【no.362】JALが推進するAI導入の鉄則とは?「地に足のついたイノベーション」がカギ

JALが推進するAI導入の鉄則とは?「地に足のついたイノベーション」がカギ

航空券の購入予測分析対話型AIロボットチェックインカウンターの案内支援システムなど、AIを活用した数々の取り組みを進める日本航空株式会社

これまでに蓄積されたAIプロジェクトを推進するためのノウハウをLeapMind株式会社との対談形式でお伝えします。

斎藤勝
日本航空株式会社 デジタルイノベーション推進部 部長八木谷佑太
LeapMind株式会社 Co-development Division Manager

ベンダーと単なる受発注の関係になるな

――JALでは多くのAI関連プロジェクトが実施されています。AI活用を進める上で大切にしているポイントを教えてください。

――斎藤
「まずは小さくやってみて『自社ではAIで何ができるか』AIの可能性を確認するのが大切だと思います。初めのうちはどうしても、費用対効果が見えにくいためです。私たちはどのプロジェクトも3ヶ月で区切り、進捗状況を確認しています。なかなか進捗がないプロジェクトは、一旦止めることも必要です」


イノベーションラボ外観

現場検証をスピード感を持って進められるよう、JALはイノベーションラボを開設したのだそう。空港や機内設備を再現できるスペースを設け、スピード感を持って現場検証が進められているといいます。


イノベーションラボ
――八木谷
「目的を明確にし、だらだらやり続けないことは大切ですね。『AIで何をやりたいか』最終ビジョンを一歩踏み込んで事業会社さんと話すようにしています。ベンダー企業として『AIで何ができて、何ができないか』がわかっている一方で、事業会社さんのビジネスを詳しく知っている訳ではありません。

ベンダー企業と事業会社のパートナーシップも、まずは人間関係と信頼関係の構築から始まります。カジュアルな形で話をしたり、壁ができないよう奮闘しています」

――斎藤
「ベンダー企業さんをはじめ、外部とのパートナーシップは非常に重要です。フラットな関係を築けるかどうかは、プロジェクトの成否に大きく関わります。単なる受発注の関係になってしまうのはよくないです。新しい取り組みなのですから、お互いにプロジェクト自体をどれだけ面白いと思えるかが、シナジーを発揮するためのポイントだと思います」

社内外にオープンなイノベーションを

――外部との連携がうまくいっても、大企業だと社内から理解を得るのが難しいのではないでしょうか?

――斎藤
まずはやってみることで、実際に動いているものを現場や経営層へ見せられます。今では社内からも、AIなどの先端技術を取り入れることへの期待感は大きいです。取り組みを社内外にオープンにすれば、多くの人を巻き込めます。まずは楽しくやってみること。そして、期待はしすぎずに『地に足のついたイノベーション』を推進していきたいです」

――八木谷
「JALさんはオープンに取り組みをされていますが、社外秘でこっそりAI導入を進めている企業さんも多いですよ(笑)今は多くの企業でAI導入が進んでいる時期なので、まずはやってみて、ノウハウを自社で蓄積していくのが大事だと思います」

通信制限のある機内でもAIは使えるか?

――今後エッジAIを活用した取り組みも進められるのでしょうか?

エッジAIとは
これまでクラウド上で実行されることが多かったAIによる処理をエッジ側(もの側)で実行すること。インターネットがない環境でもAIの処理を実行でき、通信しない分処理速度も早い。
――斎藤
エッジAIはこれから取り組まなければならない領域だと認識しています。飛行機内や空港では通信が制限されるため、エッジ処理を活用したい場面が多いです。たとえば、機内食を食べるタイミングを解析してサービスの質向上につなげたり、効率の良い動き方をする客室乗務員の動きを分析してノウハウを共有したりできるのではと考えています。

監視カメラのように、機体にエッジAIを搭載するのは安全上難しいですが、乗務員の持ち物に組み込むなど、どうエッジAIを機内や空港で活用できるかは視野に入れています」

――八木谷
「お話を伺うなかでJALさんがすごいのは、サービスインまでしっかり持っていくところです。PoC貧乏という言葉もありますが、小さくトライするにしても、PoCだけで止まってしまうのはもったいないです」

――斎藤
「サービスインまでこぎつければ、利用者から反響を得られます。生の声をサービスに反映させるなど、サービスの質向上につなげるのは、プロジェクトを進める上で大切にしているポイントの1つですね」

自社でなにができるかまず見極める小さく始めて社内外へオープンするなど、いきなり大きな課題をAIで解決しようとしない「地に足のついたイノベーション」を推進するJAL。

AI導入に苦戦する企業が多いなか、JALの姿勢に学ぶことは多そうです。

【no.361】AI肌診断にロボット美容アドバイザー! 最新の「SK-II」体験型ストア

AI肌診断にロボット美容アドバイザー! 最新の「SK-II」体験型ストア

これまで2回、原宿で期間限定のポップアップストアをオープンさせていた化粧品ブランドのSK-IIが、体験型スキンケア・ストア「SK-II Future X Smart Store」をふたたびオープンしました。今回は2019年6月7日(金)〜8月12日(月)まで原宿の「CASE W」で開催しております。

SK-IIのポップアップストア
▲6月6日にメディア向けの内覧会が開催されましたので、そのときの様子をご紹介します

今回も企画が盛りだくさん

SK-IIの高級スキンケア商品

SK-IIといえば、高級スキンケアブランドとして有名です。顧客に新しいショッピング体験をしてもらいたいとして、2018年5月から世界に先駆けて、日本で初めてポップアップストアをオープンしました。2度目は2018年11月27日から2019年1月24日まで行われ、スマートフォンを使ったAR体験などで、SK-IIの世界観を再現しました。

今回はさらにパワーアップ! 肌診断サービスやスマートフォンを使ったAR体験は健在ですが、そんなことまで!というちょっと笑える体験もプラスされました。

P&G ジャパン グループ 執行役員 SK-Ⅱ ヨージン・チャン氏▲P&G ジャパン グループ 執行役員 SK-Ⅱ ヨージン・チャン氏

冒頭で挨拶したP&G ジャパン グループ 執行役員 SK-Ⅱ ヨージン・チャン氏は「3回目になるが、やりたかったことは変わっていない。高級基礎化粧品の買い物は怖い、高いものは怖いというイメージ、ストレスを払拭したい。買い物体験を簡単に、どうやったらエキサイティングにできるのかを考え、ほとんどすべてを新しくした」としました。

動くと反応するウォール
店内の様子

今回の企画は、日本初のAIを活用した肌測定「マジックスキャン」、ロボット美容アドバイザー「Yumi」による製品紹介、アイトラッキング技術を使った鏡の中で表示を操作できる「マジックミラー」による製品体験、「ピテラパワー ベンディングマシーン」を使った製品購入体験、ピテラの情報を体感できるARゾーン、30台のカメラで撮影するセルフィーブース、動きに反応するウォール、人とのつながりを強化するための美容部員も兼ねたコミュニケーションスタッフ「ビューティ・インフルエンサー」の設置の8つ。ちなみに「ピテラ」とは、SK-IIの化粧品に含まれる、「ガラクトミセス」という天然酵母と発酵の研究の末に発見された独自の保湿成分のことです。「酒造所で働く杜氏の手が美しい」という発見から誕生したといいます。

これまでは1階、2階にわかれていましたが、これらすべてを1フロアで体験できるようになっています。

【no.360】AI人材を目指す学生は少数派、データサイエンティスト志望は3.3% 企業側のニーズと差

AI人材を目指す学生は少数派、データサイエンティスト志望は3.3% 企業側のニーズと差

いまの学生の中で「AI人材やエンジニアになりたい」と考える人は少数派――マイナビの調査で、そんな結果が出た。ビッグデータ分析やアルゴリズムの作成など、AIに関連した業務を行える人材の需要が高まっているが、企業側のニーズと学生の志望度には大きな乖離(かいり)があるようだ。

データサイエンティストの志望者は3.3%

同社が2020年に卒業予定の大学生・大学院生に意見を聞いた結果、75.4%がデータサイエンティスト、各種エンジニア、コンサルタントなど「AI・IT職」を志望しないと答えた。専攻との関連性が強い理系でも、男子の67.1%、女子の81%が同様の回答をした。

特に志望度が低かった職種は、セールスエンジニア(1.1%)、カスタマーエンジニア(1.7%)、システムコンサルタント(2.8%)、データサイエンティスト(3.3%)、システムの保守・運用担当(4.2%)、ネットワークエンジニア(4.7%)――など。

photo大学生・大学院生(2020年卒)の「AI・IT職」への志望度

志望度が低い背景には、AIに対する漠然とした不安があるとみられ、学生からは「スキル・知識がないから(活用できるか)不安だ」(27.4%)、「具体的に(AIを活用して)働くイメージができない」(19.8%)、「適正がないと感じるため不安だ」(12.2%)、「自分の就きたい仕事には関係ない」(3.4%)といった意見が出た。

一方、「(AI導入によって)業務効率が上がると期待している」(33.3%)、「環境への適応力があるので特に心配はしていない」(13.1%)、「具体的に働くイメージができているので特に心配はしていない」(5.6%)など、AIの普及・活用に好印象を持つ層も一部みられた。

photoビジネス界へのAI導入に対する印象

だが、AI・IT職を志望している2割超の学生からも、「(企業が)どの程度のプログラミングスキルを求めているのか、基準が分からない」(61.1%)、「選考でみられているポイントが分からない」(25.5%)、「必要とされる能力が分からない」(15.6%)などと選考基準を不安がる声があった。

マイナビは「企業側のニーズと学生の志望度に大きな乖離(かいり)がある」「企業は学生の理解を促すために、募集の際は具体的な業務内容や必要とされるスキルなどを明確に示す必要があるだろう」と指摘している。

photo選考に対する不安

調査は4月24~30日にかけて、就活支援サービス「マイナビ2020」の会員を対象にWeb上で実施。7342人から回答を得た。

【no.359】使うかな…? AmazonがAIで洋服選びをサポートするSnapshopをローンチ

使うかな…? AmazonがAIで洋服選びをサポートするSnapshopをローンチ

どうなんでしょう…。

今やオンライン小売業のドンであるAmazon(アマゾン)ですが、ファッション分野は成功しているとは言えません。だって、オンラインショッピングで洋服を買おうと思ってもAmazonは見に行かないでしょう。まず、商品の表示方法も決してオシャレとは言えないですし、私は子供の体育祭用指定Tシャツを買ったことしかありません。

でも、Amazonは「じゃあファッション分野なんて止める!」とはならないんですね。彼らは「StyleSnap」というAIを利用した新たなツールを発表したんです。

The Vergeによると、StyleSnapは洋服版「Shazam」。Shazamは、ラジオやテレビで流れている音楽を認識してくれるアプリですが、StyleSnapは、洋服の写真をアプリいアップロードして、Amazonで扱っている似たような服を検索してくれるというものです。

しかしこういったサービスは多くのスタートアップがすでに提供していて、オンラインファッション大手のAsosも使っているとThe Vergeは指摘しています。それに、Amazonが「ファッション×テック」に強くないのは、スタイル・アシスタントとしてアピールした「Echo Look」でも証明済み。いくつかのメディアがEcho Lookをレビューしていますが、物珍しさはあれど、継続して使いたいという代物ではないようす。

なので、AmazonがこのAI機能を導入するからといってファッション部門が成功するかといったら微妙なところかも。まぁ、Amazonがファッション部門を諦めるつもりがないということだけはしっかり伝わりました。

でも、消費者目線で言わせてもらうとするなら、努力する方向性が全然違うと思うんですよね。ウェブサイトのデザインがファッション向けじゃないんです。ガジェットやオムツやだしの素を扱うウェブサイトと同じテイストで部門だけ変えても全然格好良く見えないし、商品レビューのオレンジの星も途端に説得力がなくなってしまう。ワクワクしないんです。「これを着たらどんな新しい自分に出会えるかな」って思えない。

デパートは惣菜コーナーからコスメコーナー、衣類コーナーと陳列の仕方や雰囲気まで全部変えているじゃないですか。店員さんも客の気分を盛り上げるために色々工夫してくれる。Amazonにはそれがないんです。だから、消費者の立場で言うならAI云々より、ウェブサイトを変えるか、それが嫌ならスッパリやめたほうがいいんじゃないかな、って思うんです。

【no.358】AI分野の技術発展戦略の策定に向けた会合、財政措置など議論

AI分野の技術発展戦略の策定に向けた会合、財政措置など議論

米国や中国を中心として世界的に人工知能(AI)への関心が高まり、多くの国でAI分野の政府戦略・プログラムが策定される中、ロシアでも同様の動きがみられている。プーチン大統領は5月30日、AI分野の技術発展戦略策定に向けた会合を開催。戦略の方向性や実現に向けた財政措置について議論を行った。

冒頭で、プーチン大統領は「AIはビッグデータ分析に基づく最適結果を導き出すもので、マネジメント、教育、ヘルスケアなど国民生活・経済・労働生産性に衝撃を与えるもの」と述べ、既に多くの国がAIに関する行動計画を策定している中で、ロシアでは携帯電話・インターネットの高い普及率と世界的にみて安価な通信料、豊富な数学・物理に強い人材供給とIT専門家育成システムが確立されており、国産技術が潜在的な競争力(ポテンシャル)を有していると指摘した。この競争力をAI分野にも生かすために、a.新しい数学的手法などの基盤創設や人間脳に類似するAI作業の確立、b.複雑な課題の解決に向けた人材育成のための国際数学センターの開設(モスクワ、サンクトペテルブルク、ソチ)、才能ある人材の引き留めや海外からの専門家誘致、それに向けた金銭・就労面でのインセンティブの供与、c.AI開発・活用に向けた知財保護面を含む柔軟な法制度整備とAI分野への民間投資誘致、d.データの加工・保管に関する法制度改正、e.AI導入に関する国民への啓発、の5点が重要だと強調した。

デジタル経済政策を担当しているマクシム・アキモフ副首相は、AI技術発展戦略の実現に関する手法と財政措置について言及。戦略の実現に向けた各種措置が明記される、連邦プログラム「AI」を2019年10月までに策定し、先進的な研究機関支援を含むアルゴリズム、数学的方法分野の研究支援、官民での技術開発・複製の試験実施などに向け、6年間で900億ルーブル(約1,530億円、1ルーブル=約1.7円)の財政拠出を行うと述べた。

他方、デジタル経済戦略策定に参画する、ロシア最大手行ズベルバンクは本会合開催前の5月20日に、AI分野の発展(注)には、2024年までに1,000億ルーブル、2030年までに1,800億ルーブルの予算が必要だと試算し、900億ルーブルでは足りないとしている。ズベルバンクの評価によると、AI技術の開発・商業化への投資は主に、横断技術(AI分野で横断的活用できる技術)に向けることが肝要とし、投資額は解決課題の内容や、活用する横断技術の完成度合、完成品の技術的複雑性次第としながらも、2030年までに基礎調査に200億ルーブル、横断技術の試作開発支援に400億ルーブル、全分野の横断技術支援に1,200億ルーブルが必要としている(電子メディア「プライム」5月20日)。

(注)ズベルバンクが策定に携わっている「AI発展戦略」では、AI技術の定義を「コンピュータビジョン(コンピュータによるデジタル画像・動画の理解に向けた人間の視覚システムの自動化を追求するもの)」「自然言語処理(人間が用いている自然言語をコンピュータに処理させる技術。自然言語をコンピュータが理解しやすい表現に変換、その逆の処理が含まれる)」「レコメンダシステム(特定ユーザーが興味を持つと思われる情報を「おすすめ」として提示するもの)」「音声認識」「自動機械学習技術」などとしている。

【no.357】ロボットに触覚を与える「AI手袋」 MITが開発

ロボットに触覚を与える「AI手袋」 MITが開発

MITコンピュータ科学・人工知能研究所が、映像データから学習する「AI手袋システム」を開発した。「STAG」(Scalable Tactile Glove)と名付けられており、実際の手と同様に、さまざまな刺激を検出することができると説明されている。

研究をリードするCSAILの研究員、Subramanian Sundaram氏はこれまで、人間と同じように皿を拭くことができるなど、ロボットに鋭敏な触覚機能を備わせる研究をしてきた人物だ。AI手袋の研究成果をさらに向上させれば、「完璧な触覚を持ったロボットアーム」を製作できるようになっていくはずだと今後の見通しを語る。

研究チームは、AI手袋を開発するために伸縮性のある約15ドルの手袋を用意。そこに、対象やモノゴトを検出するため548個のセンサーを取り付けた。人の手には、約1万7000本の機械受容器神経線維があり、外部から加わるさまざまな物理的刺激を触感信号に変換している。その機能を、大量のセンサーを使って代替しようという試みだ。

courtesy of MIT

なお、Sundaram氏によれば、既存の研究過程においてもロボットアームにセンサーを取り付けたケースがあったが、その数は50個ほどにとどまっていたという。今回は約10倍の量のセンサーを搭載することになった。しかも、生産コストを10ドル台で調整できるのも特徴のひとつとされている。

今回開発されたAI手袋は単にセンサーが多いだけではなく、映像から得られた情報を学習することでスマートになっていく。人間は視覚から得た情報と触覚を連動させ、対象の状態を覚えていくが、同じプロセスを再現しようということになろう。現時点で、空き缶、はさみ、テニスボール、スプーン、ペン、マグカップなど26個のモノと関連した、13万5000フレームの触覚データセットを識別するまで能力が拡充された説明されている。

Sundaram氏は、「ロボットがこのAI手袋を着用すれば、人間のようにモノゴトを感知し対応することができる」とする。対象物を動かす、掴み上げる、下ろす、意図的に落とすなどのアクションがそれにあたる。

既存の産業用ロボットや協働ロボットでは、無造作に置かれた形が異なる物質を自由にピックアップ、もしくは分別するタスクを処理することが難しいとされてきた。今後、人間のような細かい手作業を再現することがひとつの課題とされている。同分野では、すでにディープラーニングを使った学習などさまざまなアプローチで研究が進んでいる。大量の細かいセンサーと機械学習を組み合させた、AI手袋の技術革新にも期待したい。

【no.356】大丈夫? AIは、ただの「落書き」に呆気なくダマされる

大丈夫? AIは、ただの「落書き」に呆気なくダマされる

映画『ターミネーター』シリーズには、どんなに追い払おうとしても追いかけてくる、恐怖のロボットが登場する。ターゲットとなる人物の顔を認識し、どこに逃げ隠れしようが追跡し、その人物の命を奪おうとする――これはさすがに極端な例だが、人がAI(人工知能)に不安を抱くとき、こんなイメージを抱くのではないだろうか。絶対にミスを犯すことのない、神(あるいは悪魔)のような存在というわけだ。

ところがいま、むしろAIの方が簡単に撃退されてしまうのでないかという懸念が出てきている。しかもそのために、強力な武器も溶鉱炉も必要ない。ステッカーがあれば十分なのである。

2017年7月、ワシントン大学など4つの研究機関の研究者たちが、とある論文を発表した。その論文で示されていたのは、ごく簡単な手法によって、ロボットカー(自動運転車)に搭載されたAIが騙されてしまう可能性である。

彼らがテストした「騙し」のテクニックのひとつが、実際の道路標識に対して、落書きを模してステッカーを貼るというものだ。

上の画像は実際の論文から引用したものだが、実際に研究者たちが作成し、ロボットカーのAIに読み取らせた一時停止標識である。白と黒の四角形に見えるのは、何の変哲もないステッカーを貼り付けたもので、何か特殊な加工がしてあるわけではない。

しかし人間の目で見れば何の違和感もない、そして人間であれば何の苦労もせず「これは一時停止標識だ」と認識できるこの画像、実はロボットカーの「目」にはまったく違うものに映るよう計算されてつくられている。実際に実験を行ってみたところ、ロボットカーはこの標識を「制限速度45マイル(約72キロメートル)」と勘違いしたそうだ。

なぜロボットカーに搭載されたAIは、こんな簡単なトリックに騙されてしまったのだろうか。

この実験で騙す対象となったAIは、ディープラーニングという手法で構築されたものだ。簡単に言うと、ディープラーニングではAIに大量の学習用データを与え、AIはそれをもとに独自の「思考回路」を形成する。そしてその思考回路を使って、現実の世界から与えられるデータを処理し、適切な判断をしていくわけだ。

しかし人間の目にも錯覚という現象があるように、構築されたAIの思考回路も、与えられたデータから誤った判断をしてしまう場合がある。そうした誤った判断を引き出すようなデータを設計して、AIに与えることによって、意図的にミスを引き出すことができるのだ。そしてこのような、意図的にAIを混乱させる手法を、「敵対的攻撃(Adversarial Attack)」と呼ぶようになっている。

【no.355】ピザ界でもAIは大活躍。ドミノ・ピザが人工知能で出来栄えを鑑定

ピザ界でもAIは大活躍。ドミノ・ピザが人工知能で出来栄えを鑑定

人工知能が完璧なピッツァを目指します。

出前で届けてもらったピッツァが別モノだったり、具が足りなかったり、配置に偏りがあった経験ってありますか? あんまり聞いたことがないかもしれませんが、オーストラリアだとそんなこと、無きにしもあらずらしいんですよね。

そこでドミノ・ピザが開発したのが、AIの力を借りて出来栄えをスキャンで鑑定する「DOMピッツァ・チェッカー」。まずはどんなモノなのか、プロモーション映像でチェックしてみてください

 

Video: Domino’s Australia/YouTube

なるほど。ちゃんと注文通りに、しかも綺麗に焼けたかどうかをAIがデータベースと照らし合わせるってことなんですね。もし出来ていなかったら、作り直してくれるそうです。

designboomいわく、このマシーンは2017年に予告されていたのだそうです。ですがやっと完成し、これからオーストラリアとニュージーランドの店舗に配備されるとのこと。ゆくゆくは、スキャンしたほかほかのピッツァ写真を、配達先のお客さんに送信することも計画しているとか。きっとそれを、お客さんがSNSに投稿するんでしょうね。

まさかこんな形でピッツァに未来がくるとは思いませんでした。

【no.354】AIアナウンサー「荒木ゆい」を地上波テレビ局が採用。放送現場の働き方が変わる?

AIアナウンサー「荒木ゆい」を地上波テレビ局が採用。放送現場の働き方が変わる?

高知県を放送エリアとする地上波テレビ局(フジテレビ系列)「高知さんさんテレビ」に、AIアナウンサー「荒木ゆい」が番組アナウンサーとして採用された。

「荒木ゆい」は、株式会社Specteeが開発した音声読み上げサービスだ。文章を音声で読み上げる「Text to Speech」技術にディープラーニング(深層学習)を取り入れることで、より人間に近い滑らかな発音での音声読み上げを実現している。

スタジオの空きやアナウンサーの拘束時間から開放される

これまでの番組制作では、ニューススタジオでアナウンサーなどが読み上げる音声を録音する必要があった。そこで課題となっていたのが、人員確保やスタジオスケジュールの調整だ。

「荒木ゆい」を採用することで、原稿をPCに文字入力するだけでアナウンス音声を準備できるようになる。スタジオの空きやアナウンサーの拘束時間を気にすることなく、効率的な番組制作が可能となる。

社員等の拘束時間の削減、一般的なスペックのPCでもアナウンス音声を作成でき、効率的な業務分担も実現しているという。

高知さんさんテレビでは今後、「荒木ゆい」を放送以外のイベントやウェブサイトでも活用することで、さらに効率的な働き方を推進する予定だ。

めざましテレビで「AI天気」の実証実験も

2019年4月、「荒木ゆい」の開発元であるSpecteeは、フジテレビ系列「めざましテレビ」、日本気象協会と連携し「AI天気」の実証実験も行った。

近年、異常気象などにより、季節外れの寒さや高温の日が多く発生している。日本気象協会が実施した調査では、「あなたがこの1週間の中で、天気予報を見る目的や理由をお選びください」と質問を行ったところ、傘などの持ち物の参考のために天気予報を利用している人が最も多く(69.3%)、続いて、服装を決めるために参考にしている人が多い(46.5%)との結果がでている。

上記の結果から、日本気象協会は、天気予報において体感を重視した服装や持ち物に関する情報が重要であると考えた。そうして、お天気情報カメラなどのカメラ映像をリアルタイムに解析し、服装などの判定をする「AI天気」が実証実験として行われたのだ。

【no.353】電通と双日、AIがマグロの尾部断面画像から品質判定するシステムを開発

電通と双日、AIがマグロの尾部断面画像から品質判定するシステムを開発

日本の伝統産業における長い歴史で培われてきた職人の技は、人類の経験知が集積された貴重な資源だ。これらのノウハウは、「職人の勘」と形容されるように、体系化や言語化ができない暗黙知であるとされ、担い手である職人も高齢化しており存続が危ぶまれている。

そんななか、電通と電通国際情報サービス、双日は、天然マグロの尾部断面画像からAIが品質判定を行うシステム「TUNA SCOPE」を開発し、今年3月に実証実験を行った。

電通と電通国際情報サービスが取り組む、熟練の職人が持つ技能継承が課題となっている産業において、職人の技能をAIなどの技術を活用して継承する取り組み「プロジェクト匠テック」の一環だという。

マグロの尾部断面画像からAIで品質判定し、「AIマグロ」としてブランド化

今回に実証実験では、一人前になるまで10年は必要といわれるマグロ仲買人の「目利き」のノウハウに着目。マグロの尾部断面の目視により品質判定を行う「尾切り検品」と呼ばれる職人技から得た膨大なデータを機械学習により継承した。

実証実験は、

  • ①「TUNA SCOPE」のβ版をマルミフーズ株式会社の尾切り検品業務に適用し、判定精度を検証
  • ②同システムが最高品質と判定したマグロを「AIマグロ(商標出願中)」としてブランド化し市場性を検証

の2段階で実施された。

①「TUNA SCOPE」のβ版開発と適用

マグロの尾部断面写真と、職人の4〜5段階の品質評価の結果を紐づけて尾切り検品のデータを取得し、画像解析を行うためのシステムを構築。

収集したデータを基にチューニングとディープラーニング・アルゴリズムの選定を行い、スマートフォンアプリとして実装した「TUNA SCOPE」β版を開発した。これをマルミフーズ焼津工場での検品業務で試験運用した結果、職人と85%の一致度でマグロの品質判定に成功。

②AIが最高品質と判定した「AIマグロ」の販売および市場性検証

「TUNA SCOPE」の運用で最高ランクと判定されたマグロを「AIマグロ」とし、商品ブランドロゴを開発。「産直グルメ回転ずし 函太郎Tokyo」で5日間にわたって提供し、約1,000皿を販売した。

アンケートの結果、注文客の約89%から「AIマグロ」に対する高い満足度を示す回答が得られたという。

電通グループは「TUNA SCOPE」のさらなる精度向上と実用化に向け、学習モデルの教師データの継続的な収集、解析アルゴリズムの最適化に向けた取り組みを続けていく。

また得られたノウハウをほかの産業分野でのAIによる「目利き」の継承に応用し、社会や企業の課題解決に貢献していくという。