【no.219】創業65年、AIで生まれ変わる箱根の老舗ホテル その成功の要因は?

創業65年、AIで生まれ変わる箱根の老舗ホテル その成功の要因は?

「AI」「機械学習」「ディープラーニング」といった技術への期待が過熱する中、あらゆる業種、業界で、これらをビジネスへ適用する動きが加速している。

既に導入を終え、成果を出している企業がある一方で、検討はしているものの具体的なアクションにつながっていなかったり、導入してみたものの思うような効果が得られず焦っていたりする企業も少なくない。出遅れを挽回し、成功企業との「成果の格差」を埋めていくために、何ができるのか。成功企業は、これらの技術をどのように成果へ結び付けているのだろうか。

アイティメディアが2018年9月26日に東京・秋葉原で開催した「AI/ディープラーニングビジネス活用セミナー」では、多様な業界でAIおよびビッグデータのビジネス活用を手掛けるキーマンたちが、自らの活用事例を紹介。本記事では、箱根湯本にある老舗ホテル「ホテルおかだ」の取締役営業部長、原洋平氏による基調講演を紹介しよう。

原氏は、旅行者の動向やニーズが変化を続ける中、旅館業としてBI、SFA、MA、そしてAIといった技術をどのように取り入れ、顧客満足度の向上につなげていこうとしているのかという視点で、同ホテルの取り組みを紹介した。

ホテルおかだの創業は1953年。60年以上にわたって箱根を訪れる旅行者をもてなしてきた老舗である。従業員は約130人、部屋数は122室を数え、源泉3本を所有する、箱根の中でも大規模な旅館だ。かつては団体客をメインターゲットとしていたが、近年では、顧客の宿泊目的に合わせて、一般客室から、露天風呂付きの客室までを幅広く選べる体制を整えているという。

ホテルおかだが、本格的なITおよびAIの活用を検討するに至った背景には、旅行のスタイルが「団体型」から「個人型」へとシフトしていく中で、予約処理数の増加や、ニーズの多様化によるオペレーションの複雑化などが懸念されていたためだ。

個人の宿泊客が増えることで、予約件数は2009年からの7年間で66%増。さらに、オンライン予約の普及によって、予約やメールによる問い合わせが入る時間は、営業時間外にまで広がり、キャンセル率も28%から35%へと徐々に増えていた。また、外国人を含む個人客の多様なニーズに応えるためにプラン数や価格帯を増やしたことで、オペレーションのコストも増える傾向にあった。

宿泊客対応のオペレーションは今後も複雑化するのは明らか。その中で、いかに顧客満足度を上げていくかという課題に対し、ホテルおかだが出した答えが、「ITの活用によって、これまでよりも生産性を高め、よりたくさんのお客さまに高級旅館並みのサービスを提供していく」ことだったという。

そして、AI導入の目的は「顧客接点の改善」にあった。具体的には、ホテルおかだの公式Webサイト内にある「よくあるご質問(FAQ)」において、質問内容の予測や最適な回答の提示を「Oracle Service Cloud」で実現している。

ホテルおかだのWebサイトにアクセスすると、ほぼ全てのページの下部に「よくあるご質問」のタブが表示されている。これをクリックすると、サイトの訪問者がその時点で見ているページに合った内容のFAQが表示されるのだ。

例えば「館内施設」のページであれば「近くにコンビニはありますか?」「プールを利用したいのですが」。「料理」のページであれば、「食事の時間は何時ですか?」「好き嫌いやアレルギーの対応はできますか?」といった項目が自動的に選ばれる仕組みだ。また、FAQの参照数などは逐次記録されており、同じカテゴリーに属する項目であっても、直近での参照頻度が多いものを優先的に表示する。

FAQの各項目は、以前から蓄積していたナレッジベースをもとに作成されたが、このシステムでは「アンサーの参照数」「『役に立ちましたボタン』の押下回数」「訪問者が利用した検索ワード」などの情報が、リアルタイムのレポートとして確認できる。これらをもとに「参照者の評価が低いFAQや、多い検索ワードに関連したFAQの内容を改善することも可能になった」(原氏)そうだ。

時代の変化にうまく対応して、AIをうまくHPに活用した例ですね。
次回の更新も楽しみにしていただけますと幸いです!