現場の担当者が管理画面からすぐに回答を修正することができる利点もある。

港区役所がOracle Cloudを採用した理由は、こうした「多言語対応できるプラットフォームであること」「教師データは不要で自動的に学習すること」「区職員がセルフメンテナンスできる登録の利便性」に加え、行政サービスであるからこそ強く求められる「高セキュリティ」が評価されたことにあると七尾氏は語る。

「実証実験の段階で、家族や病気、税金に関する質問など、人には言えない相談が多く寄せられることがわかりました。そうした質問データとメッセンジャーのIDが紐づけられれば、外部の業者などに個人情報が漏れてしまう。だからこそ、Oracleの高いセキュリティが必要なのです」(七尾氏)

「Oracle Database Cloud」には、上記の高セキュリティ機能に加えて、機械学習のアルゴリズムが内包されている。質問の内容や時間などのデータを分析することで、将来的にはさらなるサービスの改善に向けた提案ができるよう、さらなる貢献をしていきたいという。

チャットボットに対して、個人的なデータをやり取りすることに対する障害は、
利便性のほうが勝りそうですね。
次回の更新も楽しみにしていただけますと幸いです!