【no.452】自宅で本格的な料理を「もぐもぐ」 米国でAIを活用した「食」が進む (1/4)

自宅で本格的な料理を「もぐもぐ」 米国でAIを活用した「食」が進む (1/4)

近年、ビジネスにおいて影響力を増しているAI(人工知能)。技術の向上により、AIはさまざまな産業で活用され、より身近な存在になりつつある。

その一方で、多くの職がAIに奪われることや、プライバシーの問題を警戒する動きもある。確かに、5年後、10年後に存在しなくなる仕事は増えていくだろう。また、データ分析のために収集される情報の範囲や、取り扱いをどうするのかも課題となるのは当然だ。

しかし、仕事の効率化という意味では、AIの貢献度が非常に高いのも否定できない。すでに、AIを使用したオートメーション(自動化)は、製造業や農業などで必要不可欠なものになっている。

そして次に注目されている業界が、外食産業や食関連ビジネスでの活用だ。そこで、近年注目が集まっているAIの導入に関して、食に携わる大手企業がどのように活用しているか取り上げてみたい。

食に携わる大手企業、次々にAIを導入(写真提供:ゲッティイメージズ)

食関連ビジネスで、特に期待されているのが、AIを活用した新商品の開発だ。実際にAIを導入している大手企業には、米国のMcCormick & Co.(マコーミック・アンド・カンパニー)やPepsiCo Inc.(ペプシコ)などがある。

料理用スパイスや調味料などを取り扱う業界最大手のマコーミックは、250ものブランドを展開し、2018年度の売り上げが54億ドルにもなる巨大企業だ。スパイスや調味料の世界市場で20%のシェアを持つ同社の動向は、業界のトレンドを左右するほど影響力を持つ。

そのマコーミックは、19年よりIBMとタッグを組み、AIを活用した新商品開発に力を入れている。膨大な数のスパイス情報や過去に手がけた調合に加え、消費者の嗜好(しこう)など40年以上かけて蓄積されたデータをAIで分析するという。

従来、新しいフレーバーの開発は、企業の研究開発部門が担ってきた。味覚という繊細で個人的な嗜好を取り扱うため、商品化されるまでに数年かかることも少なくなかった。

ところが、現代では消費者の好みの変化が早く、その対応にスピードが求められるようになってきた。しかも、消費者は知識豊富で健康志向が高く、多種多様なスパイスにも馴染みがある。彼らの興味をそそるような新商品を開発するには、ハードルが高くなっている。