【no.262】今年もAIだらけ「家電見本市」の目玉は何だ

今年もAIだらけ「家電見本市」の目玉は何だ

完全に1人になることがない未来を想像してみよう。妻や夫が出張に出かけても、子どもたちがキャンプに行ってしまっても、つねに誰か(あるいは何か)話し相手がいるのだ。朝には、電子レンジに向かって、オートミールを温めてと頼む。車の中ではカーステレオに向かって、1990年代の曲をかけてと言う。そしてオフィスに入ったら、「今日の予定は何?」とスマートフォンに尋ねる――。

テクノロジー業界は、音声に反応するさまざまな機器を開発し、こんな未来を築こうとしている。2019年には、これらの機器の売り込みはさらに激しくなるだろう。

CESで目立つトレンドは?

最新の技術トレンドが見られる家電・技術見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」が、1月8日にアメリカ・ラスベガスで開幕したが、ここでもそうした未来の姿が見えてくる。CESでは、人口知能(AI)を使ったバーチャル・アシスタントが重要な技術トレンドとして注目を集め、大手からベンチャーまでさまざまな企業が、ロボット掃除機や目覚まし時計、冷蔵庫、カーアクセサリーなど、音声認識技術を使った製品を展示している。

業界関係者によると、こうした製品のほとんどが、2大AIアシスタントであるアマゾンの「アレクサ」か、グーグルの「グーグルアシスタント」を活用しているという。

CESを主催する全米民生技術協会(CTA)のCEOであるゲイリー・シャピロは開幕前に「今年のショーはAIだらけになるだろう」と話した。

しかし、去年も同じだったと感じる人がいるかもしれない。実は、2018年もAIが最新トレンドだった。つまり、いまテクノロジー業界はまったく新しい技術で飛躍しているというより、ループを描いているような状態だ。

ほかのトレンドには、5Gとして知られる次世代高速通信規格があり、これによってモバイルのインターネットの速度が格段に上がることが予想されている。また、消費者がインターネットにつながる製品をいくつも所有するようになっていることから、家庭用のサイバーセキュリティー製品も多数出展されている。

一方で、例年と同じように、しばらくは様子を見守りたい技術もある。大々的に喧伝されていながら、たとえば自動運転車など、実用化には程遠く、すぐには販売店に並びそうにない製品がある。

以下で、今年注目すべき技術を紹介しよう。合わせて、まだ様子見となりそうな技術も紹介する。

2015年、アマゾンはバーチャル・アシスタントのアレクサを搭載したAIスピーカー「エコー」を発売した。翌年、グーグルはグーグルアシスタントを搭載した「ホーム」で対抗した。

それ以来、両社は競ってサーモスタットやドアベル、電球、カーアクセサリーなど、さまざまな製品のメーカーと組み、自社のバーチャル・アシスタントをこれらの製品と連携させてきた。

グーグルは出展規模を昨年の3倍に

グーグルは今年、グーグルアシスタントでさらに攻勢に出ようとしている。同社はCESでの出展規模を昨年の3倍にし、グーグルアシスタントを活用した機器を多数展示した。

一方のアマゾンも、同社が「どこでもアレクサ(Alexa Everywhere)」と呼ぶビジョンの一環として、アレクサと連携している製品を多数出展している。アマゾンの目標は、このバーチャル・アシスタントを人々の生活のあらゆる部分、たとえばキッチン、リビング、オフィス、自動車などに広げていくことだ。

ただ、注意しておきたいのは、バーチャル・アシスタントはまだ初期段階の技術であり、不十分な点も多いということだ。たとえば、バーチャル・アシスタントを使って照明をつけるなど、機器を作動させるには、トリガーとなる特定のフレーズを言う必要がある。こうしたフレーズを言うのに慣れていない人は、アプリのボタンを押して作動させるほうが簡単だと思うかもしれない。