AI(人工知能)や人工衛星、センサーなど、産業分野で使われる先端技術が豪雨災害への対策として注目されている。昨今の豪雨は広域化・激甚化しており、防災の現場は人手不足に頭を悩ませてきた。自治体に所属する防災のベテランも人数が限られている。そこで期待されるのが民間の力だ。水害のダメージを少しでも軽減するため、企業が知恵を絞って新しい技術を続々と開発している。
豪雨による災害防止に大きな役割を果たすダム。そのダムにAIを使うことで、より治水の効果を上げられないか――。建設コンサルタント大手の日本工営(東京・千代田)は、そんな研究を進めている。
一般にダムは厳格な操作規則に基づいて操作される。近年の異常な豪雨によって下流域に急激な増水が予見される場合は、洪水の発生リスクを低減するため、柔軟なダム運用が不可欠となる。ただ、刻一刻と状況が変わる中で、管理者がダム操作を最適化するのは至難の業だ。ダムは一定のルールに沿って管理者が運用しているが、その“支援者”としてAI活用に期待が高まっている。日本工営・中央研究所先端研究センターの一言正之課長は、「米グーグルの囲碁用AI『アルファ碁』で脚光を浴びた深層ニューラルネットワークというものを用いたダム操作のAIを研究している」と話す。広域化・激甚化する豪雨に対応するダム管理者の判断をAIで支援するのが狙いだ。