【no.405】AI活用を成功に導く方法をサービス商品化した米AIベンチャーの狙い

AI活用を成功に導く方法をサービス商品化した米AIベンチャーの狙い

機械学習の自動化プラットフォームを展開する米DataRobotの日本法人が8月、人工知能(AI)の活用を成功に導く方法を体系化し、サービスとして提供を開始した。サービス作りに力を入れる主な理由は、ユーザー数の拡大と新たな収益源の確保にある。実現に向けた課題もある。提供するサービスの内容と料金をどこまで明確にするかだ。DataRobotの対応策を見てみよう。

5割の企業がAI導入に失敗する実態

DataRobot日本法人でカントリー・マネージャーを務める原沢滋氏は7月23日の記者会見で、「これまでの実績をベースに、サービスを体系立てて提供する」とした上で、AIの導入から実ビジネスへの運用・定着化までを支援するAI特化型のサービス商品「AIサクセスプログラム」を説明した。これまでのプロダクト販売からサービス提供へと踏み出すのは、AI活用の広がりにある。設立から約3年になった日本法人のユーザー数は150社を超え、ユーザー層をさらに拡大させていく時期にもある。

そこに欠かせないのが、成功に導くユーザーへの支援になる。日本法人でチーフ・データサイエンティストを務めるシバタ・アキラ氏は「AIで解決できる問題が増える一方で、うまくいかないケースが増えている」と明かす。ある調査によると、そんな失敗例が約5割にもなるという。目的も目標も不明確なままに経営層からAI活用を指示されたIT部門らが導入に取り組んでしまうからだろう。「経営から言われたので、とりあえずPoC(実証実験)をやってみた」というIT部門らは、ビジネス変革への適用に踏み込まない。経営もPoCに満足する。「機械学習を使ってビジネスを変えることに、ユーザーは慣れていない」(シバタ氏)こともある。

そこで、AI活用の国内外の成功事例から成功パターンを導き出し、その方法をサービス商品として体系立てた。それがAIサクセスプログラムだ。

シバタ氏は電力会社向けを例にAIサクセスプログラムを説明する。第1段階はテーマの創出になる。関係する社員らを集めてワークシップを開催し、例えば電力需給に関する課題を見つけ出し、AI適用による効果を議論する。目指すことを決めたら、プログラムの中から投資額に見合うサービスを選択する。

次の段階は、電力の需要予測モデルを作る「モデルの構築・検証」に入る。過去の関連するデータを機械学習に取り込み、実際の発電量と使用量を比べて、明日の需要予測精度を検証する。そして、より精度を高めた第3段階で、そのモデルを実際のビジネスへ適用する。例えば、数時間後の需要を予測し、発電量を変える。そのために発電システムへ予測機能を組み込むとともに、実際の現場に適用できるよう、データ分析や運用などを支援する。ユーザーにデータサイエンティストがいなければ、その役割をサービスとして提供する。ユーザーが求めるなら、データサイエンティストの育成トレーニングを実施する。