【no.302】思い立ったらすぐに活動開始、AIチャットボット「Pairsナビゲーター」が強力支援

思い立ったらすぐに活動開始、AIチャットボット「Pairsナビゲーター」が強力支援

恋愛・婚活マッチングサービスに興味はあっても、登録するのが面倒、どんな写真を投稿していいかわからないといったユーザーは多いはず。「Pairs」を運営するエウレカは3月13日、カラクリが提供するカスタマーサポート特化型AIチャットボット「KARAKURI」を「Pairsナビゲーター」として一部導入した。

エウレカによると、Pairsでは2018年2月にカスタマーケアを完全インハウス化。社内常駐のオペレーターが24時間365日、テキストや画像の投稿監視に加え、1日あたり約500件の機能や決済方法に関する問い合わせに対応しているとのこと。AIチャットボット「Pairsナビゲーター」の導入によって、1人あたりの課題解決時間を平均約30秒にすることを狙う。

Pairsナビゲーターのベースになっている「KARAKURI」は、東京大学大学院人工知能研究チームが開発した独自の深層学習アルゴリズムを活用することで、少ない教師データでAIの精度を向上させることを可能としたサービス。導入から運用までのプログラミングスキルが不要で、AIトレーニングを効率的に行えるのが特徴だ。

Pairsの累計会員数は2019年1月時点で1000万人超、年間約1.5倍ペースで成長を続けているという。同社としては、新規登録会員数の増加に伴う、機能などに関する問い合わせニーズに応えたいとしている。今後は、プロフィール作成やデート支援などの機能も追加していくそうだ。

【no.301】AIで急性腎障害の発症を予測する──DeepMindが米退役軍人省と提携した真意

AIで急性腎障害の発症を予測する──DeepMindが米退役軍人省と提携した真意

人体は脆いものであり、人々はさまざまな理由で集中治療室(ICU)に担ぎ込まれる。理由はどうあれ、ICUに収容される成人の過半数は、どこかの段階で生死に関わるある症状にいたる。急性腎障害と呼ばれる腎臓の損傷だ。

米退役軍人省は、急性腎障害による犠牲者を人工知能AI)で減らすことができると考えている。約70万人に上る退役軍人たちの医療記録を利用したプロジェクトで、同省はアルファベット傘下のDeepMindディープマインド)と提携し、どの患者が急性腎障害を発症する可能性が高いか予測するソフトウェアの開発を行なっている。こうした予測によって、医師が患者の急性腎障害の発症を回避できるようにすることが目標だ。

急性腎障害を発症すると、患者の腎臓は突然、体から老廃物を適切に取り除くことができなくなる。この症状はしばしば、手術の合併症や感染、その他の入院中のストレスの結果として起きる。

アルファベットがヘルスケア分野への進出を強化

このプロジェクトは、テック企業のヴァーチャルアシスタントや顔認証を支えるAI技術を、人命を救うために利用しようという世界的な動きの一例だ。医療記録のデジタル化によって膨大な患者のデータが入手可能になり、医師には検出できないほど微妙なパターンを、アルゴリズムによって解釈できるようになった。

米国をはじめとする先進国では、AIはケアの質を向上し、コストを削減する手段とみなされている。一方、インド[日本語版記事]や中国など、医療従事者の慢性的な人手不足に悩まされる国々では、AIは医療へのアクセスの向上に役立つだろう。

DeepMindと退役軍人省の提携は、アルファベットのヘルスケア分野への進出強化の一環だ。グーグルの親会社であるアルファベットの売上の90パーセント近くを広告が占めているが、同社はAIの用途を、広告以外にも多様化することを目指している。

アルファベットのそのほかのプロジェクトには、学習させたアルゴリズムに眼病[日本語版記事]やがん[日本語版記事]を検出させるものもある。グーグルは2018年11月、同社の医療プログラムの責任者として、ヘルスケアサーヴィス企業の経営幹部だったデヴィッド・ファインバーグを抜擢している。

すべては1本の電話から始まった

今回の退役軍人省との提携は、医療分野に挑むアルファベットに立ちはだかる壁についても示唆している。同社は世界最高峰のAI研究者たちの精鋭集団を擁している。しかし、こと医療分野に関しては、グーグルが検索とオンライン広告を制した原動力である「膨大なデータ」をもっていない。医療データを共有してくれる機関との協力なくして、機械学習アルゴリズムの学習に必要な材料データは得られないのだ。

退役軍人省が保有する数百万件の電子化された医療記録は、こうしたデータとしては米国で最大級だ。DeepMindの広報担当者は、腎臓病と医療アナリティクスにおける退役軍人省のリーダーシップを賞賛し、そのデータは「患者の医療記録として最も包括的な電子データセットのひとつ」だと指摘する。

退役軍人省とDeepMindの関係が始まったのは数年前だ。同省の予測分析担当責任者クリストファー・ニールセンのもとに、唐突に1本の電話がかかってきた。「『あなたの問題をAIですべて解決します』といった類の電話は珍しくありません」と語るニールセンは、出し抜けなAIの売り込みには用心深くなっていたという。

しかしその電話は、2014年にグーグルに買収される前のDeepMindの共同創業者、ムスタファ・スレイマンからだった。DeepMindは機械学習でアタリのゲームを攻略[日本語版記事]し、囲碁の最強棋士を破る[日本語版記事]など、数々の画期的な偉業をなしとげてきた。退役軍人省は18年、DeepMindと正式な研究協力関係を締結した。

大量の医療記録へのアクセス

ほどなくニールセンたちは、AIを利用した医療プロジェクトにつきものの難題に直面した。AIブームを牽引する機械学習アルゴリズムは、学習材料として大量のサンプルデータを必要とする。通常、データが多いほど結果の精度は上がる。だが、医療記録は最重要の個人情報であるため、取り扱いには特別な注意が必要だ。

退役軍人省の研究者とエンジニアは、暗号学的ハッシュ関数を利用して、実験結果や医療記録データを匿名化したとニールセンは言う。こうしてDeepMindは、10年分に上る問題のない大量の医療記録へのアクセスを手に入れた。

同社のAI研究者たちは、アルファベットのコンピューティングインフラを利用してニューラルネットワークに学習させ、患者が急性腎障害を発症する可能性を予測させた。詳しい結果は今後刊行予定の学術論文で述べられる予定だが、見通しは良好だとニールセンは言う。

「十分に早い段階で、急性腎障害の発症を極めて正確に予測できました」としつつ、彼は兆候として上がった具体的な要因についてはコメントを避けている。なお、プロジェクト期間中も、退役軍人省が提供するデータは同省に帰属し、使用後は破棄される。

次のステップは予測精度の向上と検証

プロジェクトの次の段階は、おそらく退役軍人省のシステムが管理する数百万人に上る患者の現行のデータを読み込ませ、DeepMindの急性腎障害発症予測の精度を継続的に検証することだろう。それがうまくいけば、退役軍人省の医師たちと共同で、システムが医療の向上に役立つかどうかの検証をしたいと、ニールセンは考えている。これが実現するのは、少なくとも1年は先になるだろう。

DeepMindと退役軍人省の提携は、共同研究開発合意の締結に基づいている。両組織は金銭のやり取りなしに協働し、プロジェクト中に発展したアイデアをどちらも利用できる。

退役軍人保健局で特別ケアサービス部門の責任者を務めるローレンス・メイヤーによると、退役軍人省は、このプログラムで開発されたツールを外部に提供する可能性がある。「わたしたち自身の目的にはもちろん、省の外部で役立つ可能性のあるシステムの開発にも関心をもっています」と、メイヤーは言う。

スタンフォード大学の臨床准教授で、腎臓病学を専門とするスコット・サザーランドは、急性腎障害の発症予測技術の臨床利用は、革命的な出来事になるかもしれないと語る。急性腎障害は重症患者に非常に多い症状であり、検査で発見できたとしても、医師にできるのは損傷の拡大を食い止めることだけで、損傷部分を直接治療することはできない。

新しいアプリが秘めた可能性

急性腎障害の予測を試みた従来の手法は、これまでのところ成果が上がっていない。「現段階では、ビッグデータや機械学習が本当の意味で成功を収めた例は聞いたことがありません」と、サザーランドは言う。同分野の既存の研究のほとんどは、確立された統計的手法を用いており、DeepMindの専門であるニューラルネットワークに基づくものではなかった。

AIソフトウェアに正確な予測をさせることは、病院における医療改革に必要なことのごく一部でしかないだろう。これは、どのAIヘルスケアプロジェクトにも言えることだ。

医師たちにはこれまで、急性腎障害を予測する術はなかった。このため、急性腎障害の発症を阻止するベストな方法を見つけ出すには、さらなる臨床研究が必要となる。「やるべきことはこれだと、はっきり言えるだけの十分なデータがないのです」と、サザーランドは言う。

DeepMindは2年を費やして、英国の病院スタッフとともに「Streams」と名付けられたアプリのテストを実施してきた。Streamsは、病院スタッフがAI技術の助けなしに患者の検査結果をモニターし、急性腎障害の兆候を発見する手助けをすることを目的としている。

このアプリは、クリニックにおいてこうした問いを調べる方法になり得るものだ。いずれはこれが、退役軍人省との共同研究の結果を製品化することにつながるかもしれない。

AIを人間と同じくらい有能に

ただし、このテストに参加していた病院のひとつは、英国のデータ管理当局から非難された。DeepMindに対して、患者データへの全権アクセスを与えたとされることが理由だ。

DeepMindは当局からの批判を逃れるため、Streamsプロジェクトをグーグルに移管すると18年11月に発表した。これにより、グーグル医療部門の新たなトップであるファインバーグのもとでの製品化が可能になった。

DeepMindの広報担当者は、AIを利用したアラート機能をStreamsに搭載することを目指していると認めながらも、それには発展的研究と、規制当局の認可が必要だと説明している。

DeepMindがStreamsを手放したやり方は、同社があくまでアルファベットの研究部門であり、グーグルのような持続可能なビジネスモデルを構築することよりも、「AIを人間と同じくらい有能にする」という創業者の理念を追求していることを示唆している。

英国で公開された財務諸表によると、DeepMindは17年に3億200万ポンド(約440億円)の損失を計上しており、損失額は前年の3倍にのぼる。

Streamsは、DeepMindと退役軍人省の共同研究の産物ではない。ニールセンによれば、退役軍人省のプロジェクトはグーグルに移管されることはないものの、発展の可能性はある。

退役軍人省は豊富なデータを保有し、DeepMindへの提供前に行うデータ匿名化のプロトコルも確立している。このため、病院の患者に生じるほかの健康問題の早期予測にも使えるはずだと、ニールセンは言う。敗血症、心臓発作、転倒などが候補になりそうだ

【no.299】さくらの開花予報はAIに任せて

さくらの開花予報はAIに任せて

写真はイメージ

写真はイメージ

 島津製作所は人工知能(AI)を用いた桜の開花・満開予想サービス「AIさくら予想」の精度を高めた。

2018年に用いた従来モデルは的中率が気象予報士よりも低い31%だったが、新モデルはAIに学習させる項目を変更。18年のデータで検証し、的中率を60%まで向上したという。同社子会社の気象情報ウェブサイトで無料提供を始めたほか、4月5日に精度検証する。

桜の開花や気象などのビッグデータ(大量データ)をAIに学習させ、咲き始めから、終わりまで6段階の状態を予測する。従来モデルは、気象予報士が使う開花予想の計算式をAIで修正する手法だった。

新モデルは桜の休眠、休眠解除、花芽発育の状態や、気温など気象変化パターンを学習させる新手法にした。

【no298】グーグル、スマホ上で学習するAI訓練システムを備えた「TensorFlow Federated」公開

グーグル、スマホ上で学習するAI訓練システムを備えた「TensorFlow Federated」公開

Googleが開発した新しいコンピューティングツールを利用すれば、開発者はユーザーのプライバシーを尊重する人工知能(AI)搭載アプリを構築できる。

TensorFlow

Googleは米国時間3月6日、「Federated Learning」と呼ばれるAI訓練システムを組み込んだオープンソースソフトウェア「TensorFlow Federated」をリリースした。TensorFlow Federatedはスマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスに分散しているデータを使用して、新しい能力を習得する。しかし、そのデータを学習のためにデータを中央サーバに送り返すのではなく、スマートフォンやタブレット上で学習し、学習したことだけをアプリメーカーに送り返す。

Federated Learningは「デバイス上にデータが存在する場所のすぐ隣で、機械学習アルゴリズムの一部」を実行すると、Google ResearchのプロダクトマネージャーのAlex Ingerman氏はインタビューで述べた。このアルゴリズムは既に知っていること(電子メールへの返信の提案など)をスマートフォン上のデータに適用し、そのプロセスで学習した内容の要約を作成して返信する。

TensorFlow Federatedは、コンピューティング業界を席巻しているAI革命に、プライバシーを尊重する重要な新機能を追加するものだ。AIは機械に十分な学習をさせて、現在では人間を必要とする作業を完了できるようにすることで、私たちの働き方や生き方を変えると期待されている。例えば、多くの人がテキストメッセージアプリの辞書に「side-eye」(目だけを横に動かして不満やいら立ちを伝えること)という単語を追加した場合、アプリは独力でその単語の語法を理解して、標準の辞書に組み込むことができる。

これらのタスクの処理能力を高めるために、機械は大量のデータを見る必要があり、そのことがプライバシーを懸念する人々に不安を抱かせている。Federated Learningはそうした懸念を和らげるのに役立つだろう。

TensorFlow Federatedは「Android」スマートフォンや「iPhone」向けの「Gboard」キーボードなど、Googleのいくつかのアプリに既に組み込まれており、入力候補を提示するために入力パターンを分析している。今回、TensorFlow Federatedが無料で共有されるオープンソースソフトウェアになったので、AIプロジェクトに携わるほかの開発者も、一から始める必要がなくなる。

【no.297】トラックドライバーのヒヤリ・ハット状態をAIが検出 ABEJAと日立物流が技術を開発

トラックドライバーのヒヤリ・ハット状態をAIが検出 ABEJAと日立物流が技術を開発

イメージ (AC)
ディープラーニングを活用したAIの社会実装事業を展開するABEJAは3月5日、日立物流と共同で、トラックドライバーの走行中の車両データからヒヤリ・ハット状態を検出するAIモデルを開発したと発表した。

日立物流は、ドライバーの生体情報や運転中の映像などのデータを様々なIoTセンサーから取得・解析し、事故発生につながる可能性のある状況を特定することで事故を未然に防ぐ「スマート安全運行管理システム」(SSCV)を展開している。今回、両社はSSCVで蓄積したデータから、ヒヤリ・ハット状態を定義、学習することで、走行の危険度評価を自動化するAIモデルを「ABEJA プラットフォーム」上で共同開発した。

また、開発したAIモデルをSSCVにAPI連携し、SSCV上の機能として、2019年4月を目処に、提供する予定。具体的には、ドライバーの走行データについて開発したAIモデルを用いて解析し、ヒヤリ・ハット状態を検知することで、走行時の危険状況をドライバーと管理者にフィードバックする機能として提供する予定。

ABEJAと日立物流は、物流企業に機能を追加したSSCVを提供することで、ドライバーの体調サポートや事故防止を図る。

【no.296】100万文字で4ドル? AIアナが登場、どうする人間

100万文字で4ドル? AIアナが登場、どうする人間

ナナコ、ゆい、エリカにトミー。各地で人工知能(AI)を使ったアナウンサーの開発が進んでいる。人間との違いは?

関西空港が孤立するなど、関西地方で大きな被害がでた昨年9月の台風21号。和歌山県では停電が発生し、ラジオが頼りにされた。対象地域が半径5~15キロ程度のコミュニティーFM、「エフエム和歌山」(和歌山市)は、市内にしぼった気象や避難所の情報を一晩中繰り返し伝えた。

この放送を支えたのは、同局が独自開発したAIアナウンサーだった。一帯では、南海トラフ地震で大きな津波被害が予想されている。同局の山口誠二クロスメディア局長(36)は、災害情報を伝える手段としてAIアナウンサーを考えた。

独学でプログラミングを習得し、ニュースや天気予報の原稿を自動生成し、指定した時刻に読み上げる「オンタイムプレーヤー」のシステムを2017年7月に構築。同年9月には、原稿を繰り返し読む「ダカーポ」システムを開発した。

【no.294】市民のライフイベントに寄り添う–フィンランド政府が取り組むAIアシスタント「Aurora」

市民のライフイベントに寄り添う–フィンランド政府が取り組むAIアシスタント「Aurora」

フィンランド政府は人工知能(AI)を活用する試みの試験運用を進めている。この試みは、世界でもっとも野心的な公的部門によるAIアシスタントになるかもしれない。

この「Aurora」と名付けられたAIアシスタントは、各ユーザーにパーソナライズされたサービスを提供することを目指すデジタルプラットフォームで、人生の特定のタイミングにおける個人のニーズに合わせて、サービスのフィルタリングを行う。

Auroraの核になっているのは強化学習で、長期的なデータに基づいて、特定のユーザーグループがもっとも必要としているサービスの組み合わせ(公的サービスと民間サービスの両方を含む)をソフトウェアに特定させている。そのようなサービスは優先される一方で、必要性が低いと見なされたサービスの組み合わせは脇道に追いやられる。

プロジェクトの設計者によれば、ユーザーグループは主に匿名化された個人情報に基づいて作成されるという。

ITコンサルティング企業Cybercom Finlandのデータサイエンス事業の責任者であり、Auroraネットワークを設計しているAntti Hahto氏は、米ZDNetの取材に対して「グループレベルで利用できる匿名の情報が多いほど、各個人にパーソナライズされた適切なサービスを提供でき、個人と社会を近づけるのに役立つ」と述べている。

「データが個別の形で必要とされる場合、われわれは『MyData』の原則に従い、他の誰でもなくそのユーザー自身がデータの所有者だとして対応する」(Hahto氏)

このプロジェクトの基礎的な要素の1つが「デジタルツイン」だ。デジタルツインという名前にディストピア的な雰囲気を感じる人もいるかもしれないが、これは仮想の自分が評価されるというようなものではない。中国が急速に開発を進めている社会信用システムで行われているような市民の格付けとは異なる。

多くの意味でまったく逆の役割を果たすものとなりそうだ。ユーザーがどのアプリケーションやサービスを利用し、どれだけのデータを共有するかを選択できるようにするデジタルプラットフォームだ。

【no.293】AIで物流の配送ルートを自動立案–日立が日中、タイでサービス化

AIで物流の配送ルートを自動立案–日立が日中、タイでサービス化

日立製作所は2月28日、人工知能(AI)を利用して最適な物流の配送ルートを立案するという「Hitachi Digital Solution for Logistics/配送最適化サービス」を発表した。4月1日から日本と中国、タイで提供する。

新サービスは、納品日時や物流センター/拠点の位置、走行ルート/時間、渋滞、積荷/滞店時間、車格、ドライバー条件などのデータを全て変数化し、熟練ドライバーの経験(トラックの横付けスペースの利用順序の決定、複数ある配送候補日の調整など)から日立独自のアルゴリズムによるデータ分析を行うことで、効率的な配送計画(車両単位の配送先、配送日時の割り付けや配送ルート、積載率、稼働時間・走行距離など)の自動的に立案する。

また、GPSで配送車の走行記録を取得し、データ連携によって自動的に配送実績も作成できる。利用者は配送計画と実績の比較や可視化による把握が可能。日立はこれらのデータの分析から計画立案の精度向上を支援するほか、今後は利用者自身でも分析ができる機能を追加する予定だという。

物流の課題として日立は、日本では電子商取引の拡大やドライバー人材の不足、長時間労働など、中国やタイでは製造業などのミルクラン(巡回集荷)や共同配送のニーズの高まりがあると指摘する。

現状では熟練者の経験に依存して配送計画を立案するケースが多いといい、日立はAIやデータ分析技術の活用を加味することで、より精度の高い計画を効率的に立案できるようになると説明。同社が三井物産と行った実証実験では、トラック台数を最大で約10%削減し、熟練者と同等かそれ以上に実行性のある配送計画の立案が可能という効果が確認されたとしている。

同社は、IoTプラットフォーム「Lumada」を利用した新サービスと既存システムや他社サービスのデータ連携も可能として、利用者の希望に合わせたデータ活用環境も構築できるという。

【no.292】Google DeepMind、前日に1時間ごとの風力予測AIを開発。風力発電エネルギーの価値が約20%向上

Google DeepMind、前日に1時間ごとの風力予測AIを開発。風力発電エネルギーの価値が約20%向上

ASSOCIATED PRESS

Alphabet傘下のGoogleとAI開発子会社DeepMindは、風力発電システムに機械学習アルゴリズムを応用し、米国中部にある700メガワットの風力発電設備で実際の発電の36時間前に発電量を予測するAIシステムを構築したと発表しました。

このシステムの予測によって、風力発電システムは1時間ごとに送電網に流す最適な電力を、前日の段階でスケジューリングできるとのこと。これによってこの風力発電設備の有用性は以前に比べ約20%も向上したと発表されています。

地熱発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーは、炭素を含んだ化石燃料を使わないため温室効果ガスも排出せず、地球環境にも負担を掛けないエネルギー源として注目を集めています。その中でも風力発電は、風力原動機の低価格化にともなって採用が増加しており、電力供給源としての比重を増しつつあります。

しかし、風力発電の有用性を高める上で、ネックとなるのが出力変動の大きさ。風まかせとはよく言ったもので、風力は時間により変動しやすいため「設定した時間に確実に電力を供給できる」火力発電ほどには社会インフラの主軸とはしにくいわけです。

そこでDeepMindとGoogleは、アメリカ中部の700メガワットの風力発電を対象として、機械学習アルゴリズムの運用をスタート。Googleはアメリカや世界各地で再生可能エネルギープロジェクトに投資していますが、テスト地域の発電施設は、中規模の都市で必要な電力を賄えるほどの発電量です。

ニューラルネットワークの訓練には、一般に利用可能な天気予報と過去のタービンデータを使用したとのこと。これを用いて構築したDeepMindシステムの予測結果は、次のグラフで示されているとおりです。実際の発電量は上下する幅が激しく、AIによる予測は追い切れてはいませんが、少なくとも「大きく増減するタイミング」は捉えているようです。
wind
まだまだ研究は初期の段階で、アルゴリズムは洗練され続けている最中で発展途上とのこと。それでも、1時間ごとの予測がない場合よりは、風力エネルギーの有用性が約20%も向上したという結論です。

Googleはこうした機械学習アプローチが風力発電のビジネスを強化し、世界の電力網におけるカーボンフリーなエネルギーの採用を推進することを目標とすると述べています。また風力に限らず太陽光やその他の変化しやすい電源を最大限に活用するアイデアを開発し、機械学習の一般的な利用可能性の探究に参加していきたいとのこと。

【no.291】AIがモデルを審査!? 「副業モデル」マッチングアプリの挑戦

AIがモデルを審査!? 「副業モデル」マッチングアプリの挑戦

企業の採用から男女の出会いに至るまで、人や仕事などを人工知能(AI)を使ってマッチングさせるサービスが広がっている。副業でモデルをしたい人と、広告用などにモデルを探している企業を結び付けるアプリ「週末モデル」を運営するMONOKROM(東京都渋谷区)は2月27日、このモデルのマッチングにAIを活用する取り組みを始めると発表した。

具体的には今後、AIにモデルの審査を「担当」させたりもするという。ただ、モデルの選抜というと、企業の人間が候補者を面接するアナログなオーディションを想像してしまう。容姿やキャラクターなどちょっと数値化しにくい評価基準が多そうなモデルのマッチングを、AIはどう担うのか。

photo副業でできる「週末モデル」。写真は本業で介護福祉士を務める女性(MONOKROM提供)

AIが“主観”なくモデル審査

週末モデルは、主婦や会社員など本業を別に持つ女性が登録することで、副業としてモデルの仕事に応募できるアプリ。2017年末にサービスを開始してモデルは現在約1500人、仕事を募集する企業は約300社登録している。主にWeb上の動画を始めとした広告の案件が多いという。

副業として気軽にモデルに挑戦したい女性と、専業のプロモデルに頼むよりコストを抑えて広告を作りたい企業を引き合わせる仕組み。成約すれば運営側は3割の手数料をもらう。

photoアプリを通し企業からモデルの仕事を受ける(MONOKROM提供)

今回、サービス運営会社のMONOKROMは、AI開発のベンチャーであるAIQ(東京都千代田区)と業務提携した。同社が持つビッグデータ解析の技術を導入し、これまで人力で大量の情報をさばいてきたモデル審査をある程度、AIが主観を交えず自動的にこなすようにしていくという。