【no.338】メルカリから学ぶ、事業にAIを導入する術

メルカリから学ぶ、事業にAIを導入する術

2019年3月28日、「メルカリAI技術説明会」が行われた。AI(人工知能)時代に向け、テックカンパニーを目指すメルカリの技術に関する取り組みが紹介された。

登壇したのは、メルカリ取締役兼最高製品責任者(CPO)の濱田 優貴氏、AI Engineeringチームディレクター 木村 俊也氏、AI Engineeringチームマネージャー 山口 拓真氏だ。メルカリの技術面を担うメンバーが、世界のAIトレンドやテックカンパニーとしてメルカリが目指す世界、メルカリを支える最新のAI技術について説明した。

売ることを空気にする「AI出品の進化」

メルカリで商品を売るためには「出品」という作業が必要になる。しかし、出品したいモノを撮影し、カテゴリを選び……という作業はユーザーにとっては負担になる。

そこでメルカリが進めるのが「AI出品の進化」だ。売ることを空気にするというビジョンのもと、AIを活用した出品機能を開発中だという。

今回はそのプロトタイプ段階のものが紹介された。

撮影した物体を解析し、「商品」「価格」を特定する

紹介されたのは、物体を動画撮影するだけで、瞬時に「物体名」を特定し、それが現在いくらで取引されているか、「価格」が表示される機能だ。

ユーザー自身がカテゴリの入力や価格を調査するのは面倒だ。そういった面倒を物体認識の技術などで解決していくという。

ほしい商品を物体認識で見つける

メルカリは、出品に限らず購入体験も進化させていく。

ほしい商品があっても、名前がわからいケースがある。写真をアップロードするだけで写っている物体を特定し、購入ができる機能だ。

スマホをかざすだけで売れる世界観

AIを活用したしたメルカリのアップデートは、さきに紹介した機能にとどまらない。

――濱田
「今後は、『セリングAI』という機能の実装も考えています。ユーザーは、商品を売るために価格を下げたり、あるいは市場の動きにあわせて価格を上げたりします。そういった価格をユーザーではなくAIが自動的に交渉してくれる機能が『セリングAI』です。物の価値は日々変わります」

――木村
「メルカリは、テクノロジーを通じて『売る』という体験を進化させます。『売る』ことを圧倒的に簡単にし、まるで『空気』のようにあたりまえにする。目指すのは、『スマホをかざすだけで売れる世界観』です」

【no.337】フェイスブックのAIにも「認知バイアス」による偏見が潜んでいた

フェイスブックのAIにも「認知バイアス」による偏見が潜んでいた

被写体を自動認識するフェイスブックAIカメラが、黒人女性を“素通り”してしまった──。そんな事実が、同社の開発者カンファレンスで明らかになった。グーグルのAIによる「ゴリラ問題」などで、かねて課題となってきたAIの認知バイアス。フェイスブックはこの重要な問題を、いかに解決しようと考えているのか。

TEXT BY TOM SIMONITE
TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

Mike Schroepfer

フェイスブックの最高技術責任者(CTO)マイク・シュレーファーは、最悪の事態を避けるためには人工知能AI)は不可欠だと話す。PHOTO: PEDRO FIÚZA/NURPHOTO/GETTY IMAGES

昨年のある日、フェイスブックのプログラムマネージャーであるレイド・オバメヒンティは、自社のアルゴリズムが黒人に対して差別的であることを発見した。

オバメヒンティはそのとき、開発中のヴィデオチャット端末「Portal」のプロトタイプをテストしていた。このデヴァイスは話している人を自動で探し、そこにカメラがズームインするようになっている。

しかし、オバメヒンティが朝食のフレンチトーストについて話していたとき、デヴァイスは彼女を無視して、代わりに同僚の白人男性を画面の中心にもってきた。オバメヒンティは黒人だった。

彼女は年次開発者向けイヴェント「F8」の2日目に、この体験について語った。初日となる前日には、最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグが基調講演でプライヴェート重視路線を強化すると力説したばかりだった。

ただ、最高技術責任者(CTO)であるマイク・シュレーファーの話は、CEOのそれより現実的だった。イヴェントの2日目に壇上に立ったシュレーファーとオバメヒンティなど技術チームの面々は、プラットフォームを守るためにテクノロジーを利用することの難しさをよく理解していた。

特に人工知能(AI)の場合、「認知バイアス」が大きな課題となっている。シュレーファーは「簡単な答えはありません」と語った。

AIカメラが黒人女性エンジニアを“無視”した理由

ザッカーバーグもシュレーファーも、Facebookのような巨大プラットフォームではAIが必要不可欠であるとの認識では一致している。人間関係のデジタル化の結果として予期せぬ事態が起こらないようにするには、テクノロジーに頼るしかない。

ただ、これまでの常識を覆すようなテクノロジーの常として、AIそのものが予期せぬ事態を引き起こしているのだ。機械学習応用部門を率いるホアキン・カンデラは「何が起きるか予測することは不可能です」と言う。

オバメヒンティの体験によって、フェイスブックがAIの認知バイアスを避けるためのツールを見つけ、その開発過程も見直さなければならないことが改めて確認された。AIに無視されたことで「多様性に対応できるAI」をつくり出していくことの重要性を強く感じたと、彼女は話している。

そのためには、Portalのプロトタイプの動作だけでなく、コンピューターヴィジョンを支えるシステムを訓練するために使われているデータセットに内在する、人種や性別の偏りを調べるところから始めなければならなかった。オバメヒンティは、データセットには女性や浅黒い肌の人の画像が少なかったことを発見した。結果として、プロトタイプもこうしたグループをうまく見分けられなかったのだ。

潜在的な認知バイアスという問題

AIシステムの普及に伴い、潜在的な認知バイアスについて警鐘を鳴らす研究者が増えている。2015年には、グーグルの画像認識システムが黒人を「ゴリラ」とタグ付けしていたことが明らかになる事件があった。ただ、グーグルがとった対応策は、タグ用の単語の一覧からゴリラやチンパジーといった大型霊長類を外すことだけだった。

オバメヒンティの対策はこれよりは建設的で、最終的にはシステムの改良に成功したという。F8でのプレゼンテーションによると、訓練をやり直した新しいシステムでは、男性でも女性でも3種類の異なる肌の色について90パーセント以上の確率で認識できた。90パーセントはフェイスブックが設けている目標ラインだ。ただ、それでもまだ黒人女性の認識率は、ほかと比べて低くなっている。

フェイスブックは拡張現実(AR)カメラのフィルターについても、人種や性別にかかわらず誰でも認識されるように同様の方法で変更を加えている。機械学習のアルゴリズムはより強力になっているが、訓練の際には慎重さが必要だ。オバメヒンティは「AIを現場にもってくると、そこに内在する除外というリスクが明らかになります」と話す。

フェイクニュース判定にも認知バイアス

一方、フェイスブックはプラットフォームから偽情報を駆逐するためにAIシステムを導入しているが、カンデラはこれについて、不公正にならないよう注意しなければならないと強調した。例えば、インドでは現在、各地で総選挙の投票が行われているが、フェイスブックはここで誤った情報が拡散されないようコンテンツフィルターを使っている。

このコンテンツフィルターは数あるインドの主要言語のうちのいくつかに対応し、人間のレヴューが必要と思われる投稿を拾い出していく。カンデラはどの言語でもフィルタリングが正確であるかどうかを細かく確認していると話した。

また、フェイクニュース対策にユーザーの力を借りるというやり方にも課題が見えてきている。フェイスブックは昨年、特定の投稿がフェイクニュースかを見極めるために、ユーザーからのフィードバックを取り入れる方針を明らかにした。カンデラはこれについて、AIの認知バイアスに取り組むチームは同時に、こうしたヴォランティアのユーザーのコミュニティーに人種や地域的な偏りがないようにしなければならないと指摘する。

テクノロジーの進化だけでは解決できない

一方で、テクノロジーの進化によってこうした問題は解決されていくとの見方もある。CTOのシュレーファーは、画像やテキスト認識において、少ないデータセットで訓練されたAIがより正確な結果を出せるようになっているという研究結果を紹介した。ただ、Facebookでの利用規約違反のコンテンツの発見率については最新のデータは示さず、昨年11月に発表した数字を繰り返すにとどめている。

カンデラは、テクノロジーの進歩とシステムのバイアスを検知するツールの開発だけでは、フェイスブックの問題を解決することはできないと認める。経営陣とエンジニアが一丸となってやるべきことをやっていかなければならないのだ。

【no.336】AIが犯罪を予測、是か非か 揺れるアメリカ社会

AIが犯罪を予測、是か非か 揺れるアメリカ社会

「マイノリティ・リポート」の現実味

顔認識よりもさらに深刻なバイアスも指摘されている。人々の「未来」についての、AIのバイアスだ。

その深刻さが知られるようになる、大きなきっかけとなったのが、米国で導入されている「再犯予測プログラム」のバイアスだ。

刑事事件の被告が将来、再び罪を犯す危険性を、データに基づいてプログラムで自動判定し、評価点を出す。そしてそれをもとに、裁判官が判決を言い渡す─。

スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演のSF映画「マイノリティ・リポート」(2002年公開)を思い起こさせる「再犯予測プログラム」。その問題がクローズアップされたのは、一件の銃撃事件の裁判だった。

2013年2月11日の午前2時17分、ウィスコンシン州西部の街、ラクロスで、住宅に向け、車両から2発の銃弾が撃ち込まれる事件が発生。間もなく、2人の容疑者が逮捕される。

このうち運転手役だったとされるのが、当時31歳の男性被告。盗難車両の運転や逃亡などの罪で、一審で6年の有罪判決を受ける。

判決に使われたのが「再犯予測プログラム」だった。

このプログラムには、AIの技術である機械学習が使われていると見られているが、詳細は明らかになっていない。

被告はこれに対し、「再犯予測プログラム」はアルゴリズムが明らかでなく、信頼性を検証できないため、法の適正手続き(デュープロセス)を受けるべき被告の権利を侵害している、と主張。判決を不服として控訴した。

控訴審は、「再犯予測プログラム」の判決への導入についての可否の判断を、州最高裁に委ねた。

一審判決で使われた「再犯予測プログラム」は、米ノースポイント社(現エキバント)が開発した「COMPAS」と呼ばれるものだった。

「COMPAS」とは、被告に137問の質問に答えさせ、過去の犯罪データとの照合により、再び罪を犯す危険性を10段階の点数として割り出すシステムだ。

この質問には、犯罪、保釈の履歴や年齢、雇用状況、暮らしぶり、教育レベル、地域とのつながり、薬物使用、信条、さらには家族の犯罪歴、薬物使用歴なども含まれる。

今回の男性被告の場合、過去に性的暴行の前科があり、性犯罪者データベースに登録されている人物だったという。

このため、「COMPAS」による再犯危険度の点数も高かったようだ。

「COMPAS」は州政府の矯正局が使用し、そのデータが裁判官に提供されている。

2016年7月16日に州最高裁が出した判決では、「COMPAS」の危険度評価を判決で使うことについては、被告が適正手続きを受ける権利を侵害してはいない、とした。

ただし、「判決を、このプログラムに依存することまで認めるわけではない」と指摘。プログラムの使用には前提条件が必要になる、と判断を示した。

まず、「再犯予測」のデータを裁判官に提供する場合には、予測プログラムが非公開のアルゴリズムによること、データにはバイアス(偏り)があり、白人よりも黒人に高い危険性評価が出ることなどの注意書きを明記するように、と指摘。

さらに、量刑の軽重、実刑か猶予かを、このプログラムのみに依拠して判断すべきでない、とした。判決はこう述べる。

「 危険度評価のツールを、量刑の長さや軽重を判断するために使うことは、不適切である。」

再犯予測プログラムをめぐっては、2010年にもインディアナ州最高裁が「量刑判断に取って代わるものではなく、その参考データとして使用すること」とする判決を出している。ウィスコンシン州最高裁の判断も、その流れの中にあるようだ。

被告は連邦最高裁に上訴したが、2017年6月26日に退けられている。

「再犯予測」の精度とは?

ウィスコンシン州では、「COMPAS」は今回のような判決の場面だけでなく、仮釈放の判断など、犯罪者矯正の幅広い場面で使われている。

このような「再犯予測」プログラムは、このほかにも、アリゾナ、コロラド、デラウェア、ケンタッキー、ルイジアナ、オクラホマ、ヴァージニア、ワシントンの各州で、刑事裁判の判決に導入されているという。

ウィスコンシン州最高裁の判決では、「COMPAS」のアルゴリズムが非公開であるとしながらも、バイアスの存在について言及していた。

その判決に先立つ2016年5月、米調査報道メディア「プロパブリカ」が独自に「COMPAS」の精度を検証し、そのバイアスについて報じていたのだ。

「プロパブリカ」の検証では、白人よりも黒人の再犯危険度が高く示される傾向があった、という。

「プロパブリカ」は、「COMPAS」を導入しているフロリダ州の情報公開法を使って、同州ブロワード郡で2013~2014年に「再犯予測」の評価を受けた1万人を超すデータを請求し、独自に検証した。

フロリダは「COMPAS」の予測を、判決ではなく、主に公判前の保釈の判断に使っているという。

「プロパブリカ」の検証によると、「COMPAS」の再犯予測の精度、すなわち危険度が高いと評価した人物が実際に再犯をした割合は、白人59%、黒人63%とさほどの違いはなかった。

だが、細かく見ていくと、黒人の方がより危険度が高く出る傾向が顕著だった、という。

例えば「再犯予測」後、実際には2年間、再犯のなかった人物が、高い危険度評価を受けていた割合は、黒人が44・9%に対して、白人は23・5%と、2倍近い違いがあった。

逆に、「再犯予測」後、2年以内に再犯があった人物が、低い危険度評価を受けていた割合は、白人が47・7%と高く、黒人は28・0%と、こちらも2倍近い違いがあった、という。

この検証結果は大きな反響を呼び、「COMPAS」はアルゴリズムによるバイアスの代表的な事例として取り上げられるようになる。

ただこの検証結果に対しては、ノースポイントが異議を申し立て、さらに「プロパブリカ」が反論するという応酬が続いた。

また、この議論には専門家らも加わり、黒人の再犯率が実際に高いことから、再犯予測が高く出てしまうのはやむを得ない面がある、との指摘もなされている。

犯罪発生地域を予測する

犯罪に関するシステムとしては、このほかにもAIを使って犯罪発生地域を予測する「プレッドポル」が知られている。

過去の犯罪発生データの解析によって、犯罪発生率の高い地域を予測し、パトロールの効率的人員配置を行うというものだ。

「プレッドポル」はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とロサンゼルス市警察(LAPD)による、データを使った犯罪発生予測の実験がきっかけになっている。 もとになったのは、地震の余震を予測するアルゴリズム。

「それを活用することで、犯罪発生を阻止する効果は倍増した」─「プレッドポル」の共同創業者でUCLAの人類学の教授でもあるジェフ・ブランティンガム氏は、BBCの取材にそう語っている。

「プレッドポル」では、過去数年間に発生した犯罪の種別、場所、時間のデータを解析し、具体的な犯罪の発生を予測する。

予測結果は地図上に500平方フィート(46平方メートル)の色つきの四角いエリアで表示。赤の四角は、発生危険度が高いことを示しており、警察官は勤務時間の1割を、そのエリアの警戒にあてなければならない。

米国内で50を超す警察が「プレッドポル」を導入しており、英国でも導入され始めているという。

だが、「プレッドポル」の導入によって、かえって特定地域の犯罪・発生率・が上がり、住民への差別や偏見を助長することにつながる─そんな皮肉な問題点も指摘されている。

サンフランシスコの人権団体「ヒューマン・ライツ・データ・アナリシス・グループ(HRDAG)」は2016年10月、「プレッドポル」の予測精度に関する調査結果を公開した。

同グループは、カリフォルニア州オークランド市警察の麻薬摘発データをもとにして、「プレッドポル」に麻薬取引の発生予測を行わせた。さらに、公開されている統計データから、オークランド市内の各地域での麻薬使用者の分布を推計した。

「プレッドポル」の予測は特定地域に集中していたが、居住地近くで取引をするはずの麻薬使用者は、市内の広範囲に分布していた、という。

同グループは、「プレッドポル」の予測のもとになるデータは、犯罪発生そのもののデータではなくて、警察が犯罪発生を覚知したデータであることが、この食い違いの理由だ、と指摘する。

つまり、警察官が集中的に監視する地域は犯罪の覚知率が高くなり、発生予測も高くなる。するとより監視が強まり、さらに犯罪の覚知率は高くなる、という繰り返しになっているのだと。

そのような地域は、大半が低所得層や人種的マイノリティの居住地域だという。警戒の重点化と犯罪覚知率の上昇は、結果として地域住民へのバイアスを固定化することになってしまう、という指摘だ。

ユタ大学などの研究チームは、2017年6月に発表した論文で、この傾向を数理モデルによって証明。警察官が集中的に見回ることによって、特定地域の犯罪発生率の上昇と巡回の重点化が無限に繰り返される「暴走フィードバックループ」が起きる、と指摘している。

AIによる犯罪予測は、日本でも導入が進められている。

京都府警は2016年から、NECと共同開発した「予測型犯罪防御システム」を導入した。過去10年間に府内で起きた犯罪の、種類、場所、時間帯といったデータを分析。犯罪が起こりやすいエリアを数百メートル四方で予測し、警察署や交番のパトロールの重点地域としている。

神奈川県警は2018年2月、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年の試験運用開始を目指して、犯罪・交通事故発生予測システムの導入に乗り出す、と発表した。

また、警視庁も同年7月の隅田川花火大会で、AIを使った人数計測や移動予測の実証実験を行うなどの取り組みを進めている。

ただ米国の警察では、犯罪予測によるバイアスの固定化への懸念から、「プレッドポル」の採用を終了したり、見送ったりしたケースもある。

メディアサイト「マザーボード」によると、カリフォルニア州サンフランシスコ湾岸地域南部のミルピタス市警察は、2014年に「プレッドポル」との契約を解除。北部のリッチモンド市警察は2016年初めにやはり契約を解除している。また、サンフランシスコの対岸、オークランド市警察も2015年の予算で導入を検討したが、最終的に取りやめたという。

犯罪多発地域については、現状でも警察現場は把握している。一方、すでに紹介したように、AIによる犯罪予測は特定の住民への差別や偏見を助長する危険が指摘される。オークランド市警察などでは、それによる地域との信頼関係の悪化というデメリットを懸念したという。

犯罪防止と地域との信頼関係の悪化。そのトレードオフは、米国に限らず、日本でもついて回る課題だろう。

【no.335】「生成系AI」が業務の効率性を上げる–文書生成の自動化で創造力を拡張

「生成系AI」が業務の効率性を上げる–文書生成の自動化で創造力を拡張

オフィスでの文書作成は、IT化によってだいぶ楽になったものの、いまだに業務の中で負荷の大きい作業の一つかもしれない。その作業の全てをなくそうとしても無理な話だ。“言語化”は暗黙知を形式知に変化させるのに非常に有効な方法だし、コミュニケーションの基本は言語であるが故に、他人に情報を伝えるためにはやはり文書にする必要がある。それでもなお、文書作成の負荷軽減は重要な課題となっている。

そうした背景から、「生成系」と呼ばれる人工知能(AI)が注目を浴びている。文章、音楽、画像、動画など、何らかのメディアコンテンツを自動で生成するのが特徴。これを文書作成に応用する事例が増えてきている。

今後、生成系AIが業務に導入されるに従って、文書作成の負荷を大きく軽減し、創造的な業務により多くの時間を割けるようになるだろう。ここでは、生成系AIが業務に導入される未来を描きたいと思う。

認識系AIから生成系AIへ

現在のAIブームで最初に注目されたのが画像認識技術ではないだろうか。入力された画像に写っているものが何かを「認識」する技術だ。その後、顔認識や音声認識などの認識技術が注目されてきた。これらのAIを「認識系AI」と呼ぶことにする。

認識系AIが活躍するのは、大量のデータが生成され、それらのデータを瞬時に判別しなければならないような現場が多い。例えばIoTの領域では、現実世界の状況をデータで取得する際に、その意味を判断する機能として非常に重要なエンジンと位置付けられる。スマートファクトリーなどのインダストリー4.0の流れも、IoTと認識系AIの組み合わせが基本となっている。

近年それとは別に、データやコンテンツを自動で生成するAIが注目されている。面白い事例としては、まるで実在するようなアイドルの顔画像を自動生成するAIが記憶に新しい。このようなAIを「生成系AI」と呼ぶことにする。

今では、画像だけでなく、音楽や動画の生成系AIも生まれている。ちなみに筆者は、音楽を対象とした生成系AI、具体的には楽曲を自動で生成するAIの研究を進めている。

生成系AIは人間が詳細を指定しなくても、現実にあり得そうなコンテンツを自動生成することから、創造性を生かす現場においてパラダイムシフトになる可能性がある。今後は、生成系AIが生み出すものを選択・編集しながら、より高次の創造性を発揮して作品を仕上げていく必要があるだろう。また、人間の創造力を生かすためには、生成系AIと協調していかなくてはならない。

ニュース記事を生み出す生成系AI

さらに、ここ数年で記事執筆に生成系AIを利用する事例が生まれてきている。The Washington Postは、2016年のリオデジャネイロ五輪において、報道の一部に「Heliograf」と呼ばれるAIを使っていたことを明らかにしている。試合の結果や日程を伝える短文記事を自動で生成していたのだ。

こうした生成系AIの利用は、人間の記者や編集者を置き換えるものではない。結果速報や試合日程といった定型の記事を公開する手間を省くことで、詳細な解説や分析のある記事を執筆する時間を作り出し、その創造性を生かすことを目的としている。

日本でも、例えば、日本経済新聞社、言語理解研究所、東京大学松尾研究室が共同研究を進め、完全自動の「決算サマリー」をリリースしている。これは、上場企業が発表する決算データを記事化し、配信するサービスである。「日本経済新聞 電子版」や「日経テレコン」などでコンテンツを公開している。

また中部経済新聞は、2016年に創刊70周年を迎えるに当たり、AIが生成した記念記事を掲載している。このAIはデータセクションが技術提供を行っている。

こうした流れの中で、生成系AIの精度が飛躍的に向上してきたという話もある。AIを研究する非営利団体のOpenAIが「GPT2」と呼ばれる文章自動生成システムを開発した。ところが、GPT2は非常に優れているため、悪用された場合のリスクを鑑みて、技術的な詳細の論文公開を延期している。実際の性能はこちらの動画で公開されている。Brexitに関する記事を作成するに当たり、人間が最初の数行を入力するだけで、あとはGPT2が文章を自動生成してくれるのだ。

もちろん、こうした技術が悪用されればフェイクニュースや情報操作のまん延など、社会に大きなダメージを与えるものになるかもしれない。一方で、これらの技術を日常の業務や生活に応用することができれば、非常に効果的なツールになっていくだろう。

【no.334】AIを使えば、「農業こそ休日」が現実になる

AIを使えば、「農業こそ休日」が現実になる

「働き方改革」は決してオフィスにいるホワイトカラーだけのものではない――。

横浜市青葉区で農業を営む金子栄治さん。2018年7月からミニトマトの栽培を始めた。これまで10年間ほどイチゴを作っていたが、2011年の東日本大震災を機に、さまざまな経験を積もうといったん休止。農業指導でタイへ出かけたりもした。

ミニトマトで農業を再開するにあたり、金子さんがビニールハウスに導入したのが「ゼロアグリ」だ。ゼロアグリとは、土の中に張り巡らした点滴チューブから、水や肥料を自動的に供給する土壌環境制御システム。ハウス内に設置した各種センサーの情報を基に、AI(人工知能)が最適量を判断し、供給してくれる。現状確認や設定変更はパソコンやタブレット、スマホからでも可能だ。

毎日1時間の水やりが1週間で30分に激減

「農業では水やりが重要だが、とても手間のかかる作業。イチゴのときは、水やりの後でテンシオメーターを使って、土中の水分量を確認していた。それをゼロアグリでは自動でやってくれるので助かっている」(金子さん)

ゼロアグリの導入で、水やりの作業が格段に楽になった(金子さんのビニールハウス。撮影:今祥雄)

金子さんの場合、障がい者雇用にも積極的に取り組んでいる。水やりで中断されることがないため、障がい者への指導にも集中できる。ミニトマトは初めて手がけた作物だが、収穫・出荷も順調とのことだ。

ゼロアグリはネットワーク関連機器から農業IT分野に進出したベンチャー、ルートレック・ネットワークスが開発したもの。そのキャッチコピーは「農業に休日を!」だ。

あるトマト農家に導入した結果によれば、ゼロアグリによって、今まで1日1時間かけていた水やりや施肥の作業が1週間に30分間で済むようになった。人手がかからなくなったことから、栽培面積を3倍に増やすことができたという。単位面積当たりの収穫量についても、従来の慣行的な農業に比べて27%アップした実績がある。

農業のIT化、自動化というと、植物工場やハイスペックな鉄骨ハウスが思い浮かぶ。が、「ゼロアグリのターゲットは日本の施設園芸の大半を占める一般的なパイプハウス」(佐々木伸一社長)。そこではデジタル化がまだ進んでいないため、市場開拓の余地が大きいとの判断からだ。

自然相手の仕事なので、片時も目が離せず、一年中休みがない――。そうした従来の農業のイメージを覆そうとするゼロアグリ。まさに農業の「働き方改革」への挑戦だろう。

【no.333】コレ1枚で分かる「人工知能(AI)とロボット」 (1/2)

コレ1枚で分かる「人工知能(AI)とロボット」 (1/2)

AIやロボットとは?

「人間の知的能力を機械で置き換えよう」という技術が本格的な普及期を迎えつつあります。「人工知能(AI:Artificial Intelligence)」と呼ばれるこの技術は、もはやSF世界の夢物語ではなく、私たちの日常にさまざまな恩恵をもたらしつつあります。

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「人工知能(AI)」という言葉には、さまざまな解釈があるものの、おおむね「人間が行う知的な作業をソフトウェアで実現する技術」を意味しています。その範囲は広く、音声をテキストに置き換える「音声認識」、画像に何が描かれているかを解釈する「画像認識」、大量のデータの中から規則性や関係性を発見する「機械学習」などがあり、それらを応用した技術も含まれます。昨今では、AIを搭載した「ロボット」も登場しています。

ロボットは、これまでさまざまな用途で活用されてきました。例えば、次のようなケースが挙げられます。

  • 工場でものづくりに使われてきた産業用ロボット
  • 倉庫で貨物を移送するための搬送ロボット
  • 宇宙ステーションの船外活動を助けるロボットアーム

これらのロボットは、人間が作ったプログラム通りに動くものや、人間が遠隔操作するものなど、知的処理の部分は人間が担っていました。ロボットにAIを搭載すると、自ら周囲の状況を捉え、どのように行動すべきかを判定して動作する機械へと進化します。この2つのロボットは区別され、前者は「自動化(Automation)」、後者は「自律化(Autonomy)」と呼ばれます。

ロボットには、「bot」と呼ばれる機械の身体を持たないソフトウェアだけのものもあります。botは人に代わって作業を行うコンピュータプログラムのことを指し、登場した当初は、次のような単純作業を行うのが一般的でした。

  • Webサイトを巡回して情報を収集する
  • 用意されたメッセージを指定した時間にソーシャルメディアに発信する
  • オンラインゲームで一定の動作を自動で繰り返し行う

最近ではAIの技術を組み合わせたbotが登場しています。

  • 音声を理解して自然な対話で応対する
  • 曖昧な指示からその人のやりたいことを推察する
  • 機器やソフトウェアの操作、検索や要約などの知的作業を代替する

【no.332】 AIが就職面接で表情を読み取るロボット採用がやってくる

AIが就職面接で表情を読み取るロボット採用がやってくる

リモートワークがこれまで以上に一般的になって来ているので、リモート面接もそれに応じて必要になって来ている。しかし、そのような手段を通したときに、どのように相手を真に評価することができるのだろうか?また、単純に全ての候補者に面接を行う時間がないために、素晴らしい候補者を見逃してしまうことはよくあることだ。

これまでも、この問題に挑み解決しようとする多くのスタートアップが登場してきた。9300万ドルを調達したHireVueは、AI駆動式の「雇用インテリジェンス」プラットフォームで、問題に対処しようとしている。1900万ドルを調達したAllyOは、採用につながっていなかったこれまでの貧弱な候補者とのやり取りアプローチすることで、採用をより効率的なものにしようとしている。そしてAryaは、成功した採用パターンを識別するために機械学習を使用し、オンラインプロファイルから可能性のある候補者を選び出すことを狙う、シードステージのスタートアップだ。

そしてさらに他のプレイヤーは、採用プロセスにアルゴリズムを適用している。

顔認識と音声認識を使用して、求職者を自動的にスクリーニングするVCV.AIは、このたび170万ドルを調達したばかりだ。そう、それはまるでディストピアSFであるブラック・ミラーの新しいエピソードがやって来たかのように見える。

この投資は、日本のVCであるWill Group、Talent Equity Ventures、500 Starups、そしてIndeedの竹嶋正洋氏を含むエンジェル投資家たちから行われた。今回の資金によって、VCVはさらなる技術開発を行い、その地位を強化する。さらに東京にオフィスをオープンすることも予定されている。

VCVによれば、候補者の事前スクリーニング、自動スクリーニングコール、音声認識とビデオ録画によるロボットビデオインタビューを実施することで、採用プロセスから人間によるバイアスを取り除くことができるようになると言う。

VCVを通じて、潜在的な候補者たちは、コンピューターまたはスマートフォン(iOSまたはAndroid)を使用してビデオを録画することができる。受験者は事前に質問に備えることができないため、これは実際の面接のように機能する。さらに、顔認識および音声認識を使って、候補者の緊張度、雰囲気、そして振舞いのパターンを特定することで、採用者側はその人物が企業の文化になじめるかどうかを判断することができる。

VCVは、これは採用担当者の仕事に取って代わるものではなく、手持ちのツールを強化して、担当者がより効率的に多数の候補者を見つけて選別できるようにするものだと言う。スタートアップによれば、この休むことなく潜在的な候補者を探し、チャットし、インタビューする採用ロボットを使うことで、これまで平均21時間かかっていたスクリーニング作業が45分で済むようになるという。

既にPWC、L’Oreal、Danone、Mars、Schlumberger、そしてCitibankが、同社のシステムを顧客として利用している。

VCV.AIの創業者でCEOのアリク・アクバーディアン(Arik Akverdian)氏は「AIを使うことで採用プロセスを改善し合理化することができます。同時に全ての人間が持っている避けることのできないバイアスを取り除くことも支援できます。特に人間の才能が、組織の最も重要な資産であることを考えると、技術革新がこの分野のビジネスを変革してはならない理由はありません」と語る。

採用のすべてがAIを通して行われるようになったとき、私たちはそのバイアスがどのように影響していたのかを知ることになるだろう…。

【no.331】中国は2020年に米国と並ぶAI大国になる? トップクラスの研究で高まる存在感

中国は2020年に米国と並ぶAI大国になる? トップクラスの研究で高まる存在感

人工知能AI)の技術水準を2020年までに世界レヴェルにする──。中国政府が2017年に掲げた目標に向けて着実に歩を進めていることが、アレン人工知能研究所の調査から明らかになった。中国のAI論文数は勢いを増しており、上位10パーセントに占める中国の比率が20年に米国に並ぶことが予想されるという。こうした状況から見えてくるのは、AI研究にかける中国政府の強い意気込みだ

PHOTO: RATNAKORN PIYASIRISOROST/GETTY IMAGES

世界最高峰のコンピューターヴィジョン学会が2018年6月に開かれ、ある研究コンテストが実施された。コンテストで出された課題は、ふたつのカメラが異なる条件下において(例えば晴れた日と悪天候の日に)撮影した画像を解析するものだった。

このコンテストは、グーグルとアップルがスポンサーを務めていた。両社は、こうした作業を得意とする人工知能AI)ソフトウェアを利用して、自律走行車や拡張現実(AR)などの利益につながるプロジェクトを発展させようと考えていたのだ。

ところがコンテストに優勝したのは、まったく異なる目的と任務をもつ研究機関だった。中国人民解放軍の高等軍事教育機関である国防科技大学だったのだ。

トップクラスの研究でも米国に迫る中国

この一件は、AIに賭ける中国の野望と、この分野における中国の台頭を端的に示している。中国政府は17年に「次世代AI発展計画」を発表し、極めて重要な技術分野において20年までに米国と肩を並べると宣言した。米国と中国のAI研究動向に関する最新データを見る限り、中国はこの目標に迫っている。

ここ数年、中国の研究者によるAI論文数は米国の研究者のそれを上回っているが、研究の質と影響力を疑問視する声もあった。ところが、アレン人工知能研究所の新たな調査によると、AI分野のトップクラスの研究成果に絞っても、中国のシェアが急速に米国に近づいていることがわかった。

現在のペースでいけば、AIに関する主要学術文献に占める中国と米国の割合は、20年までに等しくなるだろう。

アレン人工知能研究所は文献検索エンジン「Semantic Scholar」を利用して、18年末までに刊行されたAIに関する研究論文200万本以上を集めて分析した。米国と中国のAI研究成果を比較したところ、新興AI研究大国としての中国の台頭が、17年に国家戦略が発表されるはるか以前から始まっていたことが明らかになった。Semantic Scholarのデータによると、05年以降、中国のAI論文数は一貫して米国を上回ってきた。

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宣言の通りに20年に米国に並ぶ?

この傾向は以前から知られており、オバマ政権下でまとめられたAI研究における米国の競争力に関する報告書でも指摘されている。一方、中国の研究機関は粗悪な論文や捏造論文が多いことでも知られているため、こうしたデータに懐疑的な見方もあった。

しかし、ほかの研究論文への引用数が多い論文に限って分析しても、米国のリードは圧倒的とは言えなかった。18年末までのデータを基に分析すると、上位10パーセントのAI研究論文に占める中国の割合は、20年に米国に並ぶことが予想される。これはまさに、中国政府がAI技術で米国に並ぶと宣言した年だ。

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【no.330】AIで顔や広告を自動生成――サイバーエージェントは学習データをどのように集めたか? (1/2)

AIで顔や広告を自動生成――サイバーエージェントは学習データをどのように集めたか? (1/2)

広告事業を展開するサイバーエージェントは、「細分化が進むターゲティング対象に合わせて大量の広告を作成しなければならない」という課題に対し、バナー画像などの広告をAIで大量生成したり、広告に必要な人物画像を自動生成したりして乗り越えようとしている。

“おいしいデータ”で、成果が出るAIモデルを育てる」第3回は、2019年3月に開催された「SIX 2019」において、サイバーエージェントでインターネット広告事業本部の毛利真崇氏が講演した内容を、要約してお伝えする。

AIモデル開発に利用したいデータが社内に散在

現在、さまざまなサービスで、ユーザーのプロフィールやニーズに合わせた広告を配信する「ターゲティング」が用いられている。検索履歴や位置情報、購買履歴などの個人データを用いたターゲティングの細分化も進んでいる。

サイバーエージェント インターネット広告事業本部 セントラルアカウントデザイン室 & クリエイティブAICG研究所 責任者 毛利真崇氏サイバーエージェント インターネット広告事業本部 セントラルアカウントデザイン室 & クリエイティブAICG研究所 責任者 毛利真崇氏

「従来の広告は、全ユーザーに対して同じ広告を配信していた。しかし、ターゲティング手法の登場と細分化で、ターゲットに合わせて配信する広告を変えるのが当たり前になった。その結果、多くの広告を作成する必要が出てきた」

サイバーエージェントでは、広告作成に必要な画像収集システムを内製して3カ月間に約10万本の広告を作成している。それでも、広告の制作時間の不足に悩まされているという。

そこでサイバーエージェントのクリエイティブAI研究所では、今まで制作してきた広告を学習データにして、広告を自動生成するAIモデルの開発に取り組んでいる。しかし、開発には2つの課題があった。

1つ目は、広告を自動で生成するAIモデルを開発しようとしても、開発に必要なデータが社内に散在していたことだ。社内で働くクリエイターが「広告の素材」「広告の制作、編集データ」を持っていたり、コンサルタントや営業が「広告効果レポート」を持っていたり、1カ所にデータを集められていなかった。

2つ目は、広告の制作データが複雑なことだ。社内では広告を「Adobe Photoshop」を用いて制作し、PSD形式で保存している。PSD形式では文字や画像などのデータをレイヤーごとに管理する。そのため、PSDデータの中に、広告で使っていない編集途中のデータが含まれている場合がある。そのようなPSDデータを学習に利用すると、AIモデルが、編集途中の広告を生成する可能性があった。

そこで、AI開発のために必要なデータを集約して、学習できるデータに変換するためだけの専門部署「データクレンジンググループ」を発足。広告の素材と効果をひも付けるためのデータ基盤の開発や、不必要な制作データを削除したPSDデータと広告画像をひも付けてデータベースに格納する作業を行い、研究者やAIエンジニアがそれらのデータを活用して開発できる環境を整備したという。

「データクレンジンググループによるデータ集約作業の結果、広告素材と広告効果のデータがつながった。どのような広告素材を使ってどれくらいの広告効果があったのかということが分かるようになったので、今後、価値のある広告を自動生成できるAIモデルの開発が行えるだろう」

【no.329】ファーウェイ、子どもの視力障がいをスマホのAIで早期発見へ–生後6カ月から診断

ファーウェイ、子どもの視力障がいをスマホのAIで早期発見へ–生後6カ月から診断

Huawei Technologies(ファーウェイ)は、子どもの視力障がいを早い段階で見つけるため、ノートPCとスマートフォンを組み合わせた「Track AI」システムの開発に取り組んでいる。専門家でないと判断が困難な視力障がいの早期発見を支援する。

専門家でないと判断が困難な視力障がいの早期発見(出典:ファーウェイ)
専門家でないと判断が困難な視力障がいの早期発見(出典:ファーウェイ)

子どもの視力障がいは、悪化すると全般的な発達、教育や社会参加の機会に深刻な影響を及ぼしてしまう。ただし、障がいの初期兆候を検知して早い段階から対処すれば、予防や治癒が可能な割合は高いそうだ。そこでファーウェイは、視力障がいの早期発見に人工知能(AI)システムを活用する。

視力障がいを持つ子どもは何かを見る際、特徴的な凝視パターンが現れるという。そこでまず、さまざまな視覚機能を試験できるよう設計した視覚刺激を被験者に見せ、両目の視線を2in1型ノートPC「HUAWEI MateBook E」上の「DIVE(Devices for an Integral Visual Examination)」ソフトウエアで追跡する。こうして得た凝視パターンのデータをスマートフォン「HUAWEI P30」を処理し、視力障がいの疑いがあるかどうか判定させる。

凝視パターンデータは、医療従事者でも専門家でないと意味の解釈が困難だという。ファーウェイは、AI技術を活用し、学習させて健常でない凝視パターンの発見を試みている。最終的には、生後6カ月ほどの子どもからの検査に、研修なしで使える診断補助システムとして提供したい考え。

スマホ上のAIで診断を支援(出典:ファーウェイ)
スマホ上のAIで診断を支援(出典:ファーウェイ)

システムは携行可能で、オフライン環境でも使用でき、データをリアルタイム受信するため、世界各地で迅速な診断に役立てられるとしている。

現在は、学習用データを中国、メキシコ、アラブ首長国連邦(UAE)、スペイン、英国で収集中。十分なデータを集めてから学習を実施し、2019年中にプロトタイプの試験運用を始め、2020年に本格展開する計画。