【no.285】AI駆動で始まる新たなマーケティングスタイル。AIがマーケティングにもたらす価値

AI駆動で始まる新たなマーケティングスタイル。AIがマーケティングにもたらす価値

昨今、データ解析ツールやマーケティングオートメーションツール(以下:MAツール)などにより浸透が進み、従来マーケターが抱えていた課題を多く解決する、データドリブンなマーケティング。

一方で、データドリブンマーケティングが浸透し、成果を出し続けることで「データに基づいた業務判断の回数が際限なく増えていく」という課題も新たに生まれてきます。

そこで注目されているのが、AIをマーケティングに活用する「AIドリブンマーケティング」。そして、AIドリブンマーケティングをさらに加速させるであろうビッグニュースが飛び込んできました。

こちらです。

「マーケティングオートメーションツール Marketo と、機械学習の予測モデルの作成を自動化するプラットフォーム DataRobot が連携し、Marketo内のデータを利用して、機械学習モデルを作成したり、DataRobotで作成された学習モデルをMarketoで利用することができるようになる参考記事:マルケト × AIでマーケティングが変わる。DataRobotの機械学習モデルが利用可能に

Marketoといえば、MAツールとしてかなりのシェアを誇り、データドリブンマーケティングを進めてきたマーケターの必需品。そしてDataRobotは、AIの民主化を掲げ、AIに関して深い専門性がなくてもAIのビジネス実装が可能なプラットフォームです。

この二つが連携するとなると、マーケティング設計時の考え方にも大きな変化が起こります。連携の立役者となった3人に、AIがもたらすマーケティングの価値を聞いてきました。AI × マーケティングの価値は「繰り返し発生する業務判断の自動化」

――マーケティングの最先端にいる3人方に、ずばり聞きたいのですが、マーケティング領域でのAIの価値は何でしょうか?

――石野
「結論から言うと、マーケティングにおけるAIの価値は『繰り返し発生する業務判断』を自動化できることだと考えています。マーケターはどんな施策を打つにしても、常にデータに基づいた判断をしており、今のマーケターにとってデータは不可欠です。たとえば、顧客のスコアリングでは、

  • 今まで開封したメールの数
  • 役職
  • デモの申し込みや資料ダウンロードの回数

などのデータを分析し、期待行動をしてくれた顧客似ている顧客のスコアを高く評価するといったプロセスがありますが、AIを組み合わせることでより精度の高い優先順位付けをすることができます」

――有益
「スコアリングの次のステップとして

  • ほかにも重要な指標がありそう
  • スコアの高い人には、どんなクリエイティブが刺さるのだろうか
  • このスコアリング手法を踏襲しつつ、しきい値を変えて、別セグメントでも適用してみよう

といったことを洗い出し、上記のような施策を何度も繰り返し打っていきます」

――石野
「何度も繰り返したり、別のものに展開するフェーズになると、タスク量が多くなり、正直管理しきれなくなってきます。そこからが、AIの出番です」

――中野
「繰り返しのなかで、少しずつ変化が起こっていくような業務でもAIは活用できます。たとえば、ウェブのユーザー行動に基づいたスコアリングモデルでは、時間が経ってウェブサイトの新しいコンテンツが増えるにつれモデルをアップデートする必要があります。最新のデータでモデルを生成することで、時間をかけずに現状に即したモデルでスコアリングして施策が可能です。

アクションが繰り返されてデータが貯まってくるフェーズになればなるほど、AIの強みが活きてきて、活用方法は多岐にわたり、その効果は絶大です」

データドリブンマーケティングが浸透し、施策の再現性が高まる一方で、データ分析タスクが増加し、データに基づく業務判断が増えていきます。

AIを活用することで、繰り返し発生する業務判断を過去データから自動的に行うことができる、そこに大きな価値がある、ということですね。

対談は、AIによって生まれる新たな価値について、さらに盛り上がっていきます。

AIはマーケティングのすべての領域に使える

――マーケティング × AIに、とても可能性を感じますが、具体的にマーケティングのどの部分でAIは使えるのでしょうか?

――有益
「“データを扱うところにAIあり”で、データを扱うすべての領域で使えると思っています。例に挙げたスコアリングでは、既に成果も出ていますし、KPIツリーの作成をしているところもあります。

  • セグメンテーション
  • LTV予測
  • 時系列データの予測

など、AIが使えるところを出し始めたらきりがないですね」

――石野
「特にMarketoやSFAツールを既に活用していれば、ある程度きれいな形でデータが蓄積されていると思いますので、ある程度のデータ量があればすぐにでも活用できる余地があるのではないでしょうか」

AIでスコアリングなどが自動化できれば、人はコンテンツやクリエイティブなところに集中することができます。その結果、サービスの質が向上し、顧客の体験も良くなる。この好循環が、さらなる効果を生むそうです。

AIドリブンマーケティングを広めるために、MarketoとDataRobotの連携は必須だと思った

――今回の連携の経緯を教えていただけますか?

――石野
「AIが活用できれば、マーケティングでより成果を出せるとは感じていたものの、活用するためには、多くの専門スキルや高度な技術力が必要で、敷居が高く踏み出せずにいました。そんな中『学習データセットさえ準備すれば、精度の高い学習モデルを自動で作ってくれるDataRobotというサービスがある』と、有益さんに伺ったんです。

マーケティングでのAI活用のために、DataRobotとの連携は必須だと思い、お声がけさせていただきました」

――中野
「DataRobotは『機械学習の民主化』を掲げていて、統計やプログラミングの専門的な知識なしに機械学習モデルが作れるプラットフォームです。DataRobotは単にモデルを生成するだけでなく、そのモデルを実装するところまで自動化しています。簡単に生成したモデルをREST API化して、MarketoのWebhook機能を使って連携できます。

またマーケティングでは精度が良いだけでなく、モデルが理解できることが重要です。DataRobotでは解釈可能性に注力して開発しており、機械学習がグレーボックス化されています。どのような変数が予測に影響が大きいのか、一件一件がなぜそのように予測されるかも説明できます。

これらのあらゆる要素から、マーケティングにおける『機械学習の民主化』を進めるものになると判断し、Marketoとの連携を決めました」

――石野
「今って、バズワードとしてAIという言葉が使われていたりすることが多いですが、事例に基づいた地に足の着いた連携リリースを出したかったんですよね。なので、しっかりと成果を出してからリリースを出そうとDataRobotさんと話し、連携を実現してから理リリースまでお客様のもとで事例構築をしておりました」

スコアリングルールを顧客属性やセグメントごとに膨大な時間をかけて手動で策定していたところを、AIによって高精度なスコアリングルールを短時間で自動策定できるようになったと、石野氏。

データから判断することはAIに任せ、人は新しいことをやればいい

――AIが一部業務を代替し、人が他の業務に充てられる時間が増えたとき、何に注力すればよいと考えていますか?

――有益
前例のないことや、ブランドのような合理性だけで判断できないことですね。今まで行なってきた試行錯誤から生まれた成功事例は、ベストプラクティスの塊です。データから判断できることは、AIに任せてしまって、人はデータから判断できないことに取り組むべきだと思います」

【no.284】神戸市、AI利用したレセプトチェック効率化実証

神戸市、AI利用したレセプトチェック効率化実証

神戸市は2月15日、レセプト(診療報酬明細書)のチェック業務の効率化のため、FlyDataのAI(人工知能)技術を導入して2018年7月2日から2019年1月31日まで行った実証実験・効果検証の成果を発表した。これによると、正解候補リスト内に正解を含む場合は他システムによる番号検索など従来行っていた確認作業が不要になり、約70%の作業時間が削減できたという。

  • レセプトデータ処理のイメージ

子供への医療費の助成制度などを運用する同市国保年金医療課では、医療機関が送付するレセプト(診療報酬明細書)の請求に基づき、毎月20万件の診療に対する助成を行っている。

【関連】毎月20万件の確認業務、神戸市がRPA業務効率化実証実験で93%の時間削減 >>

【関連】富士通研究所、CT画像をもとにAIで立体的な異常陰影の類似性を確認する技術 >>

しかし、請求の中には受給者番号が誤っているものなど多様な間違い(エラー)が含まれており、そのエラーのチェック業務に多大な時間がかかり、職員の負担になっている。

同プロジェクトでは、職員が行っているチェック作業を整理・分析したうえで、ツールを構築し、チェック業務の効率化・短縮化を目的に実証実験を行った。

【no.283】わずか10秒 AIがブランド品鑑定 「コメ兵」が今春導入へ

わずか10秒 AIがブランド品鑑定 「コメ兵」が今春導入へ

本物か偽物か、AIが瞬時に判断する。

中古品販売の「コメ兵」が14日に発表したのは、ブランド品買い取りの際のAI活用。

マイクロスコープを使って商品の数カ所を撮影すると、通常数分かかる作業が、わずか10秒で判定可能に。

このAIによる目利きは、2018年4月から技術開発を進め、現在は高級ブランド「ルイ・ヴィトン」のバッグや財布を97%以上の精度で見極めができるという。

年間140万点の商品を買い取る「コメ兵」では、その豊富な鑑定データをAIに蓄積。

これまでプロ頼みだった鑑定作業をAI力で負担を減らし、より接客など顧客サービスに時間をかけたい考え。

このAI鑑定は、2019年の春から、愛知・名古屋市の本店で試験導入される予定。

【no.282】「国民の1%がAIの訓練を受ける」フィンランドの壮大な実験が目指す「ニッチな目標」とは?

 

フィンランドでは、政府・大学・民間企業が一丸となって人々に無料で「国民にAI教育を行う」という計画に取り組んでいます。この計画の目標は「AIの専門家や技術者を生み出す」ことではなく、AI教育を受ける人々はプログラミングや機械学習の知識を持たないとのこと。アメリカや中国のAI開発競争に入るのではない、フィンランドのAI教育は独自路線をいく非常にユニークなものとなっています。

Finland’s grand AI experiment – POLITICO
https://www.politico.eu/article/finland-one-percent-ai-artificial-intelligence-courses-learning-training/


フィンランドの「1パーセントAI計画」は、国民の1%、つまり5万5000人に対して無料のAI教育を行うことからスタートし、その後数年かけて教育を施す人の数をどんどん増やしていこうというもの。この計画の興味深いところは、無料で提供されるAI教育はAI技術者や専門家を育てることを目的としているわけではなく、「機械学習」「ニューラルネットワーク」といった言葉すら知らなかった一般の人々に対して「AIの高度な応用」について教えることが目的です。

AI開発競争はアメリカと中国の間で激しさを増しています。フィンランドの1パーセントAI計画は、アメリカや中国と競うことを意図するものではなく、もっとニッチな狙いであるとのこと。フィンランドのMika Lintilä経済大臣が「私たちは人工知能分野のリーダーとなるだけのお金がありません。しかし、人工知能を使うことについてであれば話は別です」と語るように、フィンランドの目的は「AIの実用的な応用」でリーダーに立つことにあります。

たとえば、1パーセントAI計画に参加している59歳の歯科医であるJaana Partanenさんは、数年前までAIについて全く知識を持ちませんでした。Partanenさんは2019年時点で、毎夜にコーディングの基礎について学んでおり、今後自分の仕事でAIを活用してくことを考えています。

1パーセントAI計画はもともと、ヘルシンキ大学のコンピューター科学部とスタートアップのReaktorが提供していた「Elements of AI」というオンラインコースの1つでした。ヘルシンキ大学のコンピューター科学者のTeemu Roos氏によると、無料コースはもともと「民主主義を支援する」ために2018年5月に開始したものとのこと。

A free online introduction to artificial intelligence for non-experts
https://www.elementsofai.com/


コースは最先端をいく開発者を対象とするものではなく、コーディングの技術がない人でもAIについて学べるというもの。コンピューター科学に縁がなかった人に対し、AIによって生まれる可能性、あるいはリスクについて教えることで、一般の人々でも政府の投資先や自分にメリットのある選択が何かという判断を行えるようになることを目標にしていました。「一般人向けのコースを作り出すには助けがいる」と判断したRoos氏はReaktorと協力し、プログラミングを排除したオンラインコース「Introduction to AI」を作成したとのこと。

Roos氏やReaktorは「せっかくコースを作成しても認知されなければ無意味だ」と考え、フィンランドの大企業の雇用者にコースへの参加を求めるプロモーションを行いました。「2018年末までにフィンランド国民の1パーセントがAI教育される」と発表されたのも、この時です。

2018年12月半ばまでに250社がこの「AIチャレンジ」への参加を発表しており、携帯電話キャリアであるElisaやNokiaは全社員に対して、製紙業者のStora Ensoは社員のうち1000人にコースを受けさせると述べています。この結果、目標までは及ばなかったものの、1万500人以上がコースに参加しており、そのうち6300人以上がフィンランド国民となっています。

AIチャレンジが活発になると政府も注目し、外務省や税務当局の職員もコースを受けることになりました。2018年9月に行われたコース初の卒業セレモニーにはサウリ・ニーニスト首相も姿を現したといいます。当初は英語版のみだったコースですが、2018年11月には政府の希望からフィンランド語版も登場しており、これによってコースの普及が加速するとみられるとのこと。

by Hietaparta

フィンランドは2017年にEUで初めてAI国家戦略を文書化し、2018年6月に公開された第二弾のレポートには、最終的に人口のうち100万人が自分のAIスキルをアップデートする必要に迫られるという予測が述べられました。フィンランド政府はエストニアとスウェーデンと協力してAI実験で秀でた「研究所」を作ることのほか、EUに対しいくつかの規制緩和を求めるロビー活動も行っていく予定とのことです。

【no.281】結晶性素材の特性を「AIで設計」する方法、MITらが開発。超効率太陽発電、ダイヤモンドCPUが可能に?

結晶性素材の特性を「AIで設計」する方法、MITらが開発。超効率太陽発電、ダイヤモンドCPUが可能に?

半導体やその他の結晶素材はほんのわずかな歪みを加えるだけで電導性を得たり、光や熱を伝導するようになるといった劇的な特性の変化を得ることがあります。MITとロシア、シンガポールの研究者からなるチームは、こうした変化を予測し制御するために、人工知能(AI)を活用する方法を編み出し、将来のハイテク機器に向けた先端材料の研究に役立てようとしています。

研究チームは、シリコンとダイヤモンドの両方で、半導体が持つ重要な電子特性である”バンドギャップ”に対する歪みの影響を調べました。

バンドギャップとはざっくり説明すれば結晶内のエネルギー準位によって分かれる帯状の構造における電子が存在しない部分(禁制帯)のこと。禁制帯は電子が存在しないため通常なら電流は流れないものの、この部分が狭い半導体の場合は素材特有の電圧を加えることで電子が通過できるようになり、半導体としての特性を発揮します。

そして研究者らは、ニューラルネットワークのアルゴリズムを鍛え、結晶性材料の歪みの量と方向がバンドギャップにどのように影響するかについて人間からの知識や推測なしに高精度で予測させることを可能としました。

この技術を用いて分析を進めれば、たとえばシリコン結晶を用いる太陽電池なら、わずか1/1000の厚さで従来と同じエネルギーを生み出せるようになったり、ダイヤモンドがシリコンに代わる実用的な半導体素材に変身するといったことがありえるかもしれません。

研究チームは、現在のところ電気的特性にフォーカスした研究を行っています。しかし冒頭に述べたように、この技術は光学的および熱的な特性を変化させることができることも強調しています。

ただ、半導体チップを構成する複雑さを保ったまま必要な歪みを加えるためにはどうすれば良いのかといった技術的課題があります。しかしそれを克服すれば、将来的にはたとえばスマートフォンのSoCレベルのチップにダイヤモンドベースの超高速チップを搭載できるようになったり、ルーフ上の太陽電池だけでどこまでも走り続けられるEVを作ることも可能になるかもしれません。

この研究はまだスタートラインに立ったばかりですが、”歪み”が太陽エネルギーの活用とコンピューターの性能向上に役立つかもしれないことを示します。

【no.280】AI特許出願トップ5に東芝、NEC – 教育機関は中国独り勝ち

AI特許出願トップ5に東芝、NEC – 教育機関は中国独り勝ち

世界知的所有権機関(WIPO)が初めてAI関連の特許出願数などを調査した。日本企業は出願件数が多く、世界トップ5に東芝とNECが、トップ30をみると計12組織が入っている。大学など教育機関の多さは中国が「独り勝ち」状態だった。また分野別にみると、ライドシェア向けのマシンラーニング技術、音声認識にも利用されるディープラーニング技術の増加率が高いという。

AI特許出願トップ5に東芝、NEC - 教育機関は中国独り勝ち

スマートスピーカーなどで身近になったAI

人工知能(AI)という言葉は1950年代に初めて登場したが、概念自体はそれ以前から存在しており、AI研究の歴史はそれなりに長い。ただ、その成果は実験的なものが多く、消費者が日常でAIを体験する場面はほとんどなかった。

それが2010年代に入り、状況は一変した。テレビのニュースや新聞の記事でAIが取り上げられない日はないほどだ。日々の生活も、普及期に入ったスマートスピーカーAI音声アシスタント対応スマート家電、高度なアプリの動くスマートフォンなど、アマゾンやグーグル、アップルなどのAIエコシステムに囲い込まれつつある。

こうした状況を受け、世界知的所有権機関(WIPO)がAI研究開発トレンドを調査し、報告書「WIPO Technology Trends – Artificial Intelligence」を公表した。それによると、AIに関する特許出願は近年急増したそうだ。

AIのなかでどの分野が注目され、どの国や企業、産業分野がAI研究に積極的なのか、WIPOの報告書をみていこう。

他技術より目立つAI特許の増加

WIPOによると、1950年代にAIという概念が言語化されて以降、2016年までに発表されたAI関連の学術論文は160万部以上、発明特許出願は34万件に及ぶ。そして、AI関連特許の半数以上が、2013年以降に登録された発明だという。

AIに分類される技術のうち、特許では機械学習(マシンラーニング)が多い。なかでも、機械翻訳などに応用されるニューラルネットワークは、全体の3分の1以上で使われていた。また、ライドシェアリングで使われるタイプの機械学習に関する特許出願は、2013年の9,567件から、2016年の2万195件へ増えた。

音声認識などに利用される機械学習技術の深層学習(ディープラーニング)は、特許出願が最速ペースで増えている。具体的には、2013年が118件、2016年が2,399件と、3年間で20倍近くも増加した。

ちなみに、特許出願は全体的に増加しているが、2013年から2016年にかけての増加率は33%にとどまっており、AI関連特許の急増ぶりがよく分かる。

自動運転やロボットへAI応用進む

出願されたAI関連特許の応用分野については、自動運転車に不可欠な画像認識などのコンピュータービジョンが最多で、49%で言及されていた。ロボット分野へのAI応用も活発で、ロボット工学のAI特許出願は2013年が622件、2016年が2,272件、ロボットアーム制御などのコントロール手法に関する出願は2013年が193件、2016年が698件といった状況だった。

産業分野別にみると、AI関連特許の出願増加ペースがもっとも速いのは、自動運転車を含む運輸分野。出願件数は2013年が3,738件、2016年が8,764件で、2倍以上の伸びだ。それ以外では、以下の分野が目立つ。

電気通信

  • 2013年:3,625件
  • 2016年:6,684件

生命・医療科学

  • 2013年:2,942件
  • 2016年:4,112件

個人向けデバイス、コンピューター処理、マン・マシン・インターフェイス

  • 2013年:2,915件
  • 2016年:3,977件

活躍する日本、躍進する中国

出願件数トップ30のうち、12が日本企業

AI関連特許の出願件数を出願人別に集計すると、2016年末時点で8,290件のIBMが他を大きく引き離して1位。以下、2位はマイクロソフトの5,930件、3位が東芝の5,223件、4位がサムスンの5,102件、5位がNECの4,406件。

出願件数では日本企業が活躍しており、上位30組織に東芝とNECのほか、富士通、日立製作所、パナソニック、キヤノン、ソニー、トヨタ自動車、NTT、三菱、リコー、シャープが入っている。

出典:WIPO / WIPO Technology Trends 2019 – Artificial Intelligence

【no.279】過酷なアニメ制作の現場、AIで救えるか 「動画マン」の作業を自動化、DeNAの挑戦 (1/2)

過酷なアニメ制作の現場、AIで救えるか 「動画マン」の作業を自動化、DeNAの挑戦 (1/2)

「労働環境が過酷すぎる」「時間も人もお金も足りない」――日本のアニメ制作現場では、アニメーターの低賃金労働や法定労働時間の超過といった問題が指摘されている。こうした状況を、近年進化が著しいAI(人工知能)技術で改善できないか。ディー・エヌ・エー(DeNA)AIシステム部の李天キ(王に奇)さんと濱田晃一さんが、2月6日に開催された技術者向けイベント「DeNA TechCon 2019」で、最新技術を用いた事例を紹介した。

アニメの制作現場でも特に過酷とされるのが「動画マン」と呼ばれる仕事だ。動画マンは、滑らかなアニメーションになるように、原画と原画の間を埋める絵(中割り)を描く人のこと。

私たちが良く目にする「30分間のテレビアニメ」の場合、1話当たり3500~4000枚の中割りを描く必要があるという。1枚を完成させるのに数時間かかることもあるが、給与はほとんどの場合1枚いくらの歩合制。時間をかければかけるほどアニメーターの時給は下がっていく。

アニメアニメの中割りをAIで生成

「構造変化が大きい」 アニメの難しさ

李さんは、与えられた原画のデータを基に、原画と原画の間を埋める中割りの画像を自動生成できないかと考えた。実写動画の中間フレームを自動補完する「Frame Interpolation」という技術は既に存在する。ニューラルネットワークが、2枚の画像間におけるピクセルの移動量を表したベクトルマップ「Optical Flow」を算出し、中間フレームを合成するというものだ。

アニメ「Frame Interpolation」の技術

いまの技術では、フレームレートが30~60fpsの動画を入力すると、中間フレームが補完された240~480fpsのより滑らかな動画を生成できるという。

しかし、この手法をそのまま「アニメの中割り」に適用するのは難しい。実写動画とアニメではフレームレートが違いすぎるからだ。フレームレートが低いアニメは「画像間の構造変化が大きい」。

アニメアニメの中割りにはそのまま適用できない

李さんは「実写動画に比べ、アニメはフレームレートが低い。またイラストは実写に比べて色が単調でピクセルの対応点を特定しにくく、Optical Flowの計算が困難だ」と説明する。

【no.278】AIを駆使してジェンガをプレイするMITのロボット–目指すは「産業への応用」

AIを駆使してジェンガをプレイするMITのロボット–目指すは「産業への応用」

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは米国時間1月30日、ジェンガをプレイできるロボットの開発に関する論文をScience Robotics上で発表した。この昔からあるゲームのルールはかなりシンプルだ。プレーヤーは、直方体のブロックを積み上げて作られたタワーを崩さないようにしながら、ブロックを1本ずつ抜き取り、最上段に積み上げていく。ルールはシンプルながら、ジェンガでは身体的なスキルと精神的な戦略を組み合わせることが必要とされる。このゲームをロボットにマスターさせることができれば、産業界に存在するさまざまな作業上の課題を克服できるようになる。


提供:マサチューセッツ工科大学(MIT)

問題へのアプローチと俊敏性を組み合わたこのスキルセットは、現実世界でロボットによって電気製品などの製造や組み立てを行う際に威力を発揮するはずだ。

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MITのエンジニアらは、ABBのロボットアーム「IRB 120」をカスタマイズし、柔らかい素材で先を覆ったグリッパー(握り部分)と、圧力センサを組み込んだリストカフ(手首部分)、外部カメラを装備した。彼らのロボットは、人間がジェンガをプレイする時と同様に、いずれかのブロックを押してみることで、タワーを崩さずに抜き取れるかどうかを判断する。人間が視覚と触覚を用いるのに対して、ロボットは視覚にカメラを、触覚にリストカフを用いるようになっている。

同論文の主執筆者であるNima Fazeli氏は米ZDNetに対して「このロボットは現実世界におけるセンサ誤差や、不完全な情報に対処する必要がある。ここで重要なのは、ジェンガのタワーに実際に触れずしてその状況(ブロックをどのように動かせるか)を把握するのは不可能だという点だ。このため、人間と同様、視覚と触覚という2つの補完的な感覚を組み合わせる必要がある」と語っている。

ロボットは経験を重ねることで、ジェンガをより上手にプレイできるようになった(言い換えれば、不安定な状態にある物体をよりうまく操作するための方法を学んだ)。しかし、ロボットを教育するためにジェンガのタワーを何度も組み立てるのは、時間のかかる面倒な作業であるため、エンジニアらは少量のデータだけで済むアルゴリズムとアプローチを考え出したとFazeli氏は述べている。これによりロボットは、何万回ものタワーの組み立てを必要とする大量のデータセットを収集することなしに、300回程度の試行で学習を終えた。この効率的なアプローチでは、似たような振る舞いと結果をクラスタ化するようになっており、その後ロボットは、各データクラスタごとにモデルを作り出し、ブロックの見た目や感触から、そのブロックがどのように動くのかを予測したのだった。

このプロジェクトの目標は、ジェンガの達人を生み出すことではなく、人工知能(AI)が現実世界とやり取りする方法を向上させるというものだ。Fazeli氏は「これを産業での自動化に応用したいと考えている」と説明している。この技術は特に、ロボットによる組み立て作業解体作業といった、部品をどのようにして配置すべきかを理解する必要のある作業で有用となるはずだ。

Fazeli氏は「ジェンガのブロック間での相互作用を取り扱うこのロボットが持つような、有用な抽象化能力と、視覚や触覚の領域で物理作用を推論する能力は、産業分野の現場でロボットが有用な操作スキルを効率的かつ迅速に学習できるようにするうえでの重要なステップとなる」と述べている。

【no.277】熟練工が1週間かかる調整作業→AIは1日で完了 三菱電機と産総研がFA分野でAI活用

熟練工が1週間かかる調整作業→AIは1日で完了 三菱電機と産総研がFA分野でAI活用

菱電機と産業技術総合研究所は2月5日、工場の生産ラインの準備作業を効率化するAI(人工知能)技術を共同開発したと発表した。産総研が提供するAI技術を、三菱電機が自社のFA(ファクトリーオートメーション)機器やシステムに実装する。熟練工が時間をかけて行っていたFA機器の調整作業などをAIに代替させ、作業時間の短縮を図る。

AI工場の生産ラインにおける準備作業とは(切削加工の例)

生産現場では、FA機器やシステムの調整、機器を動かすプログラミングなどにかかる工数の増加や熟練工の減少が問題になっている。こうした課題を解決するため、FA機器やシステムの調整作業をAIで自動化しようと考えたという。

「パラメーター調整」「画像判定」「異常検知」を自動化

小さな電子部品をプリント基板の決められた場所に載せる実装機では、機械の振動を抑えながら素早く目標位置に停止するようAIがモーターを制御。これまでは、あらかじめ熟練工が1週間以上かけて2種18個のパラメーターを手動調整して制御していたが、少ない試行回数で最適なパラメーター値を見つける「ベイズ最適化」の手法を応用したことで8種720個のパラメーター調整を1日で完了できたという。

AI製造機械のパラメーター調整にAIを活用

レーザー加工機を用いた板金の切断加工では、経験の少ない従業員でも熟練工と同等の加工品質を維持できるよう、加工面の品質判定を画像認識AIがサポート。熟練工が目視で判断していた加工面のキズ、上面荒れ、溶融付着など5つのポイントをAIに判定させた。問題がある場合は、レーザーの焦点位置や加工速度、ガス圧力などあらかじめ設定された条件をAIが自動調整しながら最適な条件を見つける。

本来、ディープラーニングには数千~数万枚もの学習用データ(画像)と膨大な計算処理が必要になるが、画像特徴量の1つである「高次局所自己相関特徴」(HLAC)に注目したことで、必要な学習データ数と学習のための計算量の削減に成功したという。これに熟練工が蓄積してきた加工知識を合わせ、AIの学習効率を上げたとしている。

AIレーザー加工ではAIによる画像判定を活用

組み立て作業を行う産業用ロボットの「異常判定」もAIで自動化した。組み立て作業では力覚センサーでロボットに異常がないかを常時監視する。部品の欠損や異物混入などがあった場合はセンサー出力の波形が乱れるという。

AI産業用ロボットの異常検知もAIが自動判定

従来は熟練工が「どんな異常が起きたか」を都度確認し、各ケースに応じて異常処理プログラムを作成する必要があったが、この判定部分をAIが代替。あらかじめ起きうる異常と波形のパターンをセットでAIに学習させ、その学習結果を異常処理プログラムに組み込んだ。時系列データ分析向けの機械学習技術(時系列データに適した構造のニューラルネットワークであるLSTMなど)を用いたという。

【no.276】人間の分身「AI司会者」が中国で誕生 ── 忘れるな。設計、開発したのは人間だ

【no.276】人間の分身「AI司会者」が中国で誕生 ── 忘れるな。設計、開発したのは人間だ

AI分野の成長が著しく、同分野で圧倒的な存在感を示しているのが中国だ。実際、昨年行われた「2018年中国人工知能産業年会」では、2018年上半期におけるAI分野へのグローバル投資額435億ドルのうち317億ドル、つまり全投資額の4分の3を中国が占めていると発表された。

追い打ちをかけるように、中国の春節聯歓晩会(毎年7億人以上が視聴する中国版紅白歌合戦)に、パーソナル人工知能(PAI)技術を利用して生み出された世界初の「AI司会者」が登場した。

AI司会者がどう生まれ、何をもたらすのか

AI司会者を開発したのは、アメリカ・カリフォルニア州パサデナを拠点とし、分散型の個人用AI、パーソナルAIアバター(PAI) を開発するAI専門会社「ObEN」だ。2014年に設立された同社は、ソフトバンク・ベンチャーズ・コリアやテンセント、HTC VIVE Xの投資先企業でもある。

PAIは、

「長期間の旅行中に自分自身の仮想コピーを『残していく』ことによって、家族と繋がっていたい」

という考えから生み出された。

人物の2D画像と音声を組み合わせ、短時間で作り出された3Dアバターは、ユーザーの声で歌い、流行りのダンスを踊る。さらには、モバイルデバイスを介してファンと交流し、まるで現実でコミュニケーションを取るように感じさせることも可能にするという。

では、3Dアバターが何をもたらすのか? おそらく現実世界で3Dアバターを多用する未来はまだ先だ。最大限に価値を発揮するのは、仮想空間での活用だろう。ユーザーをVR環境やAR環境に送り込み、真に迫った新しい体験を与えてくれるはずだ。

仮想空間といえば、イベントやミーティングを仮想空間で開催できるバーチャルイベントプラットフォーム「cluster」も注目を集めている。このサービスでは自分に似たアバターは使用しないが、仮想空間におけるコミュニケーションの機会は、他にも確実に増えており、今後さらに加速していくだろう。

企業の裏側や特殊な領域ではなく、身近な「AI浸透」が進む

中国では、AI司会者だけでなく、国営メディア「新華社通信」にAIアナウンサーも登場している。

動画を見て見てもわかるように、「これは人間なんじゃないか?」と勘違いする方も少なくないだろう。

AIアナウンサーは、日本でも導入実績がいくつかある。2018年4月にはNHKのニュース番組「ニュースチェック11」に登場した「ニュースのヨミ子」が、AIによる合成音声でニュース原稿を読み上げた。ニュースのヨミ子は、NHK放送技術研究所が開発した平昌オリンピックの「ロボット実況」に使われた技術がベースになっている。

また、日本経済新聞社がYouTubeに公開している動画の一部では、AIアナウンサー「荒木ゆい」が採用されている。言葉を噛まない、完全に制御できるという点では、アナウンサーはAIで十分ではないかという意見もある。アナウンサーがアバターになれば、ユーザーが好みのビジュアルや声、キャラクターを選択できる。これによりユーザーの満足度向上が期待できる。また、一度開発してしまえば、運用・保守が低コストな点も魅力的だ。

このように、国内外の至るところで、社会へのAI技術の浸透に気付かされる機会が増えた。それが、企業の裏側や特殊な領域で起こっているのではなく、我々の身近な場所で進んでいるのというのが、今後数年で生活へさらにAIが浸透する期待を感じさせてくれる。