【no.288】AIが歯周病リスクを予測、口腔疾患の早期発見に ドコモと東北大

AIが歯周病リスクを予測、口腔疾患の早期発見に ドコモと東北大

NTTドコモと東北大学は2月21日、スマートフォンで撮影した歯茎の画像から歯周病を発見するAI(人工知能)の共同研究を開始すると発表した。2022年度までに商用化を目指す。

東北大学大学院の佐々木啓一教授(歯学研究科長)(左)とNTTドコモ先進技術研究所の滝田亘所長(右)

スマホアプリを使って歯茎の写真を解析。歯茎の色や形状などの特徴から、AIが歯周病と考えられる部位を見つけ、歯周病リスクをユーザーに通知するという。

利用者がスマホを使って気軽に歯周病のリスクを把握できる一方で、歯科医師は患者とのコミュニケーションの接点になったり、往診で持ち運ぶべき器具が減ったりするといったメリットがあるとしている。

本プロジェクトは、東北大学大学院の佐々木啓一教授(歯学研究科長)に、ドコモがAIによる画像・動画診断技術の活用を持ちかけたことで実現した。

東北大学が持つ歯周病の知見や画像などの症例データを基に、歯周病のリスクを予測する機械学習モデルを作成。現時点での認識精度は「理想的な条件で8割程度」としているが、一般ユーザーに自身のスマホで撮影してもらうシーンを考慮すると、環境光や顔の角度の違い、手ブレの影響など認識上の課題も多い。

東北大学が持つ歯周病の知見や画像などの症例データを基に、歯周病のリスクを予測する機械学習モデル

これら課題については、今後機械学習の改善やサンプル数の増加、ディープラーニング(深層学習)などで一般的な環境での認識精度を上げたいとしている。

アプリをどのような形で提供するかは「全く未定」(NTTドコモ先進技術研究所の滝田亘所長)という。

「今のところ考えられるのは、法人向けの診断に取り入れてもらうことや、歯科医師への提供など。逆にユーザーから毎月お金をいただくようなことはあまり考えていない」(滝田所長)

AIが発見する口腔疾患としては歯周病の他、顎関節症や口腔がんも見つけられるよう研究を進めていく。

歯周病の他、顎関節症や口腔がんも見つけられるよう研究を進めていく

健康アプリか、医療機器か

佐々木教授は「厚生労働省と相談しながら研究を進めている」と話す。歯周病発見AIのアプリが、単なる「健康アプリ」なのか、それとも「医療機器(ソフトウェア)」に当たるものなのか、判断が難しいからだ。

「ユーザーに使ってもらって、自分の中で受診するかどうかを判断する1つのツールということであれば、これは健康アプリであって医療機器ではない」(佐々木教授)

滝田所長は「従来の枠組みであれば、スマホ自体が医療機器という定義はありえない。ここに疾病のリスクを推定する機能を入れるとどうなるか。自分で使う分には医療機器にはならない。しかしこれを医療機関とつないでやりとりをした瞬間に医療機器となるであろうという議論がある」とし、AIを用いた画像診断は従来の医療機器の枠組みに収まらず、法的に十分な整備がないと説明する。

「新しいタイプの医療の形は実際に実例を積み上げ、関係官庁とよくコミュニケーションを取り、医療機器の境界を定めていかないといけない」(滝田所長)

佐々木教授も「今までのカテゴリーにないものだと思う。(法的にグレーだとしても)初めから厚労省と相談しながら進めているという点で、本気度を見てもらえたら」と意気込みを語った。

【no.287】顔認識AIと4Kサイネージ、ゲートを組み合わせた世界初の無人受付「AI受付嬢ゲート」をレッツが発売

顔認識AIと4Kサイネージ、ゲートを組み合わせた世界初の無人受付「AI受付嬢ゲート」をレッツが発売

レッツコーポレーションは2019年2月20日、新製品発表会を開催し、AIを搭載した無人受付システム「AI受付嬢ゲート」を発表した。発売は3月を予定している。

AI受付嬢ゲートはタッチパネルモニター、顔認識用カメラ、電話呼び出し装置、USBハブ、名刺スキャナー、受付用電話機、非接触式ICカード、ゲート専用ソフトウェアとその他付属品で構成されている。同社の調べによると、AIと顔認識技術、4Kデジタルサイネージとセキュリティゲートを組み合わせた受付システムは世界初だという。

訪問者は、初回訪問時に名刺をスキャンして、顔認識メラが付いたタッチパネルから担当者の電話を呼び出せる。その後は担当者の操作でゲートが開閉する。

2回目以降はカメラの前に立つと、AIが登録された顔写真から以前に訪れた人物かを判定。初回で登録していると自動でゲートが開き、入場できる。

また、タッチパネルはカメラの前に人がいない時は4Kデジタルサイネージとしてコンテンツを配信でき、自社のPRなどに活用することができるという。価格はオープンで、参考価格が198万円としている。

 
 AI受付嬢ゲートの全体
 
 初回訪問時に登録するときの様子
2回目以降はカメラの前に立つだけでよい
 管理画面の様子

【no.286】AIでアニメキャラを自動彩色

AIでアニメキャラを自動彩色

良先端科学技術大学院大(生駒市)の久保尋之助教(情報科学)らの研究チームは、人工知能AI)でアニメのキャラクターを自動彩色する技術をアニメ製作会社と共同開発した。AIに同一キャラクターの画像1000コマ前後を深層学習させ、胴体や目、ほおの赤みなどを線画から認識できるようにして色付けさせる。アニメ業界の人手不足は深刻化しており、AIで製作を支援するシステムの構築を目指している。【大川泰弘】

研究では、製作会社の協力で人気アニメに登場するキャラクターを利用。キャラクターが単独で描かれた画像や彩色前の線画を利用し、AIの深層学習に役立てたという。実際のアニメは、例えば胴体などを3色の同系色で描いて陰影をつけるが、今回は同一領域は同一色にしてハードルを下げた。このため彩色はやや単純化されている。

また、キャラクターごとに深層学習する必要があり、それぞれ多数のデータが必要。登場する場面の少ないキャラクターでは困難だが、レギュラー出演しているキャラクターなら可能性が高くなる。

アニメ大国の日本だが、アニメーターの低賃金や働き方改革が課題になっており、生産効率の向上が求められている。久保助教は「色を塗る作業は仕様書に従って行われており、創造性があまり要らない。こうした作業はAIに任せ、アニメーターはより創造力が必要な仕事に力を傾注できるようにしたい」と話している。

【no.285】AI駆動で始まる新たなマーケティングスタイル。AIがマーケティングにもたらす価値

AI駆動で始まる新たなマーケティングスタイル。AIがマーケティングにもたらす価値

昨今、データ解析ツールやマーケティングオートメーションツール(以下:MAツール)などにより浸透が進み、従来マーケターが抱えていた課題を多く解決する、データドリブンなマーケティング。

一方で、データドリブンマーケティングが浸透し、成果を出し続けることで「データに基づいた業務判断の回数が際限なく増えていく」という課題も新たに生まれてきます。

そこで注目されているのが、AIをマーケティングに活用する「AIドリブンマーケティング」。そして、AIドリブンマーケティングをさらに加速させるであろうビッグニュースが飛び込んできました。

こちらです。

「マーケティングオートメーションツール Marketo と、機械学習の予測モデルの作成を自動化するプラットフォーム DataRobot が連携し、Marketo内のデータを利用して、機械学習モデルを作成したり、DataRobotで作成された学習モデルをMarketoで利用することができるようになる参考記事:マルケト × AIでマーケティングが変わる。DataRobotの機械学習モデルが利用可能に

Marketoといえば、MAツールとしてかなりのシェアを誇り、データドリブンマーケティングを進めてきたマーケターの必需品。そしてDataRobotは、AIの民主化を掲げ、AIに関して深い専門性がなくてもAIのビジネス実装が可能なプラットフォームです。

この二つが連携するとなると、マーケティング設計時の考え方にも大きな変化が起こります。連携の立役者となった3人に、AIがもたらすマーケティングの価値を聞いてきました。AI × マーケティングの価値は「繰り返し発生する業務判断の自動化」

――マーケティングの最先端にいる3人方に、ずばり聞きたいのですが、マーケティング領域でのAIの価値は何でしょうか?

――石野
「結論から言うと、マーケティングにおけるAIの価値は『繰り返し発生する業務判断』を自動化できることだと考えています。マーケターはどんな施策を打つにしても、常にデータに基づいた判断をしており、今のマーケターにとってデータは不可欠です。たとえば、顧客のスコアリングでは、

  • 今まで開封したメールの数
  • 役職
  • デモの申し込みや資料ダウンロードの回数

などのデータを分析し、期待行動をしてくれた顧客似ている顧客のスコアを高く評価するといったプロセスがありますが、AIを組み合わせることでより精度の高い優先順位付けをすることができます」

――有益
「スコアリングの次のステップとして

  • ほかにも重要な指標がありそう
  • スコアの高い人には、どんなクリエイティブが刺さるのだろうか
  • このスコアリング手法を踏襲しつつ、しきい値を変えて、別セグメントでも適用してみよう

といったことを洗い出し、上記のような施策を何度も繰り返し打っていきます」

――石野
「何度も繰り返したり、別のものに展開するフェーズになると、タスク量が多くなり、正直管理しきれなくなってきます。そこからが、AIの出番です」

――中野
「繰り返しのなかで、少しずつ変化が起こっていくような業務でもAIは活用できます。たとえば、ウェブのユーザー行動に基づいたスコアリングモデルでは、時間が経ってウェブサイトの新しいコンテンツが増えるにつれモデルをアップデートする必要があります。最新のデータでモデルを生成することで、時間をかけずに現状に即したモデルでスコアリングして施策が可能です。

アクションが繰り返されてデータが貯まってくるフェーズになればなるほど、AIの強みが活きてきて、活用方法は多岐にわたり、その効果は絶大です」

データドリブンマーケティングが浸透し、施策の再現性が高まる一方で、データ分析タスクが増加し、データに基づく業務判断が増えていきます。

AIを活用することで、繰り返し発生する業務判断を過去データから自動的に行うことができる、そこに大きな価値がある、ということですね。

対談は、AIによって生まれる新たな価値について、さらに盛り上がっていきます。

AIはマーケティングのすべての領域に使える

――マーケティング × AIに、とても可能性を感じますが、具体的にマーケティングのどの部分でAIは使えるのでしょうか?

――有益
「“データを扱うところにAIあり”で、データを扱うすべての領域で使えると思っています。例に挙げたスコアリングでは、既に成果も出ていますし、KPIツリーの作成をしているところもあります。

  • セグメンテーション
  • LTV予測
  • 時系列データの予測

など、AIが使えるところを出し始めたらきりがないですね」

――石野
「特にMarketoやSFAツールを既に活用していれば、ある程度きれいな形でデータが蓄積されていると思いますので、ある程度のデータ量があればすぐにでも活用できる余地があるのではないでしょうか」

AIでスコアリングなどが自動化できれば、人はコンテンツやクリエイティブなところに集中することができます。その結果、サービスの質が向上し、顧客の体験も良くなる。この好循環が、さらなる効果を生むそうです。

AIドリブンマーケティングを広めるために、MarketoとDataRobotの連携は必須だと思った

――今回の連携の経緯を教えていただけますか?

――石野
「AIが活用できれば、マーケティングでより成果を出せるとは感じていたものの、活用するためには、多くの専門スキルや高度な技術力が必要で、敷居が高く踏み出せずにいました。そんな中『学習データセットさえ準備すれば、精度の高い学習モデルを自動で作ってくれるDataRobotというサービスがある』と、有益さんに伺ったんです。

マーケティングでのAI活用のために、DataRobotとの連携は必須だと思い、お声がけさせていただきました」

――中野
「DataRobotは『機械学習の民主化』を掲げていて、統計やプログラミングの専門的な知識なしに機械学習モデルが作れるプラットフォームです。DataRobotは単にモデルを生成するだけでなく、そのモデルを実装するところまで自動化しています。簡単に生成したモデルをREST API化して、MarketoのWebhook機能を使って連携できます。

またマーケティングでは精度が良いだけでなく、モデルが理解できることが重要です。DataRobotでは解釈可能性に注力して開発しており、機械学習がグレーボックス化されています。どのような変数が予測に影響が大きいのか、一件一件がなぜそのように予測されるかも説明できます。

これらのあらゆる要素から、マーケティングにおける『機械学習の民主化』を進めるものになると判断し、Marketoとの連携を決めました」

――石野
「今って、バズワードとしてAIという言葉が使われていたりすることが多いですが、事例に基づいた地に足の着いた連携リリースを出したかったんですよね。なので、しっかりと成果を出してからリリースを出そうとDataRobotさんと話し、連携を実現してから理リリースまでお客様のもとで事例構築をしておりました」

スコアリングルールを顧客属性やセグメントごとに膨大な時間をかけて手動で策定していたところを、AIによって高精度なスコアリングルールを短時間で自動策定できるようになったと、石野氏。

データから判断することはAIに任せ、人は新しいことをやればいい

――AIが一部業務を代替し、人が他の業務に充てられる時間が増えたとき、何に注力すればよいと考えていますか?

――有益
前例のないことや、ブランドのような合理性だけで判断できないことですね。今まで行なってきた試行錯誤から生まれた成功事例は、ベストプラクティスの塊です。データから判断できることは、AIに任せてしまって、人はデータから判断できないことに取り組むべきだと思います」

【no.284】神戸市、AI利用したレセプトチェック効率化実証

神戸市、AI利用したレセプトチェック効率化実証

神戸市は2月15日、レセプト(診療報酬明細書)のチェック業務の効率化のため、FlyDataのAI(人工知能)技術を導入して2018年7月2日から2019年1月31日まで行った実証実験・効果検証の成果を発表した。これによると、正解候補リスト内に正解を含む場合は他システムによる番号検索など従来行っていた確認作業が不要になり、約70%の作業時間が削減できたという。

  • レセプトデータ処理のイメージ

子供への医療費の助成制度などを運用する同市国保年金医療課では、医療機関が送付するレセプト(診療報酬明細書)の請求に基づき、毎月20万件の診療に対する助成を行っている。

【関連】毎月20万件の確認業務、神戸市がRPA業務効率化実証実験で93%の時間削減 >>

【関連】富士通研究所、CT画像をもとにAIで立体的な異常陰影の類似性を確認する技術 >>

しかし、請求の中には受給者番号が誤っているものなど多様な間違い(エラー)が含まれており、そのエラーのチェック業務に多大な時間がかかり、職員の負担になっている。

同プロジェクトでは、職員が行っているチェック作業を整理・分析したうえで、ツールを構築し、チェック業務の効率化・短縮化を目的に実証実験を行った。

【no.283】わずか10秒 AIがブランド品鑑定 「コメ兵」が今春導入へ

わずか10秒 AIがブランド品鑑定 「コメ兵」が今春導入へ

本物か偽物か、AIが瞬時に判断する。

中古品販売の「コメ兵」が14日に発表したのは、ブランド品買い取りの際のAI活用。

マイクロスコープを使って商品の数カ所を撮影すると、通常数分かかる作業が、わずか10秒で判定可能に。

このAIによる目利きは、2018年4月から技術開発を進め、現在は高級ブランド「ルイ・ヴィトン」のバッグや財布を97%以上の精度で見極めができるという。

年間140万点の商品を買い取る「コメ兵」では、その豊富な鑑定データをAIに蓄積。

これまでプロ頼みだった鑑定作業をAI力で負担を減らし、より接客など顧客サービスに時間をかけたい考え。

このAI鑑定は、2019年の春から、愛知・名古屋市の本店で試験導入される予定。

【no.282】「国民の1%がAIの訓練を受ける」フィンランドの壮大な実験が目指す「ニッチな目標」とは?

 

フィンランドでは、政府・大学・民間企業が一丸となって人々に無料で「国民にAI教育を行う」という計画に取り組んでいます。この計画の目標は「AIの専門家や技術者を生み出す」ことではなく、AI教育を受ける人々はプログラミングや機械学習の知識を持たないとのこと。アメリカや中国のAI開発競争に入るのではない、フィンランドのAI教育は独自路線をいく非常にユニークなものとなっています。

Finland’s grand AI experiment – POLITICO
https://www.politico.eu/article/finland-one-percent-ai-artificial-intelligence-courses-learning-training/


フィンランドの「1パーセントAI計画」は、国民の1%、つまり5万5000人に対して無料のAI教育を行うことからスタートし、その後数年かけて教育を施す人の数をどんどん増やしていこうというもの。この計画の興味深いところは、無料で提供されるAI教育はAI技術者や専門家を育てることを目的としているわけではなく、「機械学習」「ニューラルネットワーク」といった言葉すら知らなかった一般の人々に対して「AIの高度な応用」について教えることが目的です。

AI開発競争はアメリカと中国の間で激しさを増しています。フィンランドの1パーセントAI計画は、アメリカや中国と競うことを意図するものではなく、もっとニッチな狙いであるとのこと。フィンランドのMika Lintilä経済大臣が「私たちは人工知能分野のリーダーとなるだけのお金がありません。しかし、人工知能を使うことについてであれば話は別です」と語るように、フィンランドの目的は「AIの実用的な応用」でリーダーに立つことにあります。

たとえば、1パーセントAI計画に参加している59歳の歯科医であるJaana Partanenさんは、数年前までAIについて全く知識を持ちませんでした。Partanenさんは2019年時点で、毎夜にコーディングの基礎について学んでおり、今後自分の仕事でAIを活用してくことを考えています。

1パーセントAI計画はもともと、ヘルシンキ大学のコンピューター科学部とスタートアップのReaktorが提供していた「Elements of AI」というオンラインコースの1つでした。ヘルシンキ大学のコンピューター科学者のTeemu Roos氏によると、無料コースはもともと「民主主義を支援する」ために2018年5月に開始したものとのこと。

A free online introduction to artificial intelligence for non-experts
https://www.elementsofai.com/


コースは最先端をいく開発者を対象とするものではなく、コーディングの技術がない人でもAIについて学べるというもの。コンピューター科学に縁がなかった人に対し、AIによって生まれる可能性、あるいはリスクについて教えることで、一般の人々でも政府の投資先や自分にメリットのある選択が何かという判断を行えるようになることを目標にしていました。「一般人向けのコースを作り出すには助けがいる」と判断したRoos氏はReaktorと協力し、プログラミングを排除したオンラインコース「Introduction to AI」を作成したとのこと。

Roos氏やReaktorは「せっかくコースを作成しても認知されなければ無意味だ」と考え、フィンランドの大企業の雇用者にコースへの参加を求めるプロモーションを行いました。「2018年末までにフィンランド国民の1パーセントがAI教育される」と発表されたのも、この時です。

2018年12月半ばまでに250社がこの「AIチャレンジ」への参加を発表しており、携帯電話キャリアであるElisaやNokiaは全社員に対して、製紙業者のStora Ensoは社員のうち1000人にコースを受けさせると述べています。この結果、目標までは及ばなかったものの、1万500人以上がコースに参加しており、そのうち6300人以上がフィンランド国民となっています。

AIチャレンジが活発になると政府も注目し、外務省や税務当局の職員もコースを受けることになりました。2018年9月に行われたコース初の卒業セレモニーにはサウリ・ニーニスト首相も姿を現したといいます。当初は英語版のみだったコースですが、2018年11月には政府の希望からフィンランド語版も登場しており、これによってコースの普及が加速するとみられるとのこと。

by Hietaparta

フィンランドは2017年にEUで初めてAI国家戦略を文書化し、2018年6月に公開された第二弾のレポートには、最終的に人口のうち100万人が自分のAIスキルをアップデートする必要に迫られるという予測が述べられました。フィンランド政府はエストニアとスウェーデンと協力してAI実験で秀でた「研究所」を作ることのほか、EUに対しいくつかの規制緩和を求めるロビー活動も行っていく予定とのことです。

【no.281】結晶性素材の特性を「AIで設計」する方法、MITらが開発。超効率太陽発電、ダイヤモンドCPUが可能に?

結晶性素材の特性を「AIで設計」する方法、MITらが開発。超効率太陽発電、ダイヤモンドCPUが可能に?

半導体やその他の結晶素材はほんのわずかな歪みを加えるだけで電導性を得たり、光や熱を伝導するようになるといった劇的な特性の変化を得ることがあります。MITとロシア、シンガポールの研究者からなるチームは、こうした変化を予測し制御するために、人工知能(AI)を活用する方法を編み出し、将来のハイテク機器に向けた先端材料の研究に役立てようとしています。

研究チームは、シリコンとダイヤモンドの両方で、半導体が持つ重要な電子特性である”バンドギャップ”に対する歪みの影響を調べました。

バンドギャップとはざっくり説明すれば結晶内のエネルギー準位によって分かれる帯状の構造における電子が存在しない部分(禁制帯)のこと。禁制帯は電子が存在しないため通常なら電流は流れないものの、この部分が狭い半導体の場合は素材特有の電圧を加えることで電子が通過できるようになり、半導体としての特性を発揮します。

そして研究者らは、ニューラルネットワークのアルゴリズムを鍛え、結晶性材料の歪みの量と方向がバンドギャップにどのように影響するかについて人間からの知識や推測なしに高精度で予測させることを可能としました。

この技術を用いて分析を進めれば、たとえばシリコン結晶を用いる太陽電池なら、わずか1/1000の厚さで従来と同じエネルギーを生み出せるようになったり、ダイヤモンドがシリコンに代わる実用的な半導体素材に変身するといったことがありえるかもしれません。

研究チームは、現在のところ電気的特性にフォーカスした研究を行っています。しかし冒頭に述べたように、この技術は光学的および熱的な特性を変化させることができることも強調しています。

ただ、半導体チップを構成する複雑さを保ったまま必要な歪みを加えるためにはどうすれば良いのかといった技術的課題があります。しかしそれを克服すれば、将来的にはたとえばスマートフォンのSoCレベルのチップにダイヤモンドベースの超高速チップを搭載できるようになったり、ルーフ上の太陽電池だけでどこまでも走り続けられるEVを作ることも可能になるかもしれません。

この研究はまだスタートラインに立ったばかりですが、”歪み”が太陽エネルギーの活用とコンピューターの性能向上に役立つかもしれないことを示します。

【no.280】AI特許出願トップ5に東芝、NEC – 教育機関は中国独り勝ち

AI特許出願トップ5に東芝、NEC – 教育機関は中国独り勝ち

世界知的所有権機関(WIPO)が初めてAI関連の特許出願数などを調査した。日本企業は出願件数が多く、世界トップ5に東芝とNECが、トップ30をみると計12組織が入っている。大学など教育機関の多さは中国が「独り勝ち」状態だった。また分野別にみると、ライドシェア向けのマシンラーニング技術、音声認識にも利用されるディープラーニング技術の増加率が高いという。

AI特許出願トップ5に東芝、NEC - 教育機関は中国独り勝ち

スマートスピーカーなどで身近になったAI

人工知能(AI)という言葉は1950年代に初めて登場したが、概念自体はそれ以前から存在しており、AI研究の歴史はそれなりに長い。ただ、その成果は実験的なものが多く、消費者が日常でAIを体験する場面はほとんどなかった。

それが2010年代に入り、状況は一変した。テレビのニュースや新聞の記事でAIが取り上げられない日はないほどだ。日々の生活も、普及期に入ったスマートスピーカーAI音声アシスタント対応スマート家電、高度なアプリの動くスマートフォンなど、アマゾンやグーグル、アップルなどのAIエコシステムに囲い込まれつつある。

こうした状況を受け、世界知的所有権機関(WIPO)がAI研究開発トレンドを調査し、報告書「WIPO Technology Trends – Artificial Intelligence」を公表した。それによると、AIに関する特許出願は近年急増したそうだ。

AIのなかでどの分野が注目され、どの国や企業、産業分野がAI研究に積極的なのか、WIPOの報告書をみていこう。

他技術より目立つAI特許の増加

WIPOによると、1950年代にAIという概念が言語化されて以降、2016年までに発表されたAI関連の学術論文は160万部以上、発明特許出願は34万件に及ぶ。そして、AI関連特許の半数以上が、2013年以降に登録された発明だという。

AIに分類される技術のうち、特許では機械学習(マシンラーニング)が多い。なかでも、機械翻訳などに応用されるニューラルネットワークは、全体の3分の1以上で使われていた。また、ライドシェアリングで使われるタイプの機械学習に関する特許出願は、2013年の9,567件から、2016年の2万195件へ増えた。

音声認識などに利用される機械学習技術の深層学習(ディープラーニング)は、特許出願が最速ペースで増えている。具体的には、2013年が118件、2016年が2,399件と、3年間で20倍近くも増加した。

ちなみに、特許出願は全体的に増加しているが、2013年から2016年にかけての増加率は33%にとどまっており、AI関連特許の急増ぶりがよく分かる。

自動運転やロボットへAI応用進む

出願されたAI関連特許の応用分野については、自動運転車に不可欠な画像認識などのコンピュータービジョンが最多で、49%で言及されていた。ロボット分野へのAI応用も活発で、ロボット工学のAI特許出願は2013年が622件、2016年が2,272件、ロボットアーム制御などのコントロール手法に関する出願は2013年が193件、2016年が698件といった状況だった。

産業分野別にみると、AI関連特許の出願増加ペースがもっとも速いのは、自動運転車を含む運輸分野。出願件数は2013年が3,738件、2016年が8,764件で、2倍以上の伸びだ。それ以外では、以下の分野が目立つ。

電気通信

  • 2013年:3,625件
  • 2016年:6,684件

生命・医療科学

  • 2013年:2,942件
  • 2016年:4,112件

個人向けデバイス、コンピューター処理、マン・マシン・インターフェイス

  • 2013年:2,915件
  • 2016年:3,977件

活躍する日本、躍進する中国

出願件数トップ30のうち、12が日本企業

AI関連特許の出願件数を出願人別に集計すると、2016年末時点で8,290件のIBMが他を大きく引き離して1位。以下、2位はマイクロソフトの5,930件、3位が東芝の5,223件、4位がサムスンの5,102件、5位がNECの4,406件。

出願件数では日本企業が活躍しており、上位30組織に東芝とNECのほか、富士通、日立製作所、パナソニック、キヤノン、ソニー、トヨタ自動車、NTT、三菱、リコー、シャープが入っている。

出典:WIPO / WIPO Technology Trends 2019 – Artificial Intelligence

【no.279】過酷なアニメ制作の現場、AIで救えるか 「動画マン」の作業を自動化、DeNAの挑戦 (1/2)

過酷なアニメ制作の現場、AIで救えるか 「動画マン」の作業を自動化、DeNAの挑戦 (1/2)

「労働環境が過酷すぎる」「時間も人もお金も足りない」――日本のアニメ制作現場では、アニメーターの低賃金労働や法定労働時間の超過といった問題が指摘されている。こうした状況を、近年進化が著しいAI(人工知能)技術で改善できないか。ディー・エヌ・エー(DeNA)AIシステム部の李天キ(王に奇)さんと濱田晃一さんが、2月6日に開催された技術者向けイベント「DeNA TechCon 2019」で、最新技術を用いた事例を紹介した。

アニメの制作現場でも特に過酷とされるのが「動画マン」と呼ばれる仕事だ。動画マンは、滑らかなアニメーションになるように、原画と原画の間を埋める絵(中割り)を描く人のこと。

私たちが良く目にする「30分間のテレビアニメ」の場合、1話当たり3500~4000枚の中割りを描く必要があるという。1枚を完成させるのに数時間かかることもあるが、給与はほとんどの場合1枚いくらの歩合制。時間をかければかけるほどアニメーターの時給は下がっていく。

アニメアニメの中割りをAIで生成

「構造変化が大きい」 アニメの難しさ

李さんは、与えられた原画のデータを基に、原画と原画の間を埋める中割りの画像を自動生成できないかと考えた。実写動画の中間フレームを自動補完する「Frame Interpolation」という技術は既に存在する。ニューラルネットワークが、2枚の画像間におけるピクセルの移動量を表したベクトルマップ「Optical Flow」を算出し、中間フレームを合成するというものだ。

アニメ「Frame Interpolation」の技術

いまの技術では、フレームレートが30~60fpsの動画を入力すると、中間フレームが補完された240~480fpsのより滑らかな動画を生成できるという。

しかし、この手法をそのまま「アニメの中割り」に適用するのは難しい。実写動画とアニメではフレームレートが違いすぎるからだ。フレームレートが低いアニメは「画像間の構造変化が大きい」。

アニメアニメの中割りにはそのまま適用できない

李さんは「実写動画に比べ、アニメはフレームレートが低い。またイラストは実写に比べて色が単調でピクセルの対応点を特定しにくく、Optical Flowの計算が困難だ」と説明する。