交通渋滞の影響を直接受けるバスを使った移動は、電車や地下鉄などよりも予定が読みにくい。おそらく、世界の人々が共通した悩みを抱えているはずである。そんななか、人工知能(AI)を使ってユーザーのバス移動を効率化しようという動きが始まっている。
カナダ・バンクーバー都市圏の交通行政を管轄する団体「TransLink」は、利用客がより正確に目的までの時間を推測できるよう独自のAIツールを公開した。すでに13のバス路線に試験的に採用されており、出発時間の予測という側面で大きな成果を収めているという。
開発されたAIは、バスの位置データや、出発時間に影響をおよぼすであろう天気や時間などのデータを組み合わせたものとなる。同社のKevin Desmond CEOによれば、「予想された時間と実際のバスの出発時間が74%も改善(誤差が縮まった)された」という。
「居眠り運転」防止も
一方、インドではバスの課題のひとつである「居眠り運転」をAIで予防しようという動きがある。ウッタル・プラデーシュ州とカルナータカ州では、眠気に苛まれたドライバーに警告を発するフロントバンパーを搭載したバスが稼働を予定している。
ウッタル・プラデーシュ州では1万2500台に、カルナータカ州では長距離移動、また夜間運行する500台に設置される。
両州の道路交通公社であるUttar Pradesh State Road Transport Corporation(UPSRTC)とKarnataka State Road Transport Corporation(KSRTC)はいずれも、ムンバイに拠点を構えるスタートアップ「Sixth Sensor Technology」が提供するシステムを採用している。
まずバスのフロントバンパーに取り付けられたセンサーは、最大約54m以内の物体を継続的に監視し、衝突の危険性がある場合にビープ音でバスドライバーに警告する。また別のセンサーは、ドライバーが居眠りしていると判断すると注意を促す。なお、ドライバーは定期的にセンサーに手を振る必要があるのだが、カスタマイズも可能とのこと。
何かしらのアクションを実行しない場合、システムが居眠りや不注意だと判断しアクセルをストップさせる。仮にそうなってしまった場合、改めてセンサーに向かってアクションを行うとアクセル機能が回復する。UPSRTCでは6台のバスに6か月間にわたり同システムを試験導入しているが、その間に大きな事故が発生しなかったと報告している。
現在、完全自動走行のバスの登場などに注目が集まっているが、安全・快適なバスの旅を実現するAIが一足先に活躍していきそうだ。