【no.315】ドコモの「AI運行バス」が出発、九州大学の学内バスで初の商用導入

【no.315】ドコモの「AI運行バス」が出発、九州大学の学内バスで初の商用導入

NTTドコモは、次世代のバス運行管理システム「AI運行バス」を九州大学に提供しました。これまで全国10か所で実証実験が行われていましたが、商用サービスとしての導入は今回が初めてとなります。

九州大学では「aimo(アイモ)」というサービス名称で、学内移動用の無料バスとして導入します。

AI運行バス▲左から、福岡市 副市長の光山裕朗氏、NTTドコモの吉澤和弘社長、九州大学総長の久保千春氏、九州大学副学長の安浦寛人氏

AI運行バスのシステムでは、時刻表や運行ダイヤは設定されず、バス停のみが設置されます。乗客はスマホを使って予約し、数分後に配車されたバスに乗って目的地に向かいます。

固定の運行ルートは存在せず、バスのその時の乗客の行きたいルートに合わせて調整されます。途中の停留所で乗客がある場合、経由地がリアルタイムで変更され、全ての乗客を運ぶために最も効率の良いルートが選択されます。このルート選択にAI技術を活用しているわけです。

AI運行バス

■日本最大のキャンパスで実証

九州大学は2018年、都心部にあった3つのキャンパスから伊都キャンパスへの移転を完了しました。伊都キャンパスの敷地面積は東京ドーム58個分にも及ぶ275ヘクタール。切り開かれた山の中に大きな校舎が点在する壮大なキャンパスです。学内に車道や交差点から、信号機まで揃っており、新しい交通システムの技術検証には格好の環境と言えます。

AI運行バス

九州大学では、自動運転などの技術に伊都キャンパスを活用するために「スマートモビリティ推進コンソーシアム」を設立。九州大学、福岡市のほかNTTドコモ、日産、DeNAといった企業が参加しています。

日産やDeNAは自動運動の実証実験を行なっていますが、ドコモは「自動運転社会の手前の技術」としてAI運行バスを検証しました。

NTTドコモの谷直樹氏は、AI運行バスにより「新しい需要の創出」ができると強調します。すなわち、リアルタイムにルートが設定ができるAI運行バスでは、これまでの固定ルートの路線バスではバス停を設置できなかったような場所にもバス停を置くことができるため、新たなの乗車需要を生み出せるというわけです。

AI運行バス

さらに、AIによる運行管理によって、輸送効率も向上できるとしています。九州大学で運行している固定ルートのバスの運行効率は4%程度、つまり50人のバスなら平均で2人しか乗っていないという効率の悪さでした。それをAI運行バスに置き換えると、都営バスに近い水準のバス並みの19%まで改善したとしています。ピーク時間帯の輸送力を変えずに、乗客の平均的な待ち時間を抑える効率的な仕組みになっています。

AI運行バス▲NTTドコモ 執行役員 IoTビジネス部長の谷直樹氏

AI運行バスは過疎化が進む地方や、観光客の足として適した交通システム。ドコモではAI運行バスのシステムを全国の自治体やバス事業者を中心に販売していくとしています。谷氏は「2020年度末(2021年3月)までに全国100エリア以上での展開を目指す」と表明しました。