【no.634】「LOVOT」の表現を拡張するAIシステム、コニカミノルタがデモを実施

「LOVOT」の表現を拡張するAIシステム、コニカミノルタがデモを実施

コニカミノルタは2020年8月27日、GROOVE Xの家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の表現を拡張するAI(人工知能)技術を用いたシステムのデモンストレーションを実施すると発表した。

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家族型ロボット「LOVOT」(クリックで拡大) 出典:コニカミノルタ
両社は同年春より、LOVOTの表現力を拡張する画像IoT(モノのインターネット)、AI技術開発で協業している。具体的には、人の姿勢を認識するAIアルゴリズムを搭載したコニカミノルタのAIアクセラレーター(FPGAボード)をLOVOTに接続し、従来の人の認識能力に加え、その姿勢や行動を認識できるようにした。また、GROOVE Xの制御APIと連携させることで、LOVOTの表現力を豊かにする技術開発を進めている。

AIアクセラレーターへの姿勢推定アルゴリズムの実装には、コニカミノルタと東京大学が共同開発した高位合成コンパイラ「NNgen(エヌエヌジェン)」を採用している。

デモンストレーションは、同月28~29日にオンライン開催の「オープンソースカンファレンス2020 Online/Kyoto」で実施。LOVOTが人の姿勢を認識してまねをする様子を披露した。

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「LOVOT」が手を挙げた人の姿勢を認識し、まねをしている様子 出典:コニカミノルタ
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「LOVOT」が見ている、人の姿勢の様子(人が右手を挙げている姿勢を認識) 出典:コニカミノルタ
両社は今後の拡張案として、AIによる姿勢認識により、人のポーズの認識結果を生かした行動などを想定している。

【no.631】AIに対する誤解から何が起こっているのか–今考えるべきこと

AIに対する誤解から何が起こっているのか–今考えるべきこと

18世紀のハンガリーの発明家であるWolfgang von Kempelen氏は、それまで誰も見たことがないような、チェスを指す能力を持つからくり人形を生み出した。この「機械仕掛けのトルコ人(Mechanical Turk)」と名付けられたオートマトンは、人間を相手にチェスを指すことができる人形だった。その人形が指すチェスは強く、1809年には、当時ウィーンに出征中だった、かのナポレオン・ボナパルトを負かしたこともある。

ただし最後には、von Kemplen氏の発明は手の込んだいかさまだったことが明らかになる。その機械の中には、人間のチェスの達人が隠れており、その人物が差し手を決めていたのだった。この人形は19世紀半ばに失われてしまったが、発明から数百年経った今、その物語は現在の人工知能(AI)が置かれた状況を表す絶好のメタファーになっている。

世間には、AIには主体性(agency)があるというイメージがある。AIが気候変動を解決する、スマートシティを構築する、新薬を発見するという話は聞くが、そうした偉業を達成しているのは、実際にはAIシステムを使う人間のエンジニアだという話を聞くことは少ないかもしれない。von Kempelen氏が作った独創的なからくり人形の中に、人間のチェスの達人が隠れていたように、エンジニアやプログラマーやソフトウェア開発者の存在も、AIアルゴリズムの影に隠れてしまっている。

ハンガリーの発明家によるからくり人形の逸話がこの問題について考える上で便利であることは、Amazonのサービスの1つに、その名前が使われていることからも分かるだろう(「Amazon Prime」や「Amazonフレッシュ」ほどは有名ではないにせよ)。「Amazon Mechanical Turk」は、AIシステムに入力する巨大なデータセットにラベリングを行うというような退屈な仕事を、何百万人ものリモートで働く「ターカー(Turker)」にクラウドソーシングするサービスだ。

Mozillaのフェロー兼テクノロジストであるDaniel Leufer氏は、「驚くべきことに、AmazonのMechanical Turkがどんなサービスかについてあらためて気づいた人のツイートを、4カ月に1度くらいは見かける」と話す。「Amazonが、AIの背後で人間が活動していることを覆い隠すように設計されたプラットフォームを、『Mechanical Turk』と呼んでいるのは素晴らしい。何をしようとしているかを隠すつもりもないのだ」

【no.630】プロ野球に“AI解説者”が登場、体操界では3D技術の導入で判定に革命【スポーツのデジタル化】

プレー予測が選手の故障防止にも
AI(人工知能)がスポーツ界で果たす役割はさまざまあり、一つはデータ分析に基づく戦況予測が挙げられる。

「WARP」はサッカー戦況予測AIを搭載した世界初のAIサッカーシミュレーションメディアで、Sports AI社が2017年に立ち上げた。「WARP」はJリーグの公認データであるスタッツデータ、トラッキングデータに加え、サッカー専門媒体が提供する選手情報を反映した約20体のAIを使って10分間の試合を100回実施し、最も確率の高い結果を提示する。これはサッカーくじ「toto」の予想に用いられるなど主にサッカー観戦者向けの技術で、2018年のFIFAワールドカップでは、日本vsセネガル戦の2-2の引き分けという予想を見事に的中させ、注目を集めた。

アメリカの「アマゾンウェブサービス」(AWS)も、プレー予測の面でさまざまな競技に携わっている。機械学習サービス「Amazon SageMaker」を用い、F1では、レース展開の予測や運転技術の評価をテレビ観戦者向けに提供。ラップタイムやタイヤの性能劣化、天気などのデータを反映することにより、たとえば「追い越しを成功させる確率」などが予測できる。タイヤの温度やオーバーヒートが起こる確率までも随時提供されるという。これらのデータにより、レース中の車がどのような状況であるのかがリアルタイムで認知できる。

アメリカンフットボールリーグのNFLは、「デジタルアスリート」という名称のAIをASWと共同で開発している。これは、アメフトにおいて大きな問題となっている、選手の脳震とうを防ぐことが大きな目的だ。「Amazon SageMaker」や画像・動画認識AIサービス「Amazon Rekognition」などの機能を使って選手同士が接触した際の位置関係や速度、加速度、姿勢などを分析し、ケガをしにくい動作を選手たちに促していく。上記のシミュレーション型AI技術は、アスリートや監督、コーチがデータ解析や戦術解析を行う場合にも、もちろん有効的だ。

【no.629】AIは緻密な仕事が苦手? 営業で使うのがおすすめな理由

AIは緻密な仕事が苦手? 営業で使うのがおすすめな理由

囲碁でも将棋でも天下無敵。世界最高の棋士をも打ち負かしてしまう人工知能(AI)。「AI」は、正確無比な手を指し続けます。しかし、それはあくまで、厳密に決められたルールがあるゲームの中の世界。いろんな想定外が起こる現実世界は、そう簡単ではありません。現実世界のAIは、実は結構いい加減で、緻密な仕事は苦手なんです。赤石雅典氏の近刊『Pythonで儲かるAIをつくる』(日経BP)を読むと、そんなAIの本当の実力が見えてきます。

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業務に本当に役立つAIを作るには?
本書の「儲(もう)かるAI」とは「業務に本当に役立つAI」のこと。そんなAIを作るには、AIの得意・不得意を把握しておくことが不可欠です。

AIを適用する分野で、著者の赤石氏がまず薦めるのが「営業」です。語弊を覚悟で言うと、営業という仕事がそもそも、いい加減なことがその理由です。

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コンピューターサイエンスを教養に 米大教授が講義

パソコンも計算間違い!?
「100%成功する営業」なんて、あり得ません。ダイレクトメールを使った営業なら、1件の受注を取るのに、数百件も数千件も送ることがあるでしょう。お得意さまに電話で新製品を売り込むときも、10件中1件成約すれば大成功というケースがあり得ます。

そもそも1割しか成功しない営業なのに、AIで既存の顧客リストをうまく絞り込んだら、成功率が2割に上がったとしましょう。AIを使っても「外れ」が8割もあったわけですが、営業成績は実に2倍になりました。AIの導入は、大成功です。

現在のAIで中心的な手法である「機械学習」は原理的に、正解が「100%」になることはあり得ません。過去のデータを基に予測するだけなので、必ず外れる場合があります。それでも、うまく最適化していくと、どんどん正解率を高められます。その点、営業のようにもともとの正解率が低い業務なら、正解率を高める余地が大きくなります。AIが「いい加減な仕事の方が得意」という理由がそこにあります。

「不良品を漏れなく探せ」は苦手
一方で、AIが苦手なのが「100%の精度を求められる」仕事です。典型的なのが、工場のラインにおける不良品の検出などで、「漏れなく見つけること」が目標になります。

AIで98%の精度を達成するのは、技術的にかなり困難ですが、仮にそれを達成できたとします。その場合でも、不良品の2%は見逃すことになります。それは業務的には認められず、結局AIの導入は断念するということになりがちです。

要するに、AIが得意なのは、どんな仕事なのでしょうか。「いい加減な仕事が得意」だけでは、よく分からないですね。

【no.627】「AI手術支援システム」に手術を任せられる日は来るか?

「AI手術支援システム」に手術を任せられる日は来るか?

AI技術を使って手術を支援する「AI手術支援システム」は、拡張知能の注目すべき応用例だ。その名の通り、AI手術支援システムは外科医の第二の手や目となって手術を支援する。さらにロボット技術を活用した「手術支援ロボット」も医療機関に浸透し始めている。本稿は、手術の現場でAI手術支援システムや手術支援ロボットを使用するメリットと可能性を紹介する。

人がより効率的にきめ細かい方法で作業できるように、人工知能(AI)技術を搭載したシステムが人を支援する機会が広がっている。AI技術を搭載した画像診断装置、診断支援ソフトウェアなどがその例だ。以前は人にしかできないと考えられていた作業が、AI技術の支援を受けられるようになってきた。こうした技術は「拡張知能」(Augmented Intelligence)として知られている。

【no.625】データサイエンスから機械学習エンジニアリングへの移行

データサイエンスから機械学習エンジニアリングへの移行

機械学習とソフトウェアの世界は変わりつつある
過去20年間、 機械学習は1つの疑問を問い続けてきた。何事かを実行するモデルを訓練することはできるのか。

「何事か」と言うからには、もちろんどんなタスクであってもよい。文章の次の単語を予測する、写真の中の顔を認識する、特定の音を発生させる。機械学習が機能するかどうか、あるいは正確な予測ができるかどうか、ということが目標だったのだ。

データサイエンティストによる何十年にもわたる研究のおかげで、今では多くの「何事か」を実行できるモデルが、以下のようにたくさんある。

OpenAIのGPT-2(現在はGPT-3)は、なかなかに人間らしいテキストを生成することができる。
(公式版をめぐる議論はさておき(※訳註1))YOLOv5のようなオブジェクト検出モデルは、毎秒140フレームの動画からオブジェクトを解析することができる。
Tacotron 2のようなテキスト音声合成モデルは、人間の声のように聞こえる音声を生成することができる。
データサイエンティストや機械学習の研究者たちの仕事は驚くべきもので、その結果、自然と第二の疑問が生まれてきた。

これらのモデルで何が作れるのか、そして、どうやって作れるのか。

この疑問は、明らかにデータサイエンスの問題ではない。工学的な問題である。それに答えるために、機械学習エンジニアリングという新しい専門分野が登場した。

【no.623】AI ShiftがAIチャットボット「AI Messenger」で有人チャットの各種設定機能の強化を実施

AI ShiftがAIチャットボット「AI Messenger」で有人チャットの各種設定機能の強化を実施

ンターネット広告事業のサイバーエージェントの100%子会社でAI(人工知能)導入支援事業やAIチャットボット開発を手掛けるAI Shiftは、同社のAIチャットボット「AI Messenger」で有人チャットの各種設定機能の強化を実施した、と8月25日発表した。内容の追加やイレギュラーな対応に合わせて柔軟な設定が可能になった。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い新たな接客としてチャットボットや、ユーザーと直接コミュニケーションする有人チャットの重要性が増しているため、操作性・利便性を高めた。有人チャットにチャットボットとのFAQ(よくある質問と回答)ごとの接続設定と、有人オペレーターの対応時間設定が簡単にできる機能を加えた。

【no.622】AI人材育成は中高時代から始めよ、キーワードは「AI+データ+DX」

AI人材育成は中高時代から始めよ、キーワードは「AI+データ+DX」

AI(人工知能)の応用が爆発的に進んだことで、AIやデータ技術、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、「AI+データ+DX」に関連する人材の不足が心配されている。

米IBMの調査によれば、データサイエンティストだけでも、現在必要とされる人数は270万人程度であり、さらに毎年70万人ずつ増加するという。足元では既に人材不足だともいわれている。

一方、AIの応用以前に、デジタルデータの生成と利用で世界の趨勢に大きく遅れ、AI開発や利用、展開という序盤戦で敗北した日本は、人材教育について世界のどの国よりも危機感を持って取り組まなければならない。これから日本がリターンマッチで生き残るには、AI+データ+DXの人材教育が一丁目一番地の課題だ。

しかし、AI+データ+DX人材と言われてもイメージがつかみにくいだろう。そこで、少し専門的になるが、このような人材に求められる知識やスキルを整理してみよう。

【no.621】手遅れになる前に。豪州でAIを活用した「ミツバチ保護」プロジェクト始動

手遅れになる前に。豪州でAIを活用した「ミツバチ保護」プロジェクト始動

生態系に大きな影響を及ぼすとされるミツバチの存在。その現象や絶滅の危機を救うため、オーストラリアの食品会社Bega Cheeseと養蜂家たちが、人工知能(AI)を使った保護プロジェクト「パープルハイブ・プロジェクト」を立ち上げた。

ミツバチの減少や絶滅の危機を招く要因のひとつに、「ダニ」の存在が挙げられている。ヘギダニやそれらが運ぶウイルスは、ミツバチや蜂の巣を破壊するほど致命的なダメージを及ぼす。これまでオーストラリアを除く全世界でその存在が確認されていたが、今年4月にはオーストラリアでも発見される事態となった。放置すると被害は甚大になる恐れがある。それがパープルハイブ・プロジェクトの立ち上げの経緯となった。

従来、オーストラリアの養蜂家たちは、ダニがいるかどうかを自分たちの目、つまりは「目視」で確認してきた。しかし、それでは多大な労力がかかるばかりか、効率も悪い。そこで、「パープルハイブ」と名付けられた太陽熱で動作するダニ自動検出機が開発・投入されることになった。

パープルハイブには画像認識AIが搭載されている。パープルハイブが備え付けられた養蜂箱にミツバチが入るたびに、AIが自動的にスキャニングを実施。ダニに寄生されているかどうかを、360度カメラで24時間入念に監視する。仮にダニが発見された場合、養蜂家たちのスマートフォンにアラートが届けられ、該当する養蜂箱を隔離するように促すという仕組みだ。

【no.620】DCON2019に出場の高専生が「株式会社三豊AI開発」を起業 AIを活用した電線点検サービスシステムを提供

DCON2019に出場の高専生が「株式会社三豊AI開発」を起業 AIを活用した電線点検サービスシステムを提供

日本ディープラーニング協会は高専生が日頃培った「ものづくりの技術」と「ディープラーニング」を活用して企業の評価額を競うコンテスト「全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2019」(以下、DCON2019)の出場者である武智大河氏(所属:香川高等専門学校 三崎・岩本研究室)が株式会社三豊AI開発を起業。2020年8月19日(水)に登記を行ったことを発表した。

DCON2019での経験が起業のきっかけ

武智氏は昨年、ディープラーニングを活用した「AI送電線点検システム」でDCON2019本選に出場。結果として、企業評価額3億円/投資総額3,000万円と、出場チーム中2番目のバリュエーションを獲得。その後も研究を続け、今回の起業に繋がっている。

三豊AI開発では「AIを活用した電線点検サービスシステムの提供」を予定。同システムは送電線上を走行するロボットが外観映像を撮影し、映像からディープラーニングを活用して送電線の損傷を自動検出する。従来の確認作業に掛かっていたコストを削減するほか、検査品質の確保や確認作業の効率化を目指す。なお、送電線上を走行するロボットの製造・運用はテクノ・サクセス株式会社が行う。