【no.488】中国のAI技術は過大評価? 課題に直面するユニコーン企業たち

中国のAI技術は過大評価? 課題に直面するユニコーン企業たち

中国の人工知能AI)ブームを巡っては、大げさで物議を呼ぶようなニュースが目につく。しかし、北京の中心部からクルマで北に1時間ほどの場所にある工業団地に足を運ぶと、その実情の一端を垣間見ることができる。

工業団地の一画にある倉庫では、筒のような形をしたロボットが数台、複雑な経路を描きながら動き回っている。ときおり、そのうちの1台が音を立ててながら地面から容器を持ち上げ、人間の倉庫係がいるところまで運んでいく。別の部屋では、エンジニアたちがコンピューターのモニターに映し出されるコードをじっと見つめる。

このロボットと、それを動かすAIを開発したのは、曠視科技(Megvii Technology)という企業だ。中国では有名なユニコーンのひとつで、目の前で行われている倉庫用ロボットのデモは、中国がAI分野でもつ力の証明でもある。これを見ていると、米国を追い抜く日も近いとすら思えてくる。

一方で、この倉庫で起きていることは、中国のAIの根本的な弱点も示している。米国ではすでに、アマゾンがかなり以前から配送センターで同様のテクノロジーを採用しているからだ。中国のAI企業はここ数年で徐々に収益化を果たしたが、AIの普及が進むにつれ、今後はそれが難しくなる可能性がある。

米中間の貿易摩擦が事態をさらに困難に

市場調査会社のCB Insightsによると、Megviiの評価額は約40億ドル(4,380億円)に上る。同社は顔認識システムで知られるが、物流や製造業向けのAI技術も手がけ、この分野での事業拡大を目指している。ただ、問題はAIが多様な産業で広く使える汎用技術であることが証明されていない点だ。これに加え、米中間の貿易摩擦が事態をさらに困難にしている。

香港のビジネスジャーナリストで中国のAIブームを取り上げた『Red AI』の著者でもあるニーナ・シャンは、「これらのAI企業がアリババやテンセント(騰訊控股)のように巨大化することはないでしょう。現在の評価は修正すべきです」と語る。

米国のトランプ政権は10月、Megviiをはじめとする中国のAI企業6社を輸出規制の対象に加えると発表した。新疆ウイグル自治区で行われているイスラム教徒の弾圧に、これら6社の技術が使われているからだ。この措置により、6社は事業に必要不可欠な最先端の半導体チップなどを米企業から購入することができなくなる。

中国では近年のAIブームで10社を超えるユニコーンが誕生している。うちセンスタイムの評価額は75億ドル(8,220億円)、依図網絡科技(YITU Technology)と雲従科技(CloudWalk Technology)は、いずれも20億ドル(2,190億円)だ。また、音声認識を手がける科大訊飛(iFlytek)は2008年に深圳証券取引所に上場したが、この際には10億ドル(110億円)の資金調達に成功している。

【no.487】AI営業マンついに登場、問い合わせを自動送信してアポイントを獲得

AI営業マンついに登場、問い合わせを自動送信してアポイントを獲得

12月20日、株式会社QuickWorkが運営する企業データベース「ApoKakuDB」に、AI・RPA技術を活用した問い合わせ自動送信ロボ「Daniel」のα版がリリースしたと発表。

ApoKakuは、BtoB顧客ターゲッティングを強みとしていて、売り上げや資本金、拠点数、従業員数などに加え、400種類以上の業界や、9000種類以上の事業シナリオでのデータベース検索が可能だ。多量なデータベースを保有しているため、プレスリリースでは「“人力で作成するより精度の高いターゲティングリスト”をたった10秒で作成することができます」とうたっている。

今回発表された問い合わせ自動送信ロボ「Daniel」は、同社の別サービスで使われていたRPAの基盤システムを活用したことで、問い合わせ自動送信機能を実装しアポイント獲得を自動化する。

また、プレスリリースによれば、問い合わせの送信設定はわずか1分程度。ダッシュボード上で「当月サマリ」「契約内容」「問い合わせ送信結果」を確認できる仕様になっていて、進捗把握が手軽にできるUX/UIが特徴とのこと。

ApoKakuのターゲティング機能により、サービスニーズの高い顧客を特定し、その対象にのみアプローチすることができるので高いアポイント獲得率、成約率が見込めるようだ。

【no.486】AIでインフルエンザの流行を予報、日立と損保ジャパン日本興亜が実証開始:今週のAI最新ニュースまとめ

AIでインフルエンザの流行を予報、日立と損保ジャパン日本興亜が実証開始:今週のAI最新ニュースまとめ

AIを活用したインフルエンザ予報サービスがさいたま市で実証開始

12月4日、株式会社日立製作所と損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、さいたま市でAIを活用してインフルエンザの流行状況を予測、情報配信するサービスの実証を開始すると発表。

予報期間は4週間後まで。流行の度合いを4段階で表示する。

【no.485】勢い増すAIスタートアップ「トップ100社」

勢い増すAIスタートアップ「トップ100社」

CBインサイツが2月に発表した2019年の人工知能(AI)分野の有望スタートアップ企業100社「AI100」には、3つの大陸から18の業界の企業が入った。各社は特許活動、投資家のプロフィル、ニュースのセンチメント(感情)分析、市場の可能性、提携、競争の状況、チーム力、テクノロジーの目新しさなど様々な基準に基づき、3000社以上から選ばれた。

2月の発表以降、7社が大企業に買収され、4社がユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未公開企業)になり、数社が米マイクロソフトや米オラクル、英金融大手HSBC、米ゼネラル・エレクトリック(GE)などと提携した。今回は100社のこの1年間の成長ぶりを取り上げる。

■買収:テスラ、ウーバー、アップルなどが買収

2019年の「AI100」スタートアップのうち、他社に買収されたのは7社だった(19年12月10日時点)。7社はサイバーセキュリティー、通信、運輸、コンピュータービジョン技術などの分野でAIを活用した解決策を手がけている。

最も目立った分野は自動運転だ。米アップルは自動運転車によるシャトルサービスを提供していた米ドライブ・エーアイ(Drive.ai)を買収し、同社の有能な人材を手に入れた。同じ週には、米ウーバーテクノロジーズがコンピュータービジョンのスタートアップ、米マイティAI(Mighty AI)を買収した。マイティAIは自動運転技術の開発企業と協力し、車の物体認識を訓練する。同社はウーバーの自動運転技術開発部門「アドバンスド・テクノロジー・グループ」に統合された。

米電気自動車(EV)メーカーのテスラはシリコンバレーに拠点を置くディープスケール(DeepScale)を買収した。ディープスケールは自動運転システム用のコンピュータービジョンソフトを開発している。

【no.484】EU人口の1%に専門教育を フィンランドが欧州「AI教育」をリード

EU人口の1%に専門教育を フィンランドが欧州「AI教育」をリード

欧州連合の議長国であるフィンランドが、EU市民を対象に人工知能(AI)の専門教育を支援するとして話題だ。10日、欧米系各メディアは、フィンランドがEU加盟国市民の人口1%(約500万人)に対し、AIに関する教育プログラムを提供する目標を掲げたと報じた。

提供されるのは、ヘルシンキ大学で考案されたAI教育プログラム「Elements of AI」だ。これは無料のオンライン講座で合計30時間のカリキュラムだ。「AIとは何か」「AIアルゴリズムによる問題解決」「機械学習」「ニューラルネットワーク」「AIが社会におよぼす影響」など、基本的な概念理解から技術面、また社会学的な内容で構成されている。

PCとタブレット、スマートフォンで受講が可能であり、修了証明書はヘルシンキ大学から発行される。すでに英語、フィンランド語、スウェーデン語、エストニア語などで受講可能だが、フィンランド雇用経済部が約167万9000ユーロ(約2億円)を支援し、他のEU公用語にも翻訳を進め、2020〜2021年の間に提供していく計画だとされている。

なおフィンランドは2018年に、自国民の人口1%(約5500人)を対象に同様のAI教育プログラムを実施するとして話題になったことがある。この目標はわずか数カ月で達成され好評を得た。現在では、フィンランドをはじめ約110カ国、22万人以上が受講申請を行うなど引き続き大きな反響を得ている。

フィンランド雇用経済部長官のTimo Harakka氏は、メディア取材に対し、EUおよびフィンランドにとって優先課題のひとつとなっている「デジタル能力開発」の具体的な足跡を残すために尽力したいと言及。また、EU市民がAIについて実用的な理解を高めることが、欧州のデジタルリーダーシップを強化するための力になると指摘している。

なお、EU離脱に向かって進む英国でも、人工知能に対する投資が増加しているとの統計がある。起業家支援を行う英団体Tech Nationによれば、2018年の英国内AI投資は10億2100万ドルを記録。2014年比で6倍増加した。2019年には上半期だけで10億6300万ドルとなっており、これは米国、中国に次ぐ世界第3位の数字となっている。

人工知能への投資・教育に関しては、ここ数年、中国や米国のそれが世界的に注目されてきた感がある。今後、欧州の巻き返しが本格化するか注目したい。

【no.483】卓球ロボットに『人の心を知るAI』搭載へ。オムロンとスクエニがタッグ:2019国際ロボット展

卓球ロボットに『人の心を知るAI』搭載へ。オムロンとスクエニがタッグ:2019国際ロボット展

産業機器を手がけるオムロンとゲーム大手のスクウェア・エニックスという異色の提携が発表されました。両社は「卓球ロボット」を舞台として、「人の成長を促すAI」の共同研究に取り組みます。

卓球を打つロボット「フォルフェウス」はオムロンが新しい技術を検証するために開発したロボットで、今回「2019国際ロボット展」で披露された機体で第6世代になります。オムロンが産業用途で販売しているロボット製品を組み合わせて制作されており、これまで卓球をする技術と、トレーニングのための技術を磨いてきました。

その卓球ロボットにスクウェア・エニックスがゲームで磨いてきたAIの知見を取り入れて、「人と協働するロボット」の技術開発を目指す、というのが今回の提携の目的です。

【no482】インテル、イスラエルのAI半導体を買収 2200億円で

インテル、イスラエルのAI半導体を買収 2200億円で

【シリコンバレー=佐藤浩実】米インテルは16日、人工知能(AI)の計算に特化した半導体を扱うイスラエルのハバナラボを20億ドル(約2200億円)で買収したと発表した。大量のデータを処理するAI半導体は5年後に年250億ドルの需要が見込まれ、開発競争も激しい。インテルは有力スタートアップを取り込むことで技術のすそ野を広げる。

インテルはAI計算用の半導体を強化するため買収を重ねている(写真は11月にサンフランシスコで開いた記者会見)

インテルはAI計算用の半導体を強化するため買収を重ねている(写真は11月にサンフランシスコで開いた記者会見)

ハバナラボは「深層学習(ディープラーニング)」に使うデータセンター向けの半導体を開発・販売する。AIの大量のデータから特徴となるパターンを抽出する「学習」と、学習成果をもとに新たなデータを判断する「推論」に向いている。2015年設立で、もともとインテルの投資子会社が出資している。

現状では、多くの企業がインテルのCPU(中央演算処理装置)と米エヌビディアのGPU(画像処理半導体)を組み合わせてAI計算をこなしている。ただ、音声アシスタントなどAIを使うサービスが広がるなか、大量のデータをより効率的に計算できる専用半導体への期待が高まっている。

データセンター向けの半導体はインテルの稼ぎ頭で、AI分野で専用品への移行が進むと脅威になる可能性もある。そのためインテルは近年、AI計算に向きそうな半導体を手掛ける企業を相次いで傘下に収めてきた。15年には約2兆円で米アルテラを買収。16年には深層学習の専用チップを開発中だった米ナーバナ・システムズも買収し、今年11月に新製品を披露した。

【no.481】【DeNAのAI活用事例まとめ】ゲーム、最適化、需要予測など全社横断した取り組み

【DeNAのAI活用事例まとめ】ゲーム、最適化、需要予測など全社横断した取り組み

株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は非常に幅広い事業を手掛けている企業のひとつ。ゲーム、スポーツ、ライブ配信、ヘルスケアまで多岐にわたる。

多様なDeNA事業を支えているのは「AI」だ。同社のAI事業は全社横断の形をとり、各事業を推進するために役立てている。

DeNAのAI事業を語るうえで、特筆すべきは「Kaggle(カグル)」での実績を評価する制度だ。Kaggleとは、世界中のデータサイエンスや機械学習に携わる人向けのプラットフォーム。このKaggle上で開催されるコンペ形式などでの実績に応じて、業務時間中でもKaggleへの参加を認めるなど、さまざまな指標・評価制度のひとつになっている。

本稿ではDeNAのAI事業を取り扱ったLedge.aiの記事をまとめていく。さまざまな分野でAIを利活用しているため、DeNAは多くの企業の参考例になるかもしれない。

スマホアプリ「逆転オセロニア」を支えるAI

まず、DeNAといったらゲーム事業だ。同社の代表作「逆転オセロニア」には、プレイヤーのゲーム体験向上のためふたつの課題に対してAIの技術を活用しているという。

ひとつは、プレイヤーのサポート。プレイヤーが「楽しい!」と思える領域に早く到達してもらうためのモノだ。各プレイヤーがゲームを習熟するためには、練習や慣れが必要。この練習や慣れを手助けする機能をもつようなAIがまずは必要だとしている。

次に、ゲームバランスの調整。例を挙げるならば、新キャラクターをプランナーの意図したバランスで出すことなどに関わる領域。意図しないゲームバランスになってしまうと、ゲーム体験を著しく低下させる恐れがあるため、遊び続けてもらうためにも調整は非常に大事なのだ。

これらの課題を解決するために、プレイヤーが使用するデッキのデータや対戦データを学習させ、デッキのトレンドや、流行している戦略を分析。ゲームが崩壊しないようにバランスを保つ取り組みをしているそうだ。

取材当時、DeNAのチーム内で検証していたAI技術についていくつか例が挙がった。逆転オセロニアでいえば、キャラクターAを使った場合、キャラクターBを使う確率は何%かを分析するなどだ。

細かい検証内容などは、下記の記事で確認いただきたい。実はこのゲームAIがほかの事業でのAI活用にもつながっている。

石炭火力発電所の燃料運用最適化にゲームAIを活用

2019年2月に、DeNAと関西電力は、石炭火力発電所の燃料運用最適化を行うAIソリューションを共同開発し、外販ビジネスに向けて協業を進めることについて基本合意したと発表があった。DeNAはゲームAIに使用される技術でアルゴリズムを開発したのだ。

逆転オセロニアでのゲームAIの例は先に挙げたが、ゲームAIで使われる技術が「燃料運用のスケジューリング作業」という部分で活用された。

従来、石炭火力発電所では、輸送船から受け入れた石炭をサイロという石炭をボイラに送るまでの間、貯蔵する設備で一旦貯蔵する。その後、ポンプやベルトコンベアで石炭をボイラへ送り、高温で燃焼することで水を加熱。高温高圧の蒸気を発生させていく。この蒸気でタービンを高速回転することで、電気が作られるのだ。

しかし、石炭の種類によって混載や混焼ができない等の制約がある。そのため、熟練の技術者が長年の経験やノウハウに基づき、制約を考慮しながら複数のサイロやボイラを運用するスケジュールを作成。状況変化に応じて見直しながら運用していた。

このスケジューリング作業をDeNAが自動化した。ゲームAIに用いられる、「膨大な組み合わせの中から最適なものを探索する」技術を導入し、アルゴリズムを構築したのだ。

その結果、熟練技術者が半日程度を要する燃料運用スケジューリング作業を、わずか数分程度で自動出力し、期間にして4ヶ月先までのスケジュールを自動で作成することが可能になった。

スケジューリングが必要なさまざまな業界で、このアルゴリズムは転用できそうだ。

【no.480】機械が「におい」を覚える日がやってくる? グーグルのAI研究チームが取り組むプロジェクトの価値

機械が「におい」を覚える日がやってくる? グーグルのAI研究チームが取り組むプロジェクトの価値

グーグルの人工知能(AI)研究チームである「Google Brain」が、分子の構造を基ににおいを推測させようと、機械学習アルゴリズムにトレーニングを続けている。研究が進めば、色のような指標が存在しない嗅覚の分野において、カラーホイールの香りバージョンがついに完成するかもしれない。

TEXT BY SARA HARRISON

TRANSLATION BY MITSUKO SAEKI

WIRED(US)

ESTHER KOK/EYEEM/GETTY IMAGES
ESTHER KOK/EYEEM/GETTY IMAGES

グーグルには自社ブランドの香水がある。社内のある研究チームのオリジナル香水と呼んだほうがいいかもしれない。熟練のフランス人調香師たちの指導を受けて、バニラ、ジャスミン、メロン、ストロベリーを組み合わせてつくった香りだ。

「出来は悪くありませんでしたよ」と、グーグルのアレックス・ウィルチコは言う。彼はこの香水の小瓶を自宅のキッチンに置いているという。

いまのところ、この香りの販売は予定されていない。だがグーグルは、またひとつわたしたちの暮らしにかかわる新たな分野に鼻を突っ込もうとしている。においの研究だ。

グーグルの人工知能(AI)研究チームである「Google Brain」は10月24日、査読前論文の掲載サイト「arXiv」でひとつの論文を発表した。分子の構造を基にそのにおいを推測させようと、機械学習アルゴリズムに施したトレーニングの過程を記した論文だ。

世界のほとんどの場所を見せてくれる「Google マップ」と比べれば、さほど役には立たないかもしれない。だが、嗅覚の分野で長いこと解決されずにいる数々の難題に、この技術が答えを出してくれるかもしれないのだ。

【no.479】AIの能力をテストするために作られた16種のゲーム

AIの能力をテストするために作られた16種のゲーム

AIが得意とするところを把握するのは、AIを理解する上で最も難しいことの1つ。それを判断できるようにするため、OpenAIは1セットのゲームを開発した。機械学習エージェントが、本当に基本的なスキルを学べているのか、あるいは、ありがちなことだが、単に自分の都合のいいようにシステムを操作する方法を把握しただけなのか、研究者が判断するのに役立つもの。

AI研究ではよくあることで、ぬか喜びしがちなのだが、研究者が求めていることなら、何でもうまくできると見せかけようとして、エージェントがルールを曲解したり、無視したりすることがある。ズルをすることは、既成概念を打ち破るものであるかもしれないが、常に受け入れられるとは限らない。本当の能力を確認するには、ちょっとだけルールを変えて、そのシステムが機能しなくなるかどうか見てみればいい。

実際にエージェントが学んだことは、新たな状況に置かれたときにも、その「スキル」が適用できるかどうかを調べることによって評価できる。状況が変われば、獲得した知識の一部しか適合しなくなるからだ。

たとえば、AIがマリオのようなゲームの遊び方を学んだかどうか判断したいとしよう。右方向に移動しながら障害物を飛び越えるタイプのゲームだ。その場合、左に移動しなければならないようにしたり、障害物の順番を変えたりと、いろいろ状況を変更してみればいい。あるいは、ゲームの中身も変更して、右に進むとモンスターが登場して、AIが攻撃しなければならないようにしてもいいだろう。

もしエージェントが、このようなゲームの遊び方を本当に学んだとすれば、まったく新しいものよりもずっと速く、変更後のゲームの遊び方を習得できるはず。これは「汎化」と呼ばれ、既存の知識を新たな異なる状況に適用するもの。人間なら常にやっていることだ。

OpenAIの研究者は、研究の過程で、こうした状況に何度も遭遇した。そこで、汎化可能なAIの知識を基本レベルでテストできるよう、一種のAIアーケードを設計した。エージェントは、少しずつオーバーラップしつつも、それぞれ異なるゲームのコンセプトを学習したことを証明しなければならない。

彼らが設計した16種類のゲームは、パックマン、スーパーマリオブラザーズ、アステロイドなど、私たちにも馴染みのあるゲームに似ている。違うのは、AIがプレイすることを意識して、最初から作り直されていること。そのため、操作、得点、グラフィックはシンプルなものとなっている。