【no.312】写真から商品データを推測、メルカリがAI活用の実態を解説

写真から商品データを推測、メルカリがAI活用の実態を解説

メルカリは、AIを活用して出品を簡単にすることに注力している。「売ることを空気に」したいと、メルカリ取締役CPOの濱田優貴氏(写真1)は言う。AI企業としてのメルカリの強みとして濱田氏は、メルカリのサービスを介して得た大規模なデータセットと、豊富なAI人材を挙げる。

大規模なデータセットについては、サービス開始から6年を経て蓄積した、数十億を超える商品データがある。メルカリを利用したユーザーが投稿した、累計出品数11億品超の写真画像や説明文である。これをディープラーニングで学習している。これにより、ある写真画像と類似した商品のデータを得られるようにしている。

AI人材については、現在、データ収集とモデル作成に携わるML(マシンラーニング)エンジニアが約20人、作成したモデルを運用するシステム構築・運用エンジニアが約10人、合計で約30人のエンジニアを抱えている。2019年4月には新卒10人を追加し、2019年9月には新卒20人を追加する。

写真を撮るだけで出品できるようにする

会見では、AIの活用例として、2017年10月から運用しているAI出品の機能について説明した。出品時に登録した商品の写真画像から、商品の内容などの入力候補を提示する機能である(図1)。タイトル、カテゴリ、ブランドを推定し、これらを手動で入力する手間を省く。価格についても、どのくらいで売れるかを示してくれる。

図1:AI出品の概要。出品時に登録した商品の写真画像から、商品の内容などの入力候補を提示してくれる(出典:メルカリ)図1:AI出品の概要。出品時に登録した商品の写真画像から、商品の内容などの入力候補を提示してくれる(出典:メルカリ)
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出品を極限まで簡単にする、とメルカリは言う。あらゆる商品を、写真だけで出品できるようにしたいとしている。次期アプリのプロトタイプでは、スマホをモノにかざすだけでモノを認識し、出品価格を表示する。この流れで、そのまま出品できる。現在でも、書籍やゲームソフトなどの識別が容易なものについては、写真だけで商品説明まで自動で入り、1分以内で出品できる。

AI出品では、AIの活用方法に工夫を凝らした。ディープラーニングだけでは商品カテゴリやブランドの増減・再構築のたびに再学習が必要になるため、ディープラーニングで学習させたモデルを活用しつつ、k-近傍法を組み合わせた(図2)。「ディープラーニングの運用面の弱点を古典的な手法でカバーしている」(メルカリでエンジニアリングマネージャーを務める山口拓真氏)。