【no.548】新型コロナ感染拡大 AIで予測、早期に抑え込み

新型コロナ感染拡大 AIで予測、早期に抑え込み

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、スタートアップが人工知能(AI)を使った感染対策に取り組んでいる。ここ数年、ジカウイルスなどの別の感染症対策でも成果を上げてきた。クラスター(感染者集団)の発見や早期の対策につながる可能性がある。
新型コロナが世界各地に広がるなか、スタートアップ企業や研究者は人工知能(AI)を使ってウイルスの感染経路をモデル化し、封じ込める戦略を練っている。もっとも、この戦術は新型コロナだけに使えるわけではない。ここ数年、ジカウイルスやデング熱、ニパウイルスといった感染症の予測や追跡にもAIが使われている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。
自然言語処理(NLP)や機械学習、位置情報のモニタリングなどのテクノロジーにより、流行が発生する可能性が高い地域を突き止め、感染の拡大経路を予測することが可能になった。各国政府や公衆衛生機関はこうした情報を活用し、十分な情報を得た上で対処法を速やかに判断できる。

今回のリポートでは、感染症を速やかに発見して対処するためにAIがどう活用されているかについて取り上げる。例えば、ソーシャルメディアでの言及数から感染拡大を追跡したり、野生動物の移動パターンに基づいてリスクの高い地域を特定したりしている。

■フライトやソーシャルメディアなどのデータを使って感染マップ作製

カナダのトロントに拠点を置くブルードット(BlueDot)は自然言語処理と機械学習を活用して特定の場所でのメディアの言及などデータを解析することで、感染症が流行している地域を特定する。さらに、こうした地域からの航空機の出発便に関する情報を追跡し、感染拡大を予測する。

ブルードットは2016年、この手法によりジカウイルスの感染がブラジルから国境を越えて米フロリダ州に拡大することを、米国初の感染例が報告される前に正確に予測した。19年12月にも、新型コロナが(発生源である)中国の武漢市から東京やバンコク、ソウルなどの都市に拡大することを予想した。