【no.393】ポーカーの複数人対戦でAIがプロに圧勝、初の快挙が世界にもたらすインパクト

ポーカーの複数人対戦でAIがプロに圧勝、初の快挙が世界にもたらすインパクト

ポーカーで最も上級者向けとされる「ノーリミット・テキサスホールデム」の複数人対戦で、人工知能AI)が初めてプロに圧勝した。この米大学とフェイスブックの研究者が共同開発した技術の応用範囲は広く、自律走行車の行動予測や不正検出アルゴリズムの改良、そして軍事戦略においても重要な意味をもってくるという。

POKER

JOHN LAMB/GETTY IMAGES

ダレン・エリアスはポーカーを熟知している。彼は32歳にして「ワールドポーカーツアー」で4度の優勝を果たした唯一のプレイヤーであり、これまでに大会で獲得した賞金の総額は700万ドル(約7億5,400万円)を超える。その腕前にもかかわらず、エリアスはこの春、人工知能AI)から新たな学びを得た。

エリアスは、カーネギーメロン大学とフェイスブックの研究者が共同で開発した最新のAIのテストに参加した。エリアスと、もうひとりのプロプレイヤーであるクリス・“ジーザス”・ファーガソンは、それぞれインターネット上で5つのAIとの6人対戦という形式で5,000ゲームを行った。このAIの名は「Pluribus(プルリブス)」という。

その結果はAIの大勝だった。ゲームの最中にエリアスは、あることに気づいた。機械は単調な動きをすると考えられがちだが、Pluribusは典型的なプロプレイヤーより大胆な行動を見せたのだ。「Pluribusは、よくポット(賞金プール)の2~3倍の額をベットするのです。人間はあまりこういう手を打ちません」とエリアスは語る。「この高額なベットには興味を引かれますね。自分の戦術に取り入れてみようと考えています」

このように、Pluribusはベテランのプロプレイヤーが目を見張るような戦術を展開した。しかし、注目されているのはそれだけが理由ではない。実はPluribusは、複数人対戦でノーリミット・テキサスホールデムでトッププレイヤーを破ったのだ。

ノーリミット・テキサスホールデムとはポーカーのなかで最も上級者向けの形式で、これはAIとしては世界初の偉業だ。7月11日付で『サイエンス』誌に掲載された論文では、Pluribusがエリアスやファーガソンと対戦した際の様子や、プロプレイヤー5人を相手にした6人対戦で1万ゲームを行い、たやすく勝利を収めた様子が記述されている。

「Pluribusを人間のプロ5人と試合させれば、Pluribusは5人を打ち負かし、賭け金を巻き上げることになるでしょうね」と、フェイスブックのAI研究所の研究者で、Pluribusの共同開発者であるノーム・ブラウンは語る。「Pluribusはまさにポーカーの世界を代表するような存在になったと言えます」

【no.392】熟練者の意思決定を高速に学ぶAIをNECが開発

熟練者の意思決定を高速に学ぶAIをNECが開発

NECは2019年7月、熟練者の意思決定を模倣するAI(人工知能)技術を開発したと発表した。新技術は過去の行動履歴データから熟練者の「判断の意図」を高速に学習する。

テレビ局が流すコマーシャルのスケジューリング業務は、従来経験豊富な熟練者が時間帯や番組内容、視聴率など複数の条件を踏まえながら放送枠を調整している。この業務にAI技術を適用したところ、熟練者と同等の意思決定を10倍以上のスピードで実現できたという。NECは今年度中にも商用化する考えである。

行動履歴から意図を汲み取る

最大の特徴は、意思決定の拠り所を人手でAIに与えるのではなく、AIが行動履歴データから熟練者のさまざまな意図を汲み取って学ぶ点である。

一般にAIによって意思決定の最適解を自動で導き出すには、最適解に近づけるための根拠として、判断の良し悪しを判定する基準となる数式が必要になるという。しかし、現実には「意思決定の際に何をもって“良し”とするかが熟練者一人ひとりの頭の中にあり、簡単に定式化できないケースが多い」と柏谷篤データサイエンス研究所シニアマネージャーは話す。

今回のAI技術は、このように数式で定義することが難しい属人的な業務における意思決定の最適化を可能にする。具体的には、熟練者が日ごろ特段意識せずに考慮している各種制約や、判断のポイントや重み付けの傾向をAIに習得させる。そうすることでAIが熟練者と同じ判断基準で意思決定できるようになる。

隠れた制約条件も発見して学習

自動車の運転を例にすると、大量の運転履歴データがAIの意思決定の手本になる。ドライバーが走行ルートを決める際に考慮するであろう「目的地と現在地との位置関係」「目的とする走行速度と現在の速度の差」「ステアリングの向き」「アクセルの踏み込み」「前後の車間距離」「燃費」などの変数を踏まえたシンプルな数式を用意。どの要素を重視するかというドライバーの傾向をAIが運転履歴データから読み解き、変数に重み付けを与えてドライバーと同じような意思決定をする方法を反映した数式を完成させる。

渋滞状況や天候といった条件によってドライバーが重視する要素が異なる傾向があれば、判断基準が変わる条件をAIが判別し、条件ごとに異なった重み付けをする。例えば、雨の日の渋滞中は目的地までの距離よりも車間距離を重視し、晴れの日の空いた道路ではスピードと燃費を重視する数式を作成する、というようなことだ。

【no.391】あなたは本物を見分けられる? AIがつくった「フェイク顔写真」の驚くべき精度

あなたは本物を見分けられる? AIがつくった「フェイク顔写真」の驚くべき精度

本物そっくりだが実在しない人々の顔写真を、人工知能AI)が生成できる時代がやってきた。こうした写真の真贋を人間はどこまで判定できるのかを調べるために、米大学の教授らが「フェイク顔写真判定ゲーム」をつくった。この記事に掲載された写真にも、たったひとりだけ本物の顔写真が隠されている。あなたは見分けがつくだろうか?

TEXT BY TOM SIMONITE
TRANSLATION BY YUMI MURAMATSU

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PHOTOGRAPHS BY CARL BERGSTROM AND JEVIN WEST/UNIVERSITY OF WASHINGTON; PHILIP WANG/THISPERSONDOESNOTEXIST.COM

他人の“顔”には秘密が隠されているものだ。しかし、上の写真で微笑んでいる人々の顔には、とても大きな秘密が隠されている。なんと、この人たちは実在しないのだ。

これらの顔写真は、すべて機械学習アルゴリズムによって生成された。その狙いは、人工知能AI)が生み出したフェイクの顔写真が「本物」と認識されるのかを調べることにある。「チューリング・ビューティーコンテスト」と呼んでもいいかもしれない。

ワシントン大学教授のジェヴィン・ウェストとカール・バーグストロムは、何千もの仮想の顔を生成し、「Which Face Is Real? 」というオンラインゲームサイトを開設した。フェイクと本物の顔写真がペアになっており、どちらの顔が本物かをプレイヤーに選ばせるというものだ。このゲームはこれまでに、約50万人が600万ラウンド近くプレイしている。上の写真は、このゲームで最も判定が難しかった写真の一部だ。

ディープフェイクに備える

これらの顔は、GPUのメーカーであるNVIDIA(エヌヴィディア)の研究者らが2018年に開発した技術を利用して生み出された。1週間にわたる膨大な顔写真のデータセットを用いた訓練を経て、ニューラルネットワークは視覚的なパターンを模倣し、本物そっくりでありながら実在しない人たちの画像を出力できるようになったのだ。

このソフトウェアの内部には、顔を入れ替えた偽の動画、いわゆる「ディープフェイク」をつくるコードと似たものが含まれている。偽物が横行する未来に対する備えの一環としてウェストとバーグストロムは、このフェイク顔写真判定ゲームを開発した。「この手のフェイク画像は生成可能だという現実に気づいてほしかったのです」と、ウェストは語る。

とはいえ、こうしたフェイクは完全ではない。このソフトウェアは人体の解剖学的な構造を理解していないし、背景やイヤリングを生成する際に苦労している。それゆえ、初めて判定ゲームに挑戦するプレイヤーが本物を識別できた割合は、平均で60パーセント近くになった。だが残念なことに、プレイヤーが判定を重ねても、この割合は約75パーセントで頭打ちになった。

人間がどのようにフェイク画像にだまされるのかを研究することで、フェイクを見分けるうえで役立つツールを開発できるかもしれないと、ウェストは期待を寄せている。将来的には、フェイクの顔を見ている人の眼球の動きを追跡する研究にも乗り出すかもしれないという。

フェイクの顔をつくる技術がどんどん進化するように、偽の会話をするチャットボットのソフトウェアも同じように改良されていくだろう。実際に、マッチングサイトで出会った相手が実はボットだった──という話を聞いたことはないだろうか?

残念だが、この世は偽りで満ちている。そして『WIRED』US版は、このページにまさに偽りを隠した。これから紹介する顔写真には、実はひとつだけ本物がまぎれている。あなたは本物を見つけられるだろうか?

    • fake_faces_real
      1/44つのうち、本物の顔はどれでしょう? (答えは4枚目の写真のキャプションに記載)PHOTOGRAPHS BY CARL BERGSTROM AND JEVIN WEST/UNIVERSITY OF WASHINGTON; PHILIP WANG/THISPERSONDOESNOTEXIST.COM;

    【no.390】LINEのAI技術を外販する「LINE BRAIN」への期待。2019年後半に実証開始

    LINEのAI技術を外販する「LINE BRAIN」への期待。2019年後半に実証開始

    LINE BRAINの機能「DUET」

    撮影:山口健太

    LINE 取締役 CSMOの舛田淳氏

    「LINE BRAIN」事業について語る、LINE 取締役 CSMOの舛田淳氏。

    撮影:山口健太

    7月23日、LINEはAIソリューションサービス事業「LINE BRAIN」の説明会を開催。チャットボットや文字認識(OCR)、音声認識などの技術をソリューションとして「外販」(社外にソリューションなどとして販売)していく構想を語った。

    LINE BRAINは、同社が6月の年次イベント「LINE CONFERENCE 2019」で概要を明かした新事業だ。記者説明会では、「AIを外販する」ための具体的なロードマップが語られた。順を追って見ていこう。

    LINEは「AIソリューションカンパニー」へ

    LINE BRAIN

    提供:山口健太

    これまでLINEは音声アシスタント「Clova」の提供などを通じて、AI技術を培ってきた。Clovaはユーザーの声を聞き取り、意味を解釈して音声で応答する。その裏では音声認識や自然言語処理、音声合成といった処理が行われており、その精度を上げるにはディープラーニングなどのAI技術が必要不可欠となっている。

    そんなLINEの「頭脳」とも言えるAI技術を切り出し、外部の企業向けにパッケージ化して売っていくのがLINE BRAIN事業だ。「LINEは、AIソリューションカンパニーへと進化していく」とLINE 取締役 CSMOの舛田淳氏は語る。

    LINE BRAIN事業が販売する製品群(開発中のものを含む)。

    LINE BRAIN事業が販売する製品群(開発中のものを含む)。

    撮影:山口健太

    AIソリューションといっても、具体的に何ができるのだろうか。LINE BRAINを象徴する開発プロジェクトとして紹介されたのが「DUET」という名のAI自動応答システム。飲食店の電話予約の完全自動化を目指している。

    DUETによる電話応対は「いつのご予約でしょうか」「その日は満席です」など、あたかも人間が話しているかのような受け答えをしながら、予約日時を調整していくレベルに達している。6月のイベントで披露した後、チューニングを重ねることで精度が上がっているという。

    【no.389】Microsoft、OpenAIに10億ドル出資し、汎用AI開発に取り組む

    Microsoft、OpenAIに10億ドル出資し、汎用AI開発に取り組む

    米Microsoftとイーロン・マスク氏が共同会長を務める非営利の米AI研究企業OpenAIは7月22日(現地時間)、MicrosoftがOpenAIに10億ドル出資し、AGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)開発を支援すると発表した。

     openai 1

    両社は2016年11月、OpenAIの主要なプラットフォームとして「Microsoft Azure」を採用すると発表しており、今回の発表では、MicrosoftをOpenAIの独占的クラウドプロバイダーとすることも明らかにした。

    また、共同でスーパーコンピューティング技術「Azure AI」の構築に取り組む。

    AGIは、汎用性、自立性のあるAIの総称。従来のAIは学習した特定の問題には適切に対処できるが、世界が実際に直面している困難な問題(自然災害、医療、教育など)に対処するには、自ら学習し、既存ではない情報を推論する能力が必要だ。

    OpenAIのサム・アルトマンCEOは発表文で「AGIの構築は、人類史上最も重要な技術開発になるだろう。われわれの使命は、AGIの構築が人類すべてに利益をもたらすようにすることだ。(中略)Microsoftがこのビジョンを深く共有していることは喜ばしい」と語った。

    Microsoftのサティア・ナデラCEOは「OpenAIの革新的な技術とAzure AIのスーパーコンピューティング技術を合わせることで、AIを常に安全に保ちつつ、万人に益となるようAIを民主化していきたい」と語った。

     openai 2OpenAIのサム・アルトマンCEO(左)とMicrosoftのサティア・ナデラCEO

    【no.388】AI人材の三者三様、DeNA・メルカリ・ABEJAが語る「いま欲しい人材

    AI人材の三者三様、DeNA・メルカリ・ABEJAが語る「いま欲しい人材

    Iやデータを活用できる人材をどう獲得、育成するかに多くの会社が苦心している。特に人材育成については手探りの状態が続く状態だ。

    では、優れたAIエンジニアやデータサイエンティストを抱える企業は、どのようなことを意識しているのだろうか。7月18日に行われた「AI人材トークイベント」で、ディー・エヌ・エー(DeNA)、メルカリ、ABEJAが議論した。3社に共通する課題とは。

    左からメルカリの木村俊也さん、ディー・エヌ・エーの山田憲晋さん、ABEJAの菊池佑太さん
    「日本のトップエンジニアを集めたい」 DeNAの場合
    DeNAは、スマートフォンゲームやオートモーティブ、スポーツなど多様な事業でAIを活用している。例えば、スマートフォンゲーム「逆転オセロニア」でのデッキ編成や、配車アプリ「MOV」(モブ)のタクシー需要予測などだ。

    さまざまな事業を手掛ける同社では、AIシステム部が全社を横断する部門として存在する。AI人材のタイプは、(1)高い専門性を持つリサーチャー、(2)機械学習モデルを構築するデータサイエンティスト、(3)機械学習システムの実装や運用などを行うエンジニア――に大別できるという。

    DeNAのAI組織体制
    ディー・エヌ・エー AI本部の山田憲晋部長(AIシステム部)は、「AIは手段であり、まずはサービスとビジネス課題ありき。(AI本部を)研究所にはしたくない」と話す。

    同社で働くエンジニアは、多様な領域の自社サービスでAI技術を応用できる点に魅力を感じているという。しかし、同じような環境がある企業は他にもあるだろう。他社との差別化について、山田部長は「エンジニアが業務外の時間で成長できる環境作りを意識している」と説明する。

    同社は、業務時間中にデータ分析のコンペに参加できる「Kaggle社内ランク制度」を2018年4月に導入。国際学会への参加や技術勉強会の開催など、エンジニアが最先端の技術をキャッチアップできるような環境作りに徹してきた。また、オウンドメディアでの情報発信などを通じ、社会的な影響力の向上にもかなり力を入れたという。

    【no.387】”AI失業は他人事”と言い張る40代の末路

    “AI失業は他人事”と言い張る40代の末路

    ■3つの能力を磨きAI時代に活躍の場を広げる

    AI(人工知能)の普及が進めば、仕事の半分はAIで代替可能となり、大量の失業者が発生する――。そんな予測が世間を騒がせている。

    田坂広志氏

    「それは、社会学者や経済学者などが指摘している通りで、確かに彼らはAI時代の分析や未来予測に長けています。しかし、仕事の現場での経験がないため、『では、どうすればいいのか』という、ビジネスパーソンの一番の関心事に答えることができません」

    田坂広志氏は東京大学大学院修了後、民間企業に勤め、営業や企画、人事や生産の現場でさまざまな苦労を味わう。「その経験を踏まえ、AI時代に求められる能力を明らかにしたいとの思いから筆を執りました」と田坂氏は話す。

    気になる能力だが、AI時代に活躍する人材になるには『職業的能力(クリエーティビティー=創造力など)』『対人的能力(ホスピタリティー=接客力など)』『組織的能力(マネジメント=管理力など)』の3つが重要なのだという。

    「何も難しく考える必要はありません。たとえば不動産会社なら営業担当の人が、お客さまの声に親身に耳を傾け、その接客を通してリフォームの潜在ニーズを引き出し、魅力的な提案を行って成果につなげていく。これはAIでは決して代替できない接客力であり、創造力なのです」

    マネジメントの中で、人事、資材、予算などの管理業務はAIに置き換わっていくが、人間にしか担えない重要な仕事があると田坂氏はいう。

    ■「人間にしか担えない重要な仕事」とは

    「人間同士なら言葉を超えた目つきや表情、雰囲気から相手の心理を読み取ることができ、仕事で壁に突き当たって悩んでいる部下の存在に気づくことができます。そして『俺も最初は苦しかったんだ』と共感し、励ましながら、部下の成長を支えていくことができます。そうした“心のマネジメント”はAIには決して真似ができないため、ますます重要になっていきます」

    【no.385】AI導入の課題は「スキル」や「ユースケース」の不足ではない、Gartner

    AI導入の課題は「スキル」や「ユースケース」の不足ではない、Gartner

    Gartnerは2019年7月15日(米国時間)、人工知能(AI)や機械学習(ML)に取り組む企業についての調査「AI and ML Development Strategies」(AIとMLの開発戦略)の結果を発表した。

    これらの企業では、平均4つのAI/MLプロジェクトを実施しており、回答者の59%は、自社でAIを導入済みだとしている。

    Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるジム・ヘア氏は、次のように指摘している。

    「AIの導入が2019年に大きく加速している。AIプロジェクトが増加していることは、スタッフと資金がプロジェクトへ適切に配分されるよう、企業が組織再編の必要性に迫られている可能性があることを意味する。AIスキルを組織内に広げ、予算を確保し、優先順位を設定し、ベストプラクティスを最良の方法で共有するために、社内に横断組織として『AI Center of Excellence(AI CoE)』を確立することが最良の道だ」

    現在、実施されているAIプロジェクトの数は平均4つだが、回答者はこの数字が年々急速に増えると予想している。2022年には、平均35のAIやMLプロジェクトが実施されるとの予想だ。

    調査対象企業におけるML/AIプロジェクト数の平均値の推移(出典:Gartner

    AIの使用目的は2つ――顧客エクスペリエンス向上とタスク自動化

    自社がAIを使用する最大の目的について問われると、「顧客エクスペリエンスの向上」を挙げた回答者が40%と最も多く、これに次いで多かったのがRPA(Robotic Process Automation)としてAI/MLを使う「タスクの自動化」(20%)だ。

    【no.384】犬型ロボ「aibo」のAIはどのように開発されたのか (1/2)

    犬型ロボ「aibo」のAIはどのように開発されたのか (1/2)

    ソニーが1999年から2006年にエンターテインメントロボットとして販売してきたAIBOシリーズ。新型として2018年1月11日に発売されたのが「aibo」だ。aiboでは、ユーザーごとに振る舞いを変えるために、AI(人工知能)を活用しているという。

    エンターテインメントロボット「aibo」 2019年夏には開発者向けAPIの公開も予定されている
    エンターテインメントロボット「aibo」 2019年夏には開発者向けAPIの公開も予定されている
    さまざまな業種でAI活用が進む中、ビジネスに寄与するAIをどう開発すればよいのか? aiboの開発チームでaiboのAI開発を担当した森田拓磨氏と、AWSを用いたサービス開発および運用を担当した平朋大氏の2人からAI開発のヒントを探るべく、話を伺った。

    ソニー AIロボティクスビジネスグループ クラウドサービス開発部1課 統括課長 平朋大氏(左) 同社 AIロボティクスビジネスグループ SR事業室ソフトウェア2課 統括課長 森田拓磨氏(右)
    ソニー AIロボティクスビジネスグループ クラウドサービス開発部1課 統括課長 平朋大氏(左) 同社 AIロボティクスビジネスグループ SR事業室ソフトウェア2課 統括課長 森田拓磨氏(右)
    さまざまなAIをaiboに実装

    ―― aiboではAIをどのように活用していますか。

    森田氏 aiboの名前にある「ai」は「AI」を指しているのはご存じでしょうか。初代AIBOの時から、AIなどさまざまなテクノロジーを活用しています。当時は処理能力などに限界がありましたが、クラウド、深層学習の登場もあり、現在発売中のaiboでは、「気付く」「考える」「行動する」というポイントを中心にAIを活用しています。

    【no.383】AIの覇権、米国GAFAから中国巨大IT企業へ移行始まる

    AIの覇権、米国GAFAから中国巨大IT企業へ移行始まる

    最初に申し上げておきますと、現時点で日本はかなり絶望的なレベルでAI後進国です。理由は2つあるのですが、ひとつめにAIがこれからどれほど進歩していくのかという話をしても、政治家や官僚、財界人の多くがぴんと来ないという現状があります。

    2020年代を通して仕事消滅が本格化するという話をしても、「そんなことは起きないよ」と根拠抜きに真顔で否定されるのが今の日本です。世界で何が起きているのかを知らないのです。

    もうひとつの理由が、日本人の身の回りに強いAIを開発する巨大IT企業が存在しないということです。代わりに存在するのがいわゆるAIベンチャーといった若い企業群で、これらの企業はAIアルゴリズムを用いて比較的面白い研究を続けているのですが、資金的な制約などもあり、巨大なコンピューティング能力と莫大なビッグデータを用いたモンスター級のAIを育成することはできません。

    2020年代を通じて世界を大きく変えてしまうのは、巨大なデータを活用しながら怪物に育っていくレベルのAIで、この規模のものを開発できるのは年間2兆円レベルの研究開発投資を行うことができる巨大IT企業だけ。そのような企業が日本にはないため、小さな研究を積み重ねているAIベンチャーの動きを通じてしか、日本のリーダーは未来を予想できていない。これが日本の現状です。

    そしてここからが今回の記事のテーマになるのですが、それを開発する能力が、どうやらアマゾン、グーグル、フェイスブックといったアメリカ企業から、テンセント、アリババ、バイドゥ、ファーウェイといった中国企業へ移行しそうだという話があります。この動きが意味することを通じて、今、モンスター級のAIの世界に何が起きているのかを概説してみたいと思います。

    モンスター型AIの特徴
    今現在、世界の巨大企業が開発しようとしているモンスター型の巨大AIにおいて、主に3つの目的に投資が集中しています。1つは金融ビジネスを操るフィンテック、2つめに消費者の購買行動を左右する広告ビジネス、そして3つめが自動運転や無人コンビニに代表される無人化です。

    巨大AIは株価の動きや市場の歪みを人間よりも巧みに学習し、金融市場で巨額の利益をあげたり、アマゾンやグーグルが今やっているよりももっと巧みに消費者の心を操ることで消費行動そのものを支配したり、人間が介入しなくても物流から小売までのインフラが成立するような未来社会を創ろうとしています。

    ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2019/07/post_109264.html
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