【no.474】改善余地アリ? パナ、AI人材1000人への道

改善余地アリ? パナ、AI人材1000人への道

2015年度以降、AI(人工知能)人材の育成・獲得に力を入れてきたパナソニック。20年度に1000人のAI人材を抱えることを目標に掲げ、現在は約700人まで増えた。ただ、1000人までの道のりは楽ではなさそう。仮に1000人の陣容になったとしても、パナの事業に貢献できるかもなお未知数だ。

AIが活用されている、パナソニックの自動運転ライドシェアサービス

 

パナではAIの知見を自動運転サービスや車載機器のセキュリティーシステム、家庭内の電気機器をネットでつなぐプラットフォーム「ホームX」などに役立てている。デジタルデータを上手に活用することが求められている中で、AIの必要性は高まるばかり。独自の製品やサービスを生み出す上で、AI人材は大きな戦力となる。

AI人材にとってパナの魅力は何か。パナの関係者によれば、「人の生活に密着した領域で活躍できる」ことだという。津賀一宏社長が自社で手掛けるべき事業領域を「くらしアップデート」と表現するように、パナには家電や照明といった身の回りの商材が多い。パナであれば、自分が関わった仕事がどう社会で役に立ったかが見えやすく、次なる仕事への熱意も湧きやすくなるというわけだ。

パナはAI人材を対象に有給のインターンシップ(就業体験)を催したり、学会や大学、研究機関の研究室にも足を運んだりして、AI人材を集めてきた。現状で約700人。目標とする1000人も視野に入ってきた。

だが、11月28日にパナが開いたAI人材に関する説明会に登壇したAIソリューションセンターの九津見洋所長の表情は厳しかった。

「面接に来てもらっても、待遇面で他社に負けてしまうことがある」。九津見氏はそう吐露した。

あらゆる業界でAI人材が求められ、新入社員でも年収1000万円以上を提示する企業も珍しくなくなる中で、パナはそうした「特別枠」はない。採用に至っても、その後の定着は難しいという。「何らかのリテンション(引き留め策)が必要」との声はパナ社内からも聞こえてくる。

AI人材を集めた後にも課題は残る。商品化やサービス化に、AIの知見を具体的に生かせる人材が「まだまだ少ない」(九津見氏)のだ。

改善余地がありそうなパナのAI人材戦略。課題を一つひとつ解決することが、会社を次の成長へ導くことになるはずだ。