【no.256】衣類を畳むロボット、実用化へ一歩 布の形をAIが予測 信大准教授が基礎技術

衣類を畳むロボット、実用化へ一歩 布の形をAIが予測 信大准教授が基礎技術

信州大工学部(長野市)の山崎公俊准教授(知能ロボット学)は、衣類を畳むといった生活支援につながるロボットの実用化に向け、布を動かした時の形の変化をAI(人工知能)で予測する基礎技術を開発した。持ち上げると形状が変わる布などの柔軟物をロボットが扱うのは難しいとされるが、実用化の道が開ければ、家事や産業分野などで活躍の幅が大きく広がると期待される。AIの性能をさらに高め、技術の確立を目指す。

AIを搭載し、最適な動きを自ら判断して搬送や組み立てを行うロボットは、既に製造現場などで使われている。カメラで対象物の位置や形、大きさを認識し、つかむ位置や持ち方、作業手順を考えて実行する。形が変わらない金属や樹脂は持ち運びのシミュレーションが比較的容易で、AIでも段取りを考えやすい。だが、布やひもなどは持ち方によって形が複雑に変わるため、作業動作のシミュレーションが困難という。

山崎准教授は「ここを持つと布はこう動くはずだとAIが予測できれば、畳み方を考えることができる」と説明。AIが自ら学習し判断能力を高める「ディープラーニング(深層学習)」という手法を使い、無造作に置いた状態の布の画像データと、ロボットのアームが布のどこを持ってアームがどう動いたかという作業データ、その結果として畳まれた布の画像データを大量に覚え込ませた。

AIは、アームの動きから布の形の変化を予測できるようになり、畳む前の形と目標の形を照らし合わせて、作業手順を導き出すことが可能になった。

ロボットは現在、タオルやTシャツを畳むことができる。この技術を応用し、幅広い柔軟物の動きを予測できるようになれば、洗濯物の折り畳みに加え、葉物野菜の調理、ケーブルの配線、荷物を袋に詰めるといった作業をロボットで行うことが可能になるという。

現在の技術では、ボタン付きのシャツなどデータを覚えさせていない衣類はまだ扱えない。山崎准教授は「初めて見た物も扱えるようにするため、AIの性能をさらに高める必要がある」としている。