AIが歯周病リスクを予測、口腔疾患の早期発見に ドコモと東北大
NTTドコモと東北大学は2月21日、スマートフォンで撮影した歯茎の画像から歯周病を発見するAI(人工知能)の共同研究を開始すると発表した。2022年度までに商用化を目指す。
スマホアプリを使って歯茎の写真を解析。歯茎の色や形状などの特徴から、AIが歯周病と考えられる部位を見つけ、歯周病リスクをユーザーに通知するという。
利用者がスマホを使って気軽に歯周病のリスクを把握できる一方で、歯科医師は患者とのコミュニケーションの接点になったり、往診で持ち運ぶべき器具が減ったりするといったメリットがあるとしている。
本プロジェクトは、東北大学大学院の佐々木啓一教授(歯学研究科長)に、ドコモがAIによる画像・動画診断技術の活用を持ちかけたことで実現した。
東北大学が持つ歯周病の知見や画像などの症例データを基に、歯周病のリスクを予測する機械学習モデルを作成。現時点での認識精度は「理想的な条件で8割程度」としているが、一般ユーザーに自身のスマホで撮影してもらうシーンを考慮すると、環境光や顔の角度の違い、手ブレの影響など認識上の課題も多い。
これら課題については、今後機械学習の改善やサンプル数の増加、ディープラーニング(深層学習)などで一般的な環境での認識精度を上げたいとしている。
アプリをどのような形で提供するかは「全く未定」(NTTドコモ先進技術研究所の滝田亘所長)という。
「今のところ考えられるのは、法人向けの診断に取り入れてもらうことや、歯科医師への提供など。逆にユーザーから毎月お金をいただくようなことはあまり考えていない」(滝田所長)
AIが発見する口腔疾患としては歯周病の他、顎関節症や口腔がんも見つけられるよう研究を進めていく。
健康アプリか、医療機器か
佐々木教授は「厚生労働省と相談しながら研究を進めている」と話す。歯周病発見AIのアプリが、単なる「健康アプリ」なのか、それとも「医療機器(ソフトウェア)」に当たるものなのか、判断が難しいからだ。
「ユーザーに使ってもらって、自分の中で受診するかどうかを判断する1つのツールということであれば、これは健康アプリであって医療機器ではない」(佐々木教授)
滝田所長は「従来の枠組みであれば、スマホ自体が医療機器という定義はありえない。ここに疾病のリスクを推定する機能を入れるとどうなるか。自分で使う分には医療機器にはならない。しかしこれを医療機関とつないでやりとりをした瞬間に医療機器となるであろうという議論がある」とし、AIを用いた画像診断は従来の医療機器の枠組みに収まらず、法的に十分な整備がないと説明する。
「新しいタイプの医療の形は実際に実例を積み上げ、関係官庁とよくコミュニケーションを取り、医療機器の境界を定めていかないといけない」(滝田所長)
佐々木教授も「今までのカテゴリーにないものだと思う。(法的にグレーだとしても)初めから厚労省と相談しながら進めているという点で、本気度を見てもらえたら」と意気込みを語った。