【no.172】診断から治療まで、最先端「医療AI」の潜在力 膨大なデータを活かし最適な治療をサポート

診断から治療まで、最先端「医療AI」の潜在力

AI(人工知能)を医療に活用しようという動きが加速している。

今年6月に政府がまとめた成長戦略には、AIを活用した病気の早期発見・治療や高齢者への生活支援を目指すプロジェクトが盛り込まれた。8月1日には産業技術総合研究所(産総研)が開発した省電力クラウド基盤が稼働。いわばAIの橋渡しをするクラウド基盤で、AIを活用したい企業や研究者などが活用できるようになる。国の側面支援もあり、AI活用の基盤がそろいつつあるわけだ。

医療分野でもっとも注目を集めているのはAIを使ったがん医療だろう。AIによるゲノム解析も、まずがんがターゲットだ。

産総研AIデータセンターの主役、スーパーコンピュータ「ABCI」の中身(記者撮影)
理化学研究所(理研)の革新知能統合研究センターの山本陽一朗・病理情報学ユニットリーダーも、AIを使ったがん医療研究に携わる。日本医療開発機構(AMED)の助成を受けて、2016年から日本発の医療AIの開発を進める。がん組織・細胞の切片の写真(病理画像)、臨床情報や遺伝子などのデータを複数のAIに学習させ、それらを組み合わせて解析する 。目指すのはがんの悪性度を測り、患者ひとりひとりに最適な治療の選択を行うシステムだ。

画像解析はAIとの親和性が高い。乳がんのリンパ節転移の検出については、病理医と同等のレベルで達成した研究もある。こうした病理画像解析でのAI活用は一般にも理解しやすい。

今の医療は乳がん、大腸がんといった臓器別にそれぞれ高い専門性がある。山本氏が目指すのはこの医療の伝統をベースとした医療AIだ。 AIで解析するデータは量も必要だがその質も重要。データに含まれていない情報については正しい学習ができない。

がん細胞の病理診断では3マイクロメートルの薄さに切った細胞を染色して見るが、日本の技術は世界的にも高い評価を得ている。また、ゲノムデータだけでなく、タンパク質や代謝物質、がん細胞の周囲にいる細胞などについての高い解析技術とデータを持っている。 「こういった強みを生かせば、医療AIで日本の存在を十分にアピールできる」と山本氏は言う。

画像認識の精度があがり、データベース量が増えた時、飛躍的な進歩を遂げそうですね。

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